第6話 二度目の戦闘
ボス階層で少し休憩を取り階段を降る。
魔法スキルが欲しいがそれよりも今は水が欲しい。喉がかなり渇いていることを休憩した時に自覚してしまったせいで余計水が飲みたくなってきた。
そして二十一層。景色が階層外とボス階層とは雰囲気が変わった。
降りた先は階層外エリアの倍ほどの広さの10メートルほどの通路が広がり、壁は階層外と同じ石壁、そして発光花。そして階層外やボス階層とは違い床は芝生が生い茂っている。
「そういえば。このダンジョンに出てくる魔物はなんだ?」
聞くのを忘れていた。どんな魔物が出るか知っといた方がいいだろう。先程みたい黒に突然デカイ猿と戦うよりある程度知っていた方が心構えができる。
「えーと、一〜十層がワーム等中型の虫方魔物、十一〜二十がゴブリンやノッカー等の小型の人型魔物、二十一〜三十リザードマンやオーク等の中型の人型魔物ですね」
「ノッカーってなんだ?」
「ゴブリンの亜種みたいなものです。見た目は近くて色は灰色です」
「そうか。それでこの階層は?」
「わかりません!」
「おいこら」
「詳しい内訳は知識にないんですよぅ…」
「チッ」
「舌打ち!?」
「なら二十一〜三十で一番弱いのはなんだ?」
「……マンドラゴラとかアルラウネです、ね。どちらも植物型人型モンスターで、直接攻撃じゃなくて精神攻撃してくるので、精神耐性が3もあればなんとかなるんじゃないですかね?」
「そうか…。でもそいつらが二十一階層に出でくるかどうかはわからないんだよな?そいつら狙いで他のやつは基本逃げる感じがいいと思ったんだが」
「はい。でもこの石壁をみる限りマンドラゴラメインの階層ではないはずです。アルラウネやマンドラゴラがメインの階層はもっと草が鬱蒼としてる階層のはずですから。あ、ちなみに一層に一種類が基本ですが、全くいないわけではないです。例えば一階層にワーム、二階層にキラービーが出るとしたら一層でのワームとキラービーの比率は9:1です!」
「ふむ…。まあ結局何が出るかわからないんだよな…何が出るかわからないのってかなり怖いんだが」
「え?怖がってるんですか!?」
「それなりに、な。だって二十一階層以降の敵はキングエイプと同じくらいの強さなんだろ…?ボスは一匹だったが複数出てこられたら難しいだろ」
「えぇー…。あっ。でもダンジョンの構造や魔物の強さ的に深いところに出やすいとかそういうのでなら判断できます!」
「じゃあ何が出ると思う?」
「え、えへへ」
翼で頭を掻くような仕草をするヒヨコ。
「おい…。結局わからないのか?」
「私が知ってるのは特徴と名前だけなのでどんな魔物がどれくらい強いかなんて知らないです!」
「威張るなよ。まあわかった。とりあえず初っ端は魔物と出会ったら一旦逃げよう。一旦逃げてどんな魔物かどんな特徴があるか教えてくれ」
まあそう言っても…ずっと一本道だから逃げるに逃げられないだろうが。
「なぁ。ダンジョンってずっと一本道なのか?」
「いえ、分岐の道もたくさんありますし、大きな広間みたいなところもありますよ。広間のほうがモンスターは多くなっていますよ」
ほーん?そうなのか。
「それと階層次第では森林階層とか海階層とか砂漠階層とかあります」
「待て。海階層って階層全てが水なのか?それどうやって移動すればいいんだよ。というかなんでそう後出しするんだ」
「いやぁ。知識はあってもド忘れしてたり言い忘れてたりですね!」
「………はあ」
サポート役のダンジョンフェアリーなのに人間臭すぎるだろう…。
「そんなため息つかないでくださいよ!ちゃんと役に立ってるはずです!」
「いやまあ、役に立ってるのは間違いないんだがな…」
「ならいいじゃないですか!ちょっとくらいのミスは誰にでもあります!」
「わかったわかった。あんま騒ぐな。魔物に押し寄せられたら困る」
「あ、そうですね。すみませんでした」
「まじで大声は出さないでくれ。平静に見えても結構内心ビビってるし、お前キングエイプの時も騒いで見つかっただろうが」
「まあまあ。大丈夫ですよ。超速再生がありますから常に再生しながら殴りかかれば!…あっ。なんかやばい生物みたいですね!」
