第10話 アルラウネ


次に魔物を見つけたのは曲がり角を曲がったところだった。オークが背中を向けて悠々と歩いていたため、息を殺し一気に駆け寄り頭へ棍棒を振り下ろした。

そのあとはやはり倒れたオークを滅多打ちにして戦闘終了だ。

収穫はオーク肉のブロックだった。いらん。

後ろから不意を付ければ問題なく倒せるレベルになったってことだ。戦闘の度に棍棒で吹き飛ばされたらたまったものではないので、助かる。


それにしてもエンカウント率が少ない。ダンジョンと言われて想像していたのはそこら中に魔物が徘徊しているイメージだったのだが…。


そんなことを考えていたらまた魔物を見つけた。だが…あれはオークではなさそうだ。緑色っぽいしアルラウネか?


「モモ。あれがアルラウネか?」


「そうです!大地さんなら余裕ですよ!精神耐性高いですし!」


「なら、いくか」


あちらも俺たちに気付いているようだがオークのように突っ込んでこない。両掌をこちらへ向けてニヤニヤしている。


「あれはなにをしているんだ?」


「混乱とか精神異常をもたらす胞子でもだしているんじゃないですかね?」


「ふむ。ところでモモには効かないのか?」


「どうでしょう?効かないとは思いますが…」


「モモのステータスとか見れないのか?」


「自分では見れませんねー。大地さんが【鑑定】スキルを持っていれば見れるかと?」


「なら尚更【鑑定】が欲しいな。さて手を翳すだけでなにもしてこないみたいだし突っ込んで殴るか」


「あれですね!発言が野蛮人です!」


「うっさいわ」


アルラウネに駆け寄り棍棒を振り上げる。自分のスキルが効いていないのに気付いたのだろうか?ニヤニヤしていた顔が驚きに染まっている。

それを見届け棍棒を頭へ振り下ろす。


グシャッ。


「は?」


アルラウネはあっさりと潰れた。

いやいや。一撃?簡単すぎるだろう。初めにコイツに出会っていればオークにボコボコにされることもなかったんじゃあないか?


「一撃でしたねー。まあキングエイプとオーク四体倒してますしレベル二十超えてますよね?ほぼ同レベルならアルラウネみたいな非戦闘系種族ならこんなものかと思いますよ」


「あ?あ、そうか。オーク倒した後ステータス確認してなかったな」


「ちゃんと確認しておいた方がいいですよ!」


「了解」


アルラウネはすぐに消え、スキルペーパーが落ちた。

ん?なんか他にも落ちているな。

スキルペーパーの横にあったものを拾い上げてみる。

これは…種か?Sサイズの鶏の卵くらいの大きさだ。


「それは多分魔力の種ですね。魔力が豊富に含まれていて魔力ポーションを作れます!」


「まず言っておくが、この世界に魔力ポーションなんていう不思議ドリンクの製法なんてないからな?モモは作り方とかレシピとかわかるのか?」


「そんなことまで知りませんよう」


「じゃあ不要だな。でかいし邪魔になるから捨てていくか」


「そうですね。そういえばオーク肉も放置してましたね」


「そりゃあ鞄もなにもないのに肉持って戦闘できるわけないだろう」


「勿体無い….」


「んでスキルペーパーだな。思ったんだがモモが読めるなら先にどんなスキルか見てもらった方が安全だよな?見てくれるか?肉質向上みたいなスキルなら捨てていく」


「わっかりました!ふむふむ。大地さん!」


「どうした」


「おめでとうございます!な、な、なんと!!…なんのスキルでしょう!」


「なんでそこで勿体ぶる」


「もー!ノリ悪いですよー!どぅるるるるる!…魔力操作のスキルです!」


「おお!?まじか!これで魔法使えんのか?」


「ツッコミは無しですか…。こほん。魔法が使えるかは魔力量次第ですね。時空間魔法は魔力がたくさん必要ですから」


「そうか。とりあえず魔力操作を覚えるか」


スキルペーパーを持つと消えていく。よし。ステータス確認だ。


————————————————————


個体名【泉 大地】

種族【日本人】

性別【男】

Lv【21】2UP


スキル

・戦闘スキル

【格闘術2】【受身3】【腕力上昇1】

【肉質向上1】【聴覚上昇1】【魔力操作1】new


・耐性スキル

【苦痛耐性3】【物理耐性3】

【毒耐性3】【精神耐性3】


固有スキル

【再生】【種】【ドロップ率上昇】【時空間魔法】


————————————————————


オークとアルラウネ倒して2アップか…。


………………………あれ?


「なあモモ」


「なんですかー?」


「思ったんだが…階層外エリアからボス階層は仕方ない。上への道がなかったんだから。だが…よく考えたら二十階層…ボス階層になら上りと下り二つの階段がある、よな?

でも今の俺は二十一層に降りて、更に深いとこまで降りようとしている。別に魔力増強とかは下の階層の魔物からしかでないんだろ?」


「階段もありましたし、下の階層でも確率は低いですが手に入る可能性はありますね?それがどうしたんです?」


「なんで今魔物を探して下の階層を目指してるんだと思う?」


「それは大地さんの冒険心が疼いた結果でしょう!」


「俺に精神魔法とか使ってないか?」


「そんなの使えないですよ!なんで疑ってるんですか!」


「いや、地上へ帰りたいと思っていたのに気がついたら下に行こうとしてるのが不思議でな?というか俺が図太い性格だとしてもこの環境に適応しすぎな気がするんだが…」


「それはあれです!大地さんが時空間魔法の魅力に負けて、魔力関係のスキルを欲しいがために行動してるんでしょう?」


「それにしたって上の階層でも出るだろ?なんでだろうなあ、と。どうも自分の行動に納得がいかなくてな?」


「はあ…。やっぱり大地さんには効きにくいようですね」

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