第27話 出戻りです

 

 あの群れを相手にするのに何が必要か。一番は手数が足りないのだ。なら足りるようにするには…?

 木魔法で矢を作り発射寸前で待機させておくことは可能だろうか…?やってみるか。


「突然魔法なんてどうしたんです?」


「ちょっと思いついたことを試してみるだけだから気にしなくていい。あ、ガーゴイルは水が弱点だったが、他の魔物って弱点はなんだ?」


「今まで会った魔物だと、キングエイプとオークが…幻覚系。アルラウネ、マンドラゴラが火。えーっと…ライノマンは特に弱点ってのはないみたいですね。イビルルースターとイビルヘェン、ダゴンが雷。って感じです。ガーゴイル程効果的面かはわかりませんけど」


「そうか。ありがとう」


 やっぱりそう簡単に弱点をつける手段は手に入らなそうだ。やっぱり今の手札…木魔法を工夫するしかないか。試行錯誤を再開する。

 木の矢は細くしようとしたり太くしようとすると魔力を多く使うから、そういうことは考えない。そうするときっと俺が自然にイメージしている太さの矢が生成されるのだと思う。後は頑丈にすることだけを考える。


 矢が出来た。どれくらいで消えるのか。時間経過では消えないのかそれはわからない。そこまでの検証はしていないし、今はする気もない。出来上がった木の矢を足元に置きもう一本作る。

 そうやってとりあえず十本作った。木の矢は感覚だが、まずは、木属性をイメージし魔力を掌に集める。次に木の矢をイメージして魔力を形作る。この時点では掌の上数センチのところにに木の矢がついている感じだ。

 なんで重力や風を操っていないのに浮くのか。これは見えないだけで魔力で包んで掌に置いているから、という感じだ。そしてこの包んでいる魔力は俺の掌と魔力の糸で繋がっている感じ。だから掌を敵に向けても矢は落ちず、正面に発射することができる。


 つまりはこの魔力の糸。パスと言ってもいいか。パスを切らなければいつでもいくつでも発射出来るのではないか。ということだ。もちろんこのパスを維持するために集中力を割くので十本もの矢を作りそれら全てのパスを切らないようにするのはかなり集中力を使う。

 だが出来た。もう何本かならいけそうだ。この状態でダゴンを誘き寄せて逃げてくる、ってのは難しい…というか【木魔法】が3や5になればできるだろうが今は不可能だ。ならどうするか。モモに頼むしかない。

 モモが誘き寄せ出来た群れに十本か十数本の矢を撃ち込み二十六階層まで…とは言わないがあいつらが追いかけてこないところまで逃げる。それを繰り返せばあの群れもなんとかなるのではないか?


 いや、地道に一匹ずつ誘き寄せ倒せばいいのだがダゴンにそんなに時間をかけたくないってのが本音だ。

 よし。これで行こう。


「モモ!頼みたいことがある」


「はい!ガーゴイルなら任せてください!」


「そうじゃない」


「ではなんです?この魔石は私ではどうしようもないですよ?」


「それも違う。二十五階層に戻るからダゴンを誘き寄せてほしい」


「え!?戻るんですか!?しかもまた囮りですか!?」


「囮り…といえばそうか?群れの近くで殺菌作用のある水を巻いて階段まで逃げてくればいい。そしたら俺が魔法を放つ」


 そう先程考えていたことを詳しく話す。


「むむむ…。確かにその方法なら危険は少ないですし、それなりに成果はでそうですけど……この階層私の魔法だけじゃ駄目なんです?そんな頼りになりません?」


「戦闘に関しては頼りにはならんだろう…。確かにモモのおかげでガーゴイルは倒せたが攻撃魔法ではないし、モモだって魔力の限界はあるだろう?俺に攻撃手段がないとモモが魔力切れた時何も出来ずにやられる」


「確かに…仕方ありませんねっ。ダゴンを誘き寄せてあげますよ!」


「ああ。すまんな。危なそうなら挑発せず逃げて構わないから。お前なら空に逃げられるしな」


「わかりました!」


 方針は決まったので二十五階層に戻る。階段の入り口から外を除くと周りにダゴンは居ない。やはり少し離れたとこで階段を守っているのだろう。


「よし、頼んだ」


「はい!」


 モモが階段から飛び出し数分。モモが戻って来た。後ろにダゴンは見えないが…。


「大地さん来ますよー!」


「見えないが…」


「かなり遠くから殺菌作用の水を垂れ流しても反応したので結構距離はありますが…すぐ来ますよ!」


 モモを待っている間に増やし十四本となった待機させた矢を構えると同時にダゴンの群れが見えて来た。


「モモは出来るだけ下の方に逃げてろ。俺も撃ったらすぐ行く」


「わかりましたー!」


 出来るだけ惹きつける。あいつらは水大砲を撃つときは止まっていたからもし、止まったらそこで撃ち込む。


 もう少し…。もう少しこっちに来い…。水中でも十分な威力を持って当てられる距離に来たが水大砲を撃つわけでもなく直進してくるから耐える。五メートル程先で一斉に止まって上体を逸らし始めた。


 はぁあっ!


 矢を撃ち、当たったかどうかなんて見届けずに一目散に階段を下に潜る。


 ドンッドドドンッ。


 前回程の勢いも音もなかった。三十匹くらいだと仮定したら十匹ほどは殺せたか、水大砲を阻止出来たのだろう。モモに追いつき数分待機した後恐る恐る上に向かう。階段の入り口にはダゴンは見えない。そーっと顔を出すと遠くに去っていくダゴンが見えた。


「よし。作戦は成功だ。後は何匹やれたか…」


 今回は群れに複数の矢を撃つ上、水大砲が来る前に発射することができたから頭部を狙った。五、六匹は仕留められていて欲しいが…。


「大地さん!これ結構倒せたんじゃないですか!?」


 一足先にドロップを確認しに行ったモモが呼ぶのですぐさま近寄ってドロップを数えると…。


「ダゴンのサクが八本に、スキルペーパーが四か。上出来過ぎだな」


 サクは赤身が六、中トロが二。スキルペーパーは【水泳】三つと【水中呼吸】が一つ。目当てのものはなかったがこの方法が有効だったので収穫はあった。


「モモ。次は別の群れだ。群れの数は三つだよな?もう二つの群れも同じように攻撃した後は、今の群れをもう一度だ。各群れに二〜三回ずつ今のをやろう。十匹切っちゃうと適当に放った矢じゃ当たらなくなるかもしれないし、そう何度もやったら警戒されて遠くから水大砲攻撃されるかもしれないからな。各群れに二回ずつでいいか。それで魔法のスキルペーパーが出なきゃまた考える」


「おまかせください!ふふっ。大地さんが凄く頼ってくれますっ。迷宮妖精冥利に尽きるというものです!」


 俺的には普段なんだかんだ言いつつもこうやって使いっ走りにするのは少し申し訳ないと思っていたのだが…なんか嬉しそうだしいいか。

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