第10話 小さく

 

 さて、他には変化でなにができるだろうか。

 木とか岩とかにも化けられるのか?それとクー太のままでサイズだけ小さくしたりとか。大きさ次第では家に帰るときに連れて帰ることもできる。


 ここから出るときは4匹には人に見つからないようにして待機してもらうつもりだったからな。


『両方できるー。ただちょっと疲れたー』


「変化してられる時間に制限があるのか?それとも回数か…?」


『変身したら疲れないからずっとそのままでいられると思うー』


 なら変化する度にエネルギーかMP的なのを使うから、維持はできるが何度も変化し直すのは難しいってことか。この能力は面白いな。


「じゃあ最後に身体の大きさをできる限り小さくしてみてくれるか?」


『はーい』


 パッと光ってそこにいたのは三、四十センチのクー太ではなく、尻尾含めても十五センチくらい?普段は尻尾含めて四、五十センチだからかなり小さく…。

 何というかティッシュ箱くらいというか、子猫か子犬くらいか。


 俺のビジネス鞄に詰めれば四匹くらい入りそうと言えばいいのか…。

 とりあえず小さい!お持ち帰り決定です。


『これでいいー?』


「問題ないなら当分そのままな」


『はーい』


「やっぱ小さくなった分、スピードとか力とか耐久力とか下がっちゃうのか?」


『変わらないとおもうよー?』


 チビクー太が俺の周りを走り回る。うん、速いね。小さくなった分捕捉されにくくなったんじゃないか?

 ただ防御力とか攻撃力的なものはどうなんだろうか。


「クー太、俺に体当たりしてみてくれ」


『だいじょうぶー?』


「ああ、俺もレベルアップで多少能力上がってるだろうし大丈夫だぞ」


『じゃあいくねー?』


 少し離れたところからダッシュしてお腹の辺りに飛び込んできた。レベルアップで俺自身動体視力とかも上がってるんじゃなかろうか。クー太は速いが目で追え……。


「グハッ⁉︎」


『『ご主人様⁉︎』』


『主様⁉︎』


 チビクー太の体当たりに耐えられず後ろに倒れた。

 痛みはそんなにない。痛いけども。ただ衝撃が予想以上に凄かった。


『ご主人さまー…?』


「ゲホゲホ。大丈夫だ」


 クー太が心倒れた俺の顔の前で心配そうにして居たので撫でてやる。


「来るのがわかっていたし後ろに倒れて勢いを殺したからな、痛みはそんなないから心配するな。

 それよりその大きさで力も速さも変わらないんだな。凄いぞ」


 そう言ってやると心配そうな顔を嬉しそうにし二本の尻尾が左右に揺れる。

 にしてもサイズや姿形で身体能力に変化は無さそうだ。木とかに変化したら力やスピードは関係ないだろうが、クー太の柔らかさの木ができるのだろうか。そのうち試してもらおう。


「ラン達もそう心配しなくて大丈夫だ。怪我はしてないよ」


『良かったわ』


『主様お気をつけください』


『本当、心配させないでください』


「すまんすまん。よし、色々試したし今のとこはこんなもんだろう。あとは…クー太。その大きさなら俺の肩とか乗ってみるか?」


『いいのー⁉︎乗るー!』


「安定するようなら移動するときは肩に乗ってて良いぞ」


 珍しく勢いのある返事にほのぼのしつつ抱えて右肩に持っていってやる。もぞもぞと身体の位置を調整し安定したようだ。

 爪が引っかかって少し痛いがこれくらいなら問題ない。肩幅大きくて良かった。


「落ちないようにな」


『落ちてもこれくらいならへいきー』


「そうか?まあ猫とかもこれくらいの高さなら全然平気だしな」


『ずるーい!私も乗りたい!』


「さすがにランのサイズだと難しいんじゃないか?バランスとかとるのも」


『なら進化したら左肩は私ね!』


 そんな乗りたいのか…?まあいいんだが、肩と首の筋肉が大変なことになりそうだな。まあクー太全然重くないんだが。


『ふむ。私も乗ってみたいですが、どちらかというと巻きつく形になりますし難しいですな』


『私は乗るより乗ってもらうくらい大きくなる方がいいですね』


 クー太の変化を興味深く静かにみていたが2匹とも主張があったようだ。クレナイは巻きつく派、ハクは乗せたい派、ね。


 別に密着しなくていいと思うが。まあもっと大きくなって乗せてもらえるなら遠慮せず乗るけどな。


「ああ。お前達に言ってなかったけどとりあえず今日と、野宿して明日の九時ごろまでは魔石集めとレベル上げをする。

 んで、明日の昼間俺は一度家に帰るつもりだが、小さくなれるクー太と、進化して小さくなれそうなランは連れて行けるけどハクとクレナイは連れて帰るのが難しいからこの森で待機しててほしい」


『『『『⁉︎』』』』


 そんな四匹とも驚いた顔しなくても…。


「本当は四匹か、この後テイムしたやつも含めてみんなで隠れるか、固まってレベル上げしておいてもらおうと思ったんだが、クー太小さくなったおかげで鞄に入って貰えば連れて帰れるし…」


『私も付いて行きたかったです』


『私もです…』


 クレナイとハクが落ち込んでる。撫で撫で。ごめんよー。


『ご主人様!早くレベル上げ行きましょう!』


 ランは小さくならないと連れて帰ってもらえないとわかってレベル上げをしたいようだ。まあそうだな。

 ハクと出会ってから結構時間が経っている。もう昼時である。

 空腹のほうはなんとなるしまだ大丈夫なのだが、喉が渇いたのはどうにもならない。

 レベル上げしたいのは山々だが…。


「クレナイ、ハク。別にずっと戻ってこないわけじゃないんだ。すまないが少し我慢してくれないか?

 それとラン。レベル上げはいいんだが、喉が渇いて仕方ない。川とかあるか?出来るだけ綺麗な水があるところが良い」


『んー。川かー。結構離れてるよー?』


『そうね。近くでは知らないわ』


『ご主人様。それなら少し離れますが私が来た道を行けば大きい川がありましたよ』


「ならハクに道案内を頼む。ハクが来た方というと森狼や大赤蛇がたくさんいる方か?」


『そうですね…。その二種もいますが、黒っぽい蛇や猪にリス、猿など、たくさんいますよ?あと結構坂道が増えます』


 ん?坂道ってことはやっぱ森とか山なんかね。こっちが山でクー太達と出会ったのが街か?

 まあ山とか森なら動物はたくさんいるだろう。虫も。


 ただ魔物なのかどうかだな。それに今更だが狼って都心じゃ居るって話聞かないよな…。

 まあ狼も居たか、不思議な力で発生したとか?こんな状況だしなにがあっても不思議ではないが。


「ここから川に行くのと一回街に行って戻ってくるのどっちが近い?街に行くなら着替えを買ったりしてからが良いけど今日はレベル上げ優先したいからな」


『それでしたら川の方が近いと思いますよ。人の街に降りたことはないですがここから全然匂いがしませんから』


「ならハクの言う川に行ってレベル上げかな。んじゃ先導よろしく。魔物は出来るだけ全員攻撃いれるようにしてくれ。経験値配分がよくわからないからな。あと手に入れた魔石は一旦俺に渡してくれ。あとで分配する」


『『はい』』


『わかったわ』


『はーい』


 よし。目指すは全員進化だな!

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