第22話 階段探索

 

「端から見て行こうか」


「はい!…あ、これは中トロだと思います!」


「………後で味見してみるか。それよりこのスキルペーパーは?」


「えーっと、【水泳】です」


「【水泳】って。水中呼吸とか期待していたんだが…」


「まあまあ、まだたくさんありますから!」


 確かにたくさんある。ごちゃごちゃと落ちているのでもはやドロップの数を数えても何匹倒したかわからないな。


「あ!大地さん!こっち!大当たりですよ!」


「…これ何だ?」


「ダゴンの肝です!レアですよ!薬の材料になります!」


「………何の薬だ?」


「酔い止めです!しかもお酒を飲む前に飲めばどれだけ飲んでも酔わなくなるくらい肝機能が上がって…」


「どうでもいいわ。薬作れないしレアドロップでも置いていくしかないだろうが」


「あ、そうでしたね。それでこっちが鱗です。これはただ綺麗な鱗ですね。硬いので何か使い道があるかもしれませんが」


「まあ…それくらいならポケットに入れておけるか。それで?それと一緒に落ちてるスキルペーパーは?」


「えー、【水泳】ですね」


「いらん。燃料だな」


「勿体無い…まあ仕方ないですね。…あ!これ【水中呼吸】のスキルです!」


「おお!でかした!」


 早速【水中呼吸】を手に取る。ついでに【水泳】も。【水泳】が二連続できたから水中で呼吸するスキルはないのかもな、って思っていたがあったな。


 その後も色々見て回った結果、鱗二十枚、赤身十五個、中トロ八個、大トロ五個、カマが三個、尾っぽが三個。スキルペーパーと食材は一緒に出るが一匹から食材が複数出たことはない。食材だけをみると三十四個。つまりは三十四匹以上居たってことか…。いくら陸ではトロいといっても良く無傷で倒し切ったな…。

 水魔法を陸に上がってから使われなかったのが大きい。もしかしたら水中でしか使えないのかもしれない。


 そしてスキルペーパーだ。【水泳】十枚、【水中呼吸】三枚。この二つは初めの方で出たからいいとして。

【水圧耐性】【寒冷耐性】の二つがでた。この二つは水中で行動するなら必須かもな。

 そして期待していた水魔法だが…でなかった。この結果を見て考えたのが、やはり水大砲は水中でしか使えないのではないか?

 モモは魔力反応があったといっていたが魔法ではなく含んだ水を口から勢いよく出しているだけだったのかもしれない。魔力の反応は【水泳】のスキルを発動していたから魔力反応があった、というだけの可能性もある。


 まあ運が悪いだけで水魔法のスキルも出て来るかもしれないが。


「大地さんどうします?そろそろ階段探します?」


「そうだな…。水魔法が出るまで…とは思ったが、出るかもわからないしな。囮りをまたやってくれるならそれでもいいが?」


「嫌です!超怖かったです!」


「なら階段を探そう」


「賛成です!」


 階段を探すことに決まった。とりあえず降りてきた階段の湖を挟んだ反対側から調べていく。

 陸には魔物がいないので完全に散歩気分だ。

 道中バナナらしき果物があったが甘ったるくてどうも食べる気がしない。だがりんごよりマシだったのでちゃんと全て食べた。

 食べ物といえばダゴンの中トロ、大トロ、カマ、尾っぽ。ダゴン尾っぽあったっけ?とは思ったがモモ曰く小さいながらもお尻辺りに尻尾の様にちょこんと生えていたらしい。手足を動かして泳ぐんだから必要ないだろう。とは思ったがツッコむ相手が全員アイテムに変わってしまったので心の中だけでツッコむに留める。

 中トロのサクは赤身より食べれた。大トロのサクはちょっと脂身が多くて薄く切って寿司にするならまだしもサクを齧って食べでも美味しくない。

 カマと尾っぽは鱗が残っていたので齧るのは無理だろう。モモに頼んで焼いて食べる気にもならなかったので放置だ。一応中トロのサクだけは一つ持ってきた。ライノマンの角をベルトの隙間に差し込んで、空いた手で持っている。いくら魔力の膜が覆ってあるとはいえ素手でサクを掴んでいるのはいい気分ではないが。俺の体温とこの気候ですぐダメになりそうだがこれは次の階層まで持っていく気はないから我慢する。次の階層で食べ物が手に入るかわからないので階段を降りる前の腹ごしらえとして持ってきただけだ。


「全然見つかりませんねー?」


「そうだな」


 降りてきた階段の正面。湖を挟んだところは壁際まですでに探したが階段はなかった。

 そこから壁際に沿って外縁を周るが今のところ見つかっていない。


 一時間、二時間どれくらい経っただろうか。


「飽きたな…」


「そうですか?果物もたくさんあって味見しながらの探索なので私は楽しいですよ?」


「美味けりゃよかったが…なんでどれも甘ったるいんだよ!」


 バナナを見つけた後は梨、桃、葡萄と見つけたがどれもこれも甘すぎるのだ。りんごやバナナを含め梨が一番甘みが少なかったが、それでも俺にとっては甘すぎる。まあ食べれないことはないが、必ず一口食べると、うっ。ってなる。


「私は桃が一番好きですねー」


「モモだからか?」


「はい!」


 ……単純すぎるだろう…。


 そして外縁を一周した。木は生えているが視界が遮られるほどではないから階段があれば気がつくと思うんだが…。


「湖の中って可能性は…」


「あっ。その可能性は高いですね。陸に階段があったら魔物と戦わずに降りれちゃうってことになりますからね。そしたらダゴンがこの階層にいる意味はなくなっちゃいますもんね」


「っ!」


 このっ!ヒヨコ!っと思ったが確かに考えればわかることだ。わからなかった俺も悪いのだから怒るのは我慢する。


「仕方ない…。湖の中にはいるか…。お前は泳げるのか?」


「これでも妖精ですよ?空中、水中なんの問題も無く移動できます!」


 そりゃあ便利だ。

 湖まで戻ってきたがこの広さの湖をダゴンに遭遇しないように階段を見つけるのは不可能だろう。さっきの様な群れに水中で襲われたら死ぬ自信がある。…いや、水中呼吸持ってるから余程のことがなきゃ死なないか。だが一応どこら辺を探すか目処はつけておかないといけないよな。


「何処に階層あると思う?中央は探すとして…」


「あの飛び出でいる一際大きい岩の辺りとかですかね?後は私がダゴンを挑発しに行ったところとか?」


「なんでだ?」


「あの規模の群れがたくさんないとしたら、階段の門番の可能性もあるんじゃないですか?あの規模がたくさん居たら無駄になりますが」


「確かに…。あの群れがいたのって中央近くか?」


「はい。中央よりは手前でしたけど」


「なら門番の可能性はあるか。じゃあ岩に一番近いところから潜って岩を見て、群れがいた所を見て、中央に向かおう。岩のところにあればいいが…なさそうだよな…」


「ですね。私も中央にある気がします!」


「仕方ない…。案内は頼んだぞ?基本的に水の上からを飛んで案内してくれ。水中だと場所がわからなくなるかもしれないからな」


「わっかりましたー!」


 自分は安全圏に居られるから元気なわけじゃあないよな…?

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