第23話 未だ浅瀬
「ここからが一番近いな」
大岩までの距離が一番近いところまで来た。
「ですね!大地さんがダゴン達にやられたら私が頑張って引きつけてあげますから大地さんも頑張って再生してくださいね!」
頑張って再生って…。勘弁してくれ…。
あー、くそ。水中かぁ…嫌だなぁ…。
「なぁモモ」
「なんですか?」
「階段探してきてくれないか?」
「私だけでですか!?嫌ですよ!私大地さんみたいに再生能力ないんですよ!?」
「でも攻撃を仕掛けなきゃ積極的に襲われることないだろ?今までの傾向的にどの魔物もお前が攻撃しなきゃ俺にしか攻撃してこないし」
「確かにそうですけど!縄張りとかに入ったら攻撃されちゃいますよ!」
「確かにそうかもしれんな。…仕方ない。覚悟決めるか…」
「そうしてください!」
頬を叩き深呼吸をする。ここで止まっても仕方ない。水の中に潜りたくないからって上階に逃げるとか絶対に嫌だしな。
別に潜れないわけじゃあない。泳ぎがそんなうまいわけではないが普通に泳げる。今から【水泳】スキルもある。それに昔から素潜りは好きだし得意だったのだ。【水中呼吸】がある今なら余裕だ。後は気持ちの問題だけだ。
この湖は透き通っているし、ダゴン以外いない。ダゴンにだけ気をつければなんてことはない!はず…。
そう自分に言い聞かせて少しずつ水の中に入っていく。【寒冷耐性】のおかげかそんな冷たさを感じない。
「大地さんって結構臆病でした?」
チッ。このヒヨコ。わざとらしい挑発ならまだしも素で疑問です。って感じに聞いてきやがった。カチンときた俺はザブザブと音立て湖に入っていく。
臆病ではない!ちょっと…そう。ちょっと気分が乗らないだけだ!
頭の先まで水中に浸かる。そして【水中呼吸】のスキルを試してみる。ちゃんと呼吸できるのか。レベル1ってのが不安要素だ。
口を開け少しだけ呼吸をしてみる。
すぅーーーーーーーーー。
ぶはっ!ふっふーーーー!きっついわ!!!
確かに水は入ってこない。咽せることもないし溺れることもない。だから全然空気を吸えない。タオルを口に当てて息をする感じ、か?やっぱりレベル1だからだろうか…?
「ぶはっ!ぜぇぜぇ」
「大地さんどうしました?」
「【水中呼吸1】じゃあ使い物にならん。レベルが上がるまでここで練習するからダゴンが来ないか見ててくれ」
「あ、はい。わかりました」
その後ひたすら練習をする。水に浸かりある程度呼吸をすると苦しくなるので水面から顔を出し呼吸する。
それを何度も繰り返す。
何時間経っただろうか。肉体の疲労すら再生する俺がもう疲れて寝たいって思い始めた。
ステータス表示!
————————————————————
個体名【泉 大地】
種族【日本人】
性別【男】
Lv【45】7UP
スキル
・戦闘スキル
【格闘術2】【受身3】【腕力上昇1】
【肉質向上1】【聴覚上昇1】【魔力操作1】
【生命力上昇1】【木魔法1】【表皮硬化1】
【脚力上昇1】【水中呼吸3】UP【水泳1】new
・耐性スキル
【苦痛耐性3】【物理耐性3】
【毒耐性3】【精神耐性3】
【寒冷耐性1】new【水圧耐性1】new
固有スキル
【再生】【種】【ドロップ率上昇】
【時空間魔法】【超速再生】
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【水中呼吸3】か…。だが、まだ地上と同じ様には呼吸できない。
「大地さん大丈夫ですかー?」
「疲れた」
「そりゃ疲れますよ。ほぼ一日中ですよ?【水中呼吸】の練習を始めて二十時間くらい経ちますもん。どんだけ異常な精神力があるんですか。いくら肉体は再生したって普通精神が持たないと思いますけど」
まじか…。二十時間やり続けて3。これ5まで?10まで?それとも100まであるとか言わないよな?流石に心折れるんだが…。
「……スキルレベルいくつが上限だ?」
「以前にも言いましたが基本的に5が最大です。超人というか亜人級です。ただ、一部スキルに最大レベルが10までとかのもあります。まあ大抵5ですね。【水中呼吸】なら確実に5かと」
お、おおぉぉ。なら頑張れる…!5になればきっと地上と同じ様に呼吸できるのだろう。単純計算で後二十時間やれば…………二十時間かぁ…。
「よし。寝る」
湖から上がって離れたところにある木まで歩き、濡れたズボンとシャツを脱いで絞ってから木の枝に引っ掛けておく。流石に下着はそのままだが仕方ない。半裸で横になる。
「えぇーーー。寝ちゃうんですかー?」
「どうせ俺が寝たらお前も寝るだろ?寝たらまた頑張る」
「まあ寝ますけど…。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
♦︎
そして目を覚ますとモモはやっぱり俺の上で寝ていた。そっと下ろしてやりまだ湿っている服をきて湖まで行き水を飲んでみる。
「うん。飲めるな」
そして顔を洗い、また水に浸かる。
「せめて【水中呼吸4】まで持っていきたい。3のままじゃあ潜るだけならまだしも戦闘は無理だ」
練習を開始する。寝る前と同じ様に、だが寝る前よりも苦しくないので長時間潜って居られる。
「大地さん起こしてくださいよー」
頭上を見ると水面にモモがいた。
「別に練習してるだけだし寝てて構わないぞ」
「大地さんが頑張ってるのに寝てるだけってなんか申し訳ないというかなんというか…」
「気にしなくていいんだが…。とりあえず4まで上げたいからもう少し待っててくれ」
「わかりました!」
その後も無心になって潜る。初めは水の中がキラキラしていて眺めながら練習していたのだが同じ景色は流石に飽きる。だから今は眼を閉じ無心で呼吸を続ける。
ん…?呼吸が楽になった。少し鼻詰まりしているな、って時に似た感じだ。ステータスを見ると4に上がっていた。
「ふぅ…。やっと上がった。何時間経った?」
「私が起きてから五時間くらいですね。時計があるわけではないので正確な時間はわかりませんが、私の腹時計は結構正確ですよ!因みに何故かわかりませんご、迷宮が出来てから何日経ったかどうかはちゃんとわかるんですよね。知識に何日目って更新されていく感じで」
「へぇ。まあ今の状況じゃ正確な時間がわかる必要もないし、いいさ。それより4になったから階段を探しに行こう」
「はい!やっとですね!じゃあ案内します!」
「おう。頼む」
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