第26話 ガーゴイル
どちらにせよダゴンは戦いづらいし、二十六階層がガーゴイルだと事前にわかっていても二十五階層でそんな長居はしなかっただろう。
会話をしながら歩いていると前方から、ブンッ。ブンッ。と何か重たいものを振る様な音が聞こえてきた。この階層が本当にガーゴイルメインならガーゴイルの羽音だろうか。通路の正面真っ直ぐ、石壁と同色の物体が見えてきた。
「まだ良く見えないが、あれがガーゴイルか?」
「はい!灰色ですし、飛んでますし、間違いないと思います」
ならば。先制するべきだろう。飛んでいる相手への攻撃手段は限られる。二十五階層から頻繁に使う様になった木の矢を放つ。それなりに太く先端は出来るだけ細く。威力もそれなりに。
ガンッ!
結構は慣れているはずなのに硬い物がぶつかった様な音がした。
やっぱり無理か…。ガーゴイルだもんな。石像だもんな。しかも魔物だ。ただの石が動いているわけではないだろう。物理耐性とかそういったスキルも持っているだろうから倒せないだろうとは思っていた。
羽音は一層大きくテンポも速くなり、どんどん近づいてくる。
今度は先程よりも多めに魔力を込め、鏃も大きくし放つ。
バキッ。
目を凝らしみるとしっかりと刺さっていた。
「だが動きは変わらないな…」
棍棒を構えガーゴイルが近づくのを待つ。空を飛んでいても上空から遠距離攻撃して来ないのなら攻撃する際は近づいてくるしかない。そのタイミングで思い切り殴る。
「ふんっ!」
バキッ!!
「はぁあ!?ちょっ!」
棍棒が折れた!嘘だろ!?どんだけ硬いんだよ!
「モモ!」
「はいはーい!牽制ですね!」
モモが俺を攻撃するために地表に来ていたガーゴイルの上に行き魔法を使う。
「ガァァァアアア!!」
は………?
モモがいつものように生活魔法の水をかけた瞬間ガーゴイルが悶え叫び始めた。
【水魔法】が弱点って…生活魔法でもいいのかよ!しかも効きすぎだろう!?
「ふぇ…?だ、大地さん大地さん!もしかしなくても私ガーゴイルとの相性バッチリじゃないでしょうか!?」
「あぁ…。そ、そうだな」
ガーゴイルどんだけ水に弱いの!?まじで今から戻ってダゴン狩りするか!?
とりあえずモモに水をかけられて地面でのたうち回っているガーゴイルを蹴りまくる。棍棒が折れるくらい硬い敵に素手で殴りかかるなんて勘弁。靴を履いている足ですら思い切り蹴ると痛いのに。
これ…ダメージないんじゃね…?
「モモ水」
「はいはーい!」
「グワァァァァォ」
叫んだと思ったらパタリと動かなくなった。そして間もなく消え去った。
「なぁ…」
「はい?」
「この階層水魔法がなきゃクッソ難易度高いけど、水魔法あればどの階層よりも楽じゃねーか?」
「確かにここまで効くとは思いませんでしたね!ふふふっ。私の時代が来ました!」
確かに…ここでモモのレベル上げをするのがいいよな。その為には俺も何かしら攻撃手段が欲しいとこだが…ダゴンのところに戻る…か…?嫌だな…。
「あ、このスキルペーパー【身体強化魔法】ですよ!」
「おお。魔法か。そのまま腕力だとか脚力だとか身体能力が上がる魔法か?」
「はい!」
それはいい。強化すればガーゴイルに攻撃も通じ…そうにないなあ…。とりあえず取得する。
そしてもう一つのドロップ。ブロック石みたいな両手サイズの四角い石。
「んでこのブロック石みたいなのはなんだ?」
「魔石ですね」
魔石…?魔石って俺のイメージだと魔物の心臓的な菱形だったり丸型だったりして紫だったり黒だったりするものなんだが…魔石?
「あ。大地さんもしかして漫画とかに出てくるビー玉みたいな魔石を想像してます?」
「いや…想像したが、お前に漫画の知識があることにびっくりだわ。ダンジョンはどんな意図でそんな知識をお前に植え付けたんだよ」
「日本人ってそういうの好きな人とか好きじゃなくても知っている人多いじゃないですか?なのでサポート相手の人間と良好なコミュニケーションが取れるように、ですね。海外の迷宮妖精はその国の宗教知識とか神話知識が豊富だったりするようですよ?」
ああ…。やっぱり世界中でダンジョンができたのか…。
じゃなくて魔石だよ魔石。
「結局これはなんなんだ?」
「魔力を含んだ石ですね。普通の石で石剣作るよりもこれで作った方が頑丈ですし、建物も魔石で作る方が経年劣化しにくくなります!」
「うん。いらん」
「ですねぇ…。持っていけませんし」
さて…この魔石には興味無くなったし、どうするか…。
ダゴンを誘き寄せ、二十五階層のこちらに降りてくる階段まで逃げ、階段から魔法を撃って倒す…ってのも考えたが魔法を撃たれたら逃げ場がないし、階段を降りて来られないとは限らんしな。本当どうするか…。この階層の敵を全てモモ頼りにするのは不味いだろう。モモだって魔力を消費するのだ。俺も攻撃手段は持っておかなければ安易に進めない。
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