第3話 戦闘



 お?今仲間になりたいって声が聞こえたよな?だが、たぬきじゃなく魔狸と言わなかったか?なんでだ?クー太の時はたぬきって言っていた。確実に。だが今は魔狸と。

 クー太のステータスでは確かに魔狸と表示されていたが…。

 もしかしたらテイムするまでは自分が認識してる名前で聞こえるのだろうか…。


 例えば蛇は赤蛇と聞こえた。他にちゃんとした種族名があるが俺はそれを知らず、自分の中でアレは赤蛇だと認識していたから赤蛇と聞こえたのかもしれない。


 自分が赤蛇じゃなくてレッドスネークだと思っていたらレッドスネークと聞こえたのかもしれない。だからこそたぬきも赤蛇もそのまんまの名前かよ。って思ったのだが、聞こえた名前が正式名ではなかったようだ。


 んでテイムして正式名が表示されて魔狸って自分が認識したからこのアナウンスも魔狸と言ってる、とかかね。


【Yes or No】表示が出てるな。

【Yes】と。


《魔狸が仲間になりました。テイムした魔獣に名前をつけてください》


 名前かぁ…ネーミングセンスないんだよなぁ。俺。

 新しい子はオスかな?メスかな?メスっぽいな。

 メスでたぬき…タヌ子。却下。ラクーン…クー太だからラー子?いや微妙ー…。ラン…。ランならいいんじゃないだろうか?


「ランって名前はどうだ?」


「きゃん!」


「よしよし、否定的ではなさそうだな。ならラン。これからよろしくな」


「きゃん!」


「ステータスだけザッと見てみるか。ランのステータスを表示!」



 ————————————————————


 個体名【ラン】

 種族【魔狸(亜成体)】

 性別【メス】

 状態:【 】

 Lv【1】

 基礎スキル:【噛み付きlv1】【体当たりlv1】


 種族スキル:—


 特殊スキル:—


 称号:—


 ————————————————————



 ん?クー太より初期レベルが低いのか?

 あれか?魔狸はファンタジー的に初期エリアに出てくる最弱魔物なのか、これがデフォルトなのか。まあ種族の詳細も後だな。


「よし、クー太、ラン早速だが移動しよう」


 歩き出し、チラッと後ろを見てみる。

 ランとクー太は縦に並んでついてくる。可愛いのだが、子だぬきを引き連れて歩くってのもシュールだし、こんなことになるとは思わなかったなぁ…。


「ぎゃう!」


「きゃん!」


 ん!?二匹が鳴いたと思ったら赤蛇が現れた。赤蛇は何故か反対の方に逃げるように方向転換して行ったがクー太達が飛び出し追いかけて行った。


「お、おい!追わんでいい!」


 呼びかけるがすぐに赤蛇に追いつき2匹で噛みつく。

 加勢をしようと思ったらすぐに声が響いた。


《赤蛇を倒したことにより個体名・中野誠のレベルが上がりました》


《赤蛇を倒したことにより個体名・クー太のレベルが上がりました》


《赤蛇を倒したことにより個体名・ランのレベルが上がりました》



 おおっ!全員上がった。ランは元々レベル1だったから1匹倒してレベルが上がったのか。

 これで俺がレベル4でクー太がレベル5、ランがレベル2か。


 でも…ランも亜成体だから幼体ではないってことだ。なら生まれたばかりじゃないだろう。なのに今まで狩りをしてこなかったのか?それとも亜成体として生まれてくるのか?

 まあレベルってものが表示されるようになった時点は誰でもレベル1からスタートってことだとは思うが。


 ランが一匹でレベル2?クー太は元からレベル2で一匹倒してレベル3。レベル3からレベル4になるには二匹で、レベル4からレベル5も二匹?そんな簡単にレベルは上がるものなのか?

 俺はレベル2になるのに一匹。レベル3になるには二匹、レベル4になるにも二匹、か。経験値配分とかどうなってんのかね。それともクー太に戦闘任せて大したことしてないからもらえる俺は経験値が少なかったりするのか。


 わからないことがどんどん増える。人がいるとこに出る前に色々ステータス画面で詳細検索してみたほうがいいか?