「おい。本当にやばい生物見たいだろうが。それに大声を出すなと……」
何か聞こえないか?足音?じゃない。何かを引きずる音だ。
「おい。なんか聞こえるぞ。何かわかるか?」
「え?あ、本当だ。なにかを引きずる音…。多分オークです!あいつら棍棒を引きずるように歩くので!あ、でもリザードマンも尻尾を引きずってますし…」
なんか知識が中途半端というかなんというか…。というか静かにしてくれっての。絶対このヒヨコが騒ぐからだろう。今ならまだボス階層の二十階層に逃げられるが…引きずる音は一つだ。なんの魔物かはわからないが一匹だけならなんとかなる、はずだ。
「グオォォォ」
咆哮が聞こえ鳥肌が立ったが…大丈夫だ。キングエイプを倒してレベルが上がっているんだから問題はない。
どこか曲がり角があるのだろう。視線の先、俺がいる通路に豚顔が現れた。
棍棒を持っているしオークだろう。どれくらいの距離がわからないので、大きさはわからないが…。
「頑張ってください!」
「他人事だな…」
「そんなことないですよ?さあさあ!ちゃちゃっとやっちゃいましょ!今の大地さんなら余裕です!多分!それにキングエイプより少し小さい中型の魔物ですから、身長の大きい人間と戦うようなものですよ!多分?」
「多分多分って…。無責任なのか励ましてるのか分かりにくいなお前」
「ほら!戦闘スキルでレベル2のものがあるんだし格闘術で体格差などなんとか…なります?」
「ならねーよ。鼓舞するなら最後までちゃんと言い切れ。そんな達人級じゃないし、漫画やアニメじゃないんだからあんなガタイのいい魔物の膂力を受け流したりなんてできんわ」
「そうなんですか?でも大地さんもレベル上がってますし、意外となんとかなるかもしれませんよ!」
「出来ても怖いから嫌だ」
「なに柄でもないこと言ってるんですか!」
モモと話していると少し落ち着いた。確かにレベルも少し上がっているんだ。なんとかなる。
ゆっくりとこちらへ歩いてきているオークを見るとだいぶ近づいてきている。棍棒を持ち豚に近い顔だが厳つい顔だ。大きさは多分俺よりデカイが、見上げるほどでもなさそうだ。
これなら余裕か…?いや油断してはだめだな。
突っ込んできたところを避けて首に手を回し窒息させる。無理なら眼球や股など急所を狙うしかないか…。
ある程度近づくとオークは顔を歪ませた。
笑っているのか?馬鹿にされたような気がした。
『グオォォォオ』
オークは咆哮を上げこちらに走ってきた。
速い!?
俺が舐めてたっ!ボスよりも強いって聞いてたはずなのに。オークは予想以上に速く、飛び退いて避けるのが精一杯だった。
くそ。
「大地さん後ろ!」
突進は避けたが、モモの声で後ろを向くとオークが棍棒を振り上げてきていた。
咄嗟に転がり避けるがそのまま横に振られた棍棒が掠った。
こえーよ。まじで。あんな棍棒が当たったら即死しないか!?即死しても再生してくれんのか!?
オークは遊んでいるのか追撃をしてこない。
ならば、次はこちらから行ってやろう。怖がっていたってなんも変わらないんだ。再生と耐性スキルを信じよう。
俺のことは脅威と見てないのかモモの方を見て首を傾げている。
なんだ?モモを敵だと認識してないのか?
まあいい。この隙に飛びついて絞め殺す。
駆け出しなんとか飛びつくことが成功した。このまま首に腕を回して、首を絞め……。
「ぐぁぁあ!いてーじゃねーか!」
首に回した腕を掴まれ潰されそうになった。上手く転がり落ちたが…腕が動かない。
物凄く痛い。折れたろこれ。力比べをするのも馬鹿らしい程差が歴然としてるだろう。くそっ。
「がはっ!あ゛ああぁ!」
痛みに足を止めていたら棍棒で横から殴られた。
くっそいてぇ。
猿より機敏な豚っておかしいだろ!ボスの方が強いんじゃなかったのか!?
先程握られた腕はだいぶ良くなっているが…。
「あ゛あ゛ぁ!グッ。いてぇ…」
今度は背中から殴られた。痛すぎて呼吸がおかしくなる。苦痛耐性と物理耐性仕事してくれ…。
「ガッ!?」
そんなことを思っていたら頭に衝撃を受け……。
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