第24話 水中戦

 

 ようやく進める。これでもし湖に階段なんてなくて陸の方の何処かにひっそりと隠されていたら本気でキレるかもしれん。

 湖の上を飛ぶモモを見ながらも周りを意識してダゴンがいないか注意して進む。 


 水中は陽の光…発光花の光が反射してキラキラしている。草や岩があるがそんな多くはない上魚も居ないので淋しい景色だ。それでも綺麗だが。

 水が透き通っているから大きな岩がここからでも見え、モモの案内が必要なかったかもしれない。と思ったがモモにもダゴンを警戒して進んでもらっているから無駄ではないか。

 そしてダゴンと出会うことなく大岩にたどり着いた。


「大岩ですよー」


「ああ。…というか水中でも声出せるんだな。水の上からでも俺の声は聞こえるか?」


「聞こえてますよー」


 不思議なもんだ。

 大岩の周りにある小さな岩の陰や、大岩の反対側。全てを見たが階段は見つからなかった。


「階段は見当たらない。次だな」


「はーい」


 ここからは大岩の様に目印がないのでモモをちゃんと追いかけていく。


「モモ!待ってくれ」


「どうしました?」


「この先で何か動いた気がする」


「ダゴンですかね?」


「まあこの湖で動く物って言ったらダゴンだけだろう?」


「ですね」


 木の矢をパパッと生成して打つ。見えないので元から当てる気はないため牽制のための簡易発動だ。

 何かが動いたあたりに打つとすぐさまダゴンが飛び出してきた。


 ごはっ!?


 突っ込んできたダゴンを避けることができず体当たりをされた。水中だから後ろに力の逃げ道があるためそこまで痛くはなかったが…。

 おいおい…。速すぎるだろ!?陸との差がありすぎるぞ!?

 ダゴンは大きな口を開けてギザギザの歯をカチンカチンとしている。音は聞こえないが…あいつらの戦闘法は噛み付き、水大砲、体当たりってとこか…。


 ダゴンは俺に体当たりをして少し離れたのでその間に矢を生成し始める。水中で威力が下がらない様出来るだけ細く、そして鏃はモリのように…。ダゴンも口を開け始めたので水大砲を撃つ気だろう。さすがに水中じゃ避けきれない。【水泳】も練習しておくんだった…。


 当たるのを覚悟でやるか…。あいつが水大砲を撃つと同時にこちらも撃つ。それならばあいつも避けるのは難しいだろう…。完全した矢をいつでも放てる様にしておくとダゴンが上体を逸らした。


 今っ!


 ぐぁ゛!


 いってぇ!右肩がジンジンと痛む。血は出ていないが痺れた様に動かない。引きちぎれたわけでもないしこれくらいならすぐ再生するだろうが…。群れにあったら絶対無理だろ…。

 ダゴンはどうなった?


「大地さんお見事です!あの状態で心臓にピンポイントで当てるとか凄いですね!」


 モモの言葉でどうなったかがわかった。倒せたのか。


「胴体を狙っただけだから偶然だが…良かった」


「あぁっ!大地さん大地さん!【高速水泳】のスキルですよ!」


【高速水泳】?【再生】も【超速再生】って上位互換があったが、スキルには下位スキルとか上位スキルがあるのだろうか?耐性系の上位互換は無効スキル、とか?

 モモがスキルペーパーを加えて持ってきてくれたのでそれを受け取って取得する。


「早く泳げる様になるのか?」


「そのはずです!」


 試しに泳いでみるとさっきよりもひとかきする毎の距離が増えた。このスキルは水の抵抗を減らしたりしてくれているのだろうか…?

 まあひとかきで進む距離も増えたしその分移動速度も上がると思うがこれでも群れとかち合ったら負けるよな…。また再生頼りの戦闘になりそうだ。


「行こう。案内頼んだ」


 先程よりも速く進む。逃げるだけならなんとかなるのではないだろうかと思うくらい速度はで出るからダゴンの本気の速度には敵わないだろうな…。


「大地さんここら辺ですよ」


 考え事をしていたらあっという間に着いた。いや、距離的にあと少しだったのだろう。小さめの…と言っても俺くらいの大きさの岩がいくつもある場所だ。岩の陰も全て見てみるが階段どころかダゴンもいない。


「ハズレだな…。中央までどれくらいだ?」


「すぐそこです」


「ならすぐに行こう」


 二、三分程泳ぐと階段が見えてきた。


「おお!あっさり…ではないがダゴンの群れがたくさんいると思っていた分拍子抜けだがすぐ見つかったな!」


「大地さん急いでください!!」


 あ?モモを見ると別のところを見ている。モモの視線の先を追って行くとダゴンの群れが…。


「ここまで来て群れとの戦闘は勘弁だ!」


 すぐさま全力で泳ぐ。


「大地さん反対側と正面からも!」


「んなこと言われてもっ!全力でっ!泳いでるわ!!」


 逃げるか…?いや、階段は目と鼻の先だ。ダゴンも目と鼻の先先だが戸惑ったら階段にたどり着く前にダゴンに襲われる。


「あっ!水を飛ばしてきます!」


 三方向から撃たれたら逃げようもないだろう!腕がつるのではないかと思う程全力で手を動かし階段に突っ込む。


 ドドドドドドドドッ!


 すぐ後ろから大きな音がすると背中に水圧を感じ階段の下へと吹っ飛ぶ。

 階段をある程度進んだとこでなんとか止まることができた。つか水が満たされている降り階段って次の階層は全て水没してる階層か…?モモに聞いても知らなさそうだが…あれ…?モモがいない!?


「ッモモ!?」

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