「クー太もランもお疲れ様。もう少し進んでみよう。これ以上赤蛇が出てくるようなら戻ろうか」


 その後も歩き続けてみたのだが、一向に民家どころか道路も見えない。しかし蛇は出てくる。しかも出てきては逃げる。

 狸って蛇の天敵だろうけど、初めは襲ってきたよな。レベルが弱かったからか?

 二匹たおしてランのレベルが一つ上がってレベル3になった。


 にしてもエンカウント率上がってないか?やっぱりどんどん奥にいってるってことか?戻って初めに向かった方へ行くか。それとも目が覚めたとこから左右どちらかに行くか…兎に角戻ったほうが良さそうだな。


 んー。目が覚めて太陽のほうに向かって歩いたからアッチが東でその反対にいったからコッチが西。今は秋口に入ったばかりだから、確か…太陽は南側を通って西に沈むんだっけか。

 方角は把握しておいたほうがいいだろう。と、思うが太陽が天辺に来ても木が結構生い茂ってるからなんとも言えんし…いちいち確認するほどマメでもない。


 とりあえずまだそこまで目が覚めてから2時間も経っていないので歩いて来て草が潰れたとこを指標にして戻ろう。


 ガサガサッ。


「また蛇か。蛇多すぎやしないか?」


「ぎゃう!」


「きゃん!」


「あんま深追いしないようにな〜」


 呟くとクー太達が俺の前に出て威嚇を始めたので追いかけすぎて逸れないよう注意をする。

 ガサガサッ。


「ッ!?」


 蛇に慣れて来て余裕ぶっこいてたので出てきたものを見て心臓が止まるかと思った。そんな大きくはない、が中型犬くらいの灰色のオオカミだった。しかも明らかに顔も体勢も戦闘体勢でやばい。

 俺は咄嗟に持ってる鞄を投げつけ上手いこと顔面に当たった。


「グルルルル」


 やべっ。怒らせただけか!?そーっと後ろ向きに下がるが、やっぱり飛びかかって来た!くそっ!


「ガァッ」


「おおお!?」


 避けれた!クー太達は!?二匹は左右に分かれオオカミに威嚇をしていた。

 怯んではなさそうだ。倒せるか…?噛まれたら病気になりそうだし下手したら死ぬよな…これ?

 攻撃を避けられたオオカミはこちらに向き直り唸っている。次突っ込んできたら躱してカウンター入れてみるか?


「ガァァッ!」


 来た!よく見ろ俺!

 サッと躱して右脚で蹴りを入れる。当たった!だが、踏ん張れなかったので大してダメージにはなってないだろう。初めて本気の殺意を向けられ心臓がバクバクである。飲みすぎた時よりバクバクである!


 オオカミは蹴られ少しバランスを崩したのか先程より離れた距離でこちらに向き直る。


「ぎゃう!」


「きゃん!」


 オオカミはクー太達に意識を割いていなかったのか両脇から襲い掛かったクー太達は見事に首元に噛み付いた。オオカミは振り払おうと暴れる。


「きゃん!」


「ラン!!」


 ランが振り払われた!大丈夫か⁉︎

 普通に立ち上がったので大丈夫そうである。俺もクー太達を見てるだけでなく何かしなければ。だが、顔周りにはクー太が噛み付いているし…。


 くそっ。とりあえず飛び出しオオカミに肉薄する。オオカミは口を大きく開けてこちらに噛みつこうとしてくる為殴ろうとしていた腕を引っ込め鼻っ柱に前蹴りを入れる。


「ギャン!」


 オオカミは倒れ、そこにランが加わり2匹で首に噛み付いた。俺はオオカミの胴体まで走り馬乗りになり抑える。何秒か数分かその状態を続けていたらオオカミは動かなくなった。


 心臓はバクバクだし、犬科っていう自分が好きな生き物だからかすごく気分も悪く、気持ちが悪い。吐くのは我慢するが本当きっつい。



《灰色狼を倒したことにより個体名・中野誠のレベルが上がりました》


《灰色狼を倒したことにより個体名・クー太のレベルが上がりました》


《灰色狼を倒したことにより個体名・ランのレベルが上がりました》

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