第16話 殺菌?



モモが火を出し嫌がらせをすると鶏は攻撃を受けた場所、上を見上げる。その瞬間に大勢を低くしながら突っ込み下から首を狙い棍棒を振り上げる。


ゴキッ。


その一発で首の骨が折れたのか鶏はすぐに倒れた。


「ドロップキックと羽防御はびびったが…そんな強くなかったな?」


「いえ、狙った所がよかったです!細い脚の方か顎のところにある肉髥の下が弱点ですから。他の部分の防御は高いらしいです」


「ニクゼン…?つか弱点知ってるから接敵する前に説明しろ。何のためのサポート役だ…」


「えへへ。咄嗟に出てこなかったんですよー」


「はぁ。それでこいつはイビルルースターとイビルイェンどっちだ?」


「トサカが大きいのでイビルルースターですね」


「あ、そうか。雌はトサカが小さいのか」


「はい。雌雄の特徴は一般的な鶏とあまり変わりませんよ?雄も雌も大きさは変わらないようですが」


「ほーん?」


そんな事を話しているうちに鶏が消えてドロップアイテムが現れた。


「あ!やりましたね!鶏肉ですよ!」


「ああ。鶏肉とスキルペーパーか。スキルペーパーは何のスキルだ?見てくれ」


「はいはーい!これは【脚力強化】です!」


「なら使っても問題ないな。それで…鶏肉をどうするか。燃やせるものがあればいいんだが…」


「そこら辺の草や蔦、発光花を集めたらどうです?」


「鶏肉が焼けるくらい燃えるか?というかこんな無風の通路で火を焚いたら不味くないか?」


「たくさん有れば頑張って燃やしてみせます!まあ長くは燃えないから小さく切り分けないと生焼けくらいが限界でしょうけど。それと換気に関しては生活魔法に微風を出す魔法がありますよ!」


「ナイフもないんだから切り分けられないだろうが…。この毛皮の半纏なら燃料になる…か?」


微妙だな。種とっておけば良かった。アレを食べるって思考が浮かばなかったからな。怪しい種ってだけだし。というか小さな種ならまだしも卵サイズの種なんて普通的食べないから食べれる物だと考えつかなかったのは仕方ないな。

というかこの生肉安全なのだろうか?変な菌とかついてるんじゃねーか。


「千切って焼けばいいんじゃないですか?」


「手も満足に洗えないのに生肉を直接触るのは勘弁」


「私水出せますよー?」


「洗剤も出してくれたらやるが?」


「洗剤は無理ですけど殺菌作用を込めた水なら出せますよ?」


「は?……どんな魔法だよ」


「生活魔法です!」


「………殺菌作用って何の成分がどれくらい入ってるんだ」


界面活性剤なのかアルコールなのか。界面活性剤ならイオン系なのか非イオン系なのか。アルコールなら濃度はどれくらいなのか。色々あるだろうが。なんだ殺菌作用のある水って!ファンタジーかこら。


………ファンタジーだったな。


「そんなこと知るわけないじゃないですか!あっ。でもでも魔力と私の優しさが入ってます!」


「ならその水をこの生肉にかけると、雑菌とかをどうにかできる、と?」


「一応この生活魔法の殺菌作用のある水は、殺菌作用とは言いましたけど身体に害を齎すのもを流す、って効果ですね」


「微量なら身体に害はない。多量なら害はある。短期的に摂取するなら害はない。長期的に摂取すると害がある。とか判断できるのか?というか仮にその水で殺菌した食べ物ばかり食べてたら免疫が下がったりするんじゃないのか?」


「もお!なんでそんな細かいんですか!神経質ですか!この迷宮とか私とか見てもすぐ順応してた癖に!」


「いや…まあそういう物なんだなって納得出来ればいいんだが。俺こんなとこで食中毒とかになるのも、上からも下からも大変な事になってるときに魔物に襲われて垂れ流しで戦うのなんて死んでも嫌だし?」


「なにが、嫌だし?ですか!そういうものだって納得してください!魔法です!ファンタジーです!私にだってそんな知識はないんですから!」


うむ……。まあ…その水をかけて少し食べて、手もその水で洗って少し様子見すればいい、か?


「というか超速再生があるんだから食中毒になっても、「あ、お腹痛い!あれ?痛くない?」くらいで終わりますから!」


「おお。確かに」


モモが賢い…。なんか敗北感が…。いや気のせいだな。たまたまだ。


「なにか失礼な視線を感じます!」


「気のせいだ。じゃあ一応生肉にその殺菌作用の水をかけてみてくれ」


「まったく!」


魔力で出来た膜?を破った肉にぶつくさ言いながらちゃんと魔法を使ってくれるモモ。肉の見た目は変わらんな。


「あとこのライノマンの角も殺菌してくれ」


ライノマンの角も殺菌してもらい角に千切った肉を刺していく。まあ太いから三切れくらいが限界だが。というか再生があると体調を気にしなくて良いってのはいいよな。さっきまで気にしてたのが馬鹿みたいだ。


「これくらいの大きさなら火種がなくても魔法だけで焼けないか?」


「うーん…やってみます」


パチパチって音がして表面が焼けてくる。


「なあ。食中毒でもすぐに治るんだったら毒とかそういうのも平気なのか?」


「大丈夫ですよ。再生って身体を健康な状態に戻す。って感じですから」


「なら生で食べても問題はないってことか」


「美味しいかどうかは知りませんがまあそうですね?」


「なら死滅した細胞とかも再生していくか?」


「おそらく、としかわからないです」


「つまりさ、俺これからもう歳を取らないって…ことにならないか…?」


「あれ?言いませんでしたっけ?……言ってませんね。再生を手に入れた瞬間その肉体の最も健常な状態に再生されます。その後外的要因、内的要因関わらず肉体に変化があれば最も健常の状態に再生されます」


鳥肌がたった。それって最早呪いじゃないのか…?赤ん坊が再生を手に入れたら赤ん坊のまま、ってことじゃ…?


「お前そんなこと一度も言ってなかったじゃねーか!」


「いやぁ…知識はあるんですけど、ほら、膨大な知識なんですぐに思い出せなかったり、後からそういえば、ってのが多いんですよー…怒ってます?」


俺が怒っていると思っているのか尻すぼみになりながら縮こまってる。

腹は立ったが…モモがいなきゃなにもわからなかったんだから怒るのは違う、だろうな。


「いや、怒っては、いない。ただまあ思い出したら早めに教えてくれ」


「わ、わかりました!」

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