第7話 スキルペーパー



「大地さん大地さん。起きてください。オークが大地さんを殺したと思って油断してますよ。ヤるならいまです!」


耳元でモモの声が聞こえた。

あ?俺は気を失ってたのか…?目の前がぼやけてるが…痛く、ない?


「大地さん奇襲のチャンスです!なに不思議そうにしてるんですか。再生したんで問題ないはずですよ」


ああ。再生か。再生すげーな。

後ろを向いて悠々と去ろうとしているオークが目に入る。ずいぶんと短時間で再生したのか?


モモの言う通りチャンスだ。後ろから素早く近づき首に取り付く。そのまま締めるのではなく指を左右の眼球へと突き入れる!


『グオォォォォォ』


先程の咆哮とは異なり痛みに悶えるような咆哮だ。

オークは棍棒を手放し両手で俺を掴もうとしてきたので咄嗟に手を離しオークから離れる。

離れるときに棍棒をすぐに拾えない位置まで蹴飛ばす。

どうだ?目はまだ見えているのか…?


オークは唸りながら腕を振り回していた。


「大地さんやりましたね!さあ!反撃の時間です!」


「あ、ああ」


オークがこちらへ向き直り腕を振り回しながら突進してきた。


「このヒヨコ!お前が大声出すからまた位置がバレただろう!」


「モモって名前がありますー!」


「今はそんなことどうでもいい!」


「どうでもいい!?」


すぐさま駆け出し棍棒の所へ向かう。

棍棒を持ち上げ…おも!?両手でなんとか持ち上げられた。いや、地面から浮かせられたと言ったほうが正しい。

オークはまだ先程俺がいたところで腕を振り回している。チャンスだが…こんな重いものを振り回すのは無理だぞ…。


「おおぉぉっらあー!」


なんとか棍棒の端と端を持って持ち上げ、オークへ投げつける。


『ガァ!』


膝に当たりオークがよろける。

よっしゃ!これなら!

オークに当たり転がった棍棒をもう一度持ち上げ膝に当てるようもう一度投げる。

脛に当たったがまたよろけた。ダメージははいるな。

何度も何度も繰り返し、たまにオークに棍棒を拾われそうになり咄嗟に体当たりをしたりしながらも、ひたすら膝へ当てることを繰り返した。


「はぁはぁ…」


「大地さんお疲れ様です!」


「まだ倒してないだろう…」


オークは目も潰れ、膝が壊れ倒れている。だがそれだけだ。満身創痍ではあるだろうが、死んだわけではない。

棍棒をもう一度持ち上げる。倒れているならば…頭に持ち上げた棍棒を振り下ろす。

そんな高くまで持ち上げられないが最初よりも持ち上げられるようになった。


筋肉の破壊と再生によって筋力でも上がったか?

一撃では沈まないので何度も振り上げ、振り下ろし続け…オークが動かなくなった。

死んだのを確認したほうが良いのだろうがこちらはもう気力を使い果たした。

俺はそのまま倒れ荒くなった息を整える。


「はぁはぁ。なんとか…なったか?」


「はい!おめでとうございます!倒せましたよ!ほら!消えていきます!」


オークの方へ視線を向けると身体の端から砂のように崩れていく。

やっと、倒せたか…。


「というかなんで急所狙わなかったんです?」


「男としてそれは出来るだけ避けたい…」


よし、ステータスを確認。


————————————————————

個体名【泉 大地】

種族【日本人】

性別【男】

Lv【15】5UP


・戦闘スキル

【格闘術2】【受身3】


・耐性スキル

【苦痛耐性2】【物理耐性2】

【毒耐性3】【精神耐性3】


・固有スキル

【再生】【種】【ドロップ率上昇】

【時空間魔法】【超速再生】

————————————————————


お、五つも上がった。やっぱりまだレベル差があるんだな…。というか二十階層の魔物倒して5アップって一階層だと何十匹も倒さないとレベルが上がりそうにないな。


そしてオークがいたところにはドロップアイテムが。一見なにかわからなかったがどうやらメモ用紙みたいな紙のようだ。その紙にはなにか文字?模様?ミミズが這ったのうな黒い跡がある。近づきそれを拾いあげるとサラサラーっと消えてなくなった。


なんなんだ。これ。


「大地さん大地さん。ステータスを見てください!」


「あ?ステータス表示」


とりあえず言われるがままステータスを表示してみると戦闘スキルに【筋肉上昇】ってのが増えていた。

さっきのやつはスキルを覚えられるのか?


「腕力上昇ってのが増えたぞ」


「それはスキルペーパーとでも呼んでください!」


まんまだな。おい。


「それは手にすると、所持していないスキルだったり余程適正がない場合以外は自動でスキルが手に入るのです!その代わりスキルレベルの上昇が難しいので、自力で覚えたスキルが4になる程の鍛錬をしても2か3くらいにしかなりません。

けど、普通の努力じゃなかなか手に入らないスキルもあるのでそれが出るとあたりですよ!」


「俺は肉とか水のほうが嬉しいのだが」


「ま、まあそーゆーのは割と頻繁に出ますよ。実際魔物を倒しても何も出ないってことも結構あるんですよ?【ドロップ率上昇】のおかげですね!


水や肉がドロップしなくなるスキルなんて嫌なんだが…。


「それとスキルペーパーはオークだと確か腕力上昇や嗅覚上昇、聴覚上昇に棍棒術、肉質向上とかですね。割とたくさんあるんですが、その種族の特徴やスキルがランダムでスキルペーパーとしてドロップします」


「まてまてまて。肉質向上とか人間が覚えてどうするんだ。悪影響とかないのか」


「悪影響はないと思いますよ?ただ…大地さんが肉質向上のスキルを持っていたら魔物から見て大地さんが美味しそうに見える、とか。食べたら病みつきになる、とかですかね」


「おいヒヨコ。それのどこか悪影響がないと。もしそのスキルを持っていたらさっきのオークは去ろうとせず俺のことを食べ始めていた、ってことじゃあないのか?」


「ええ!?あ…確かに。大地さん凄いですね!そんなこと考えつかなかったです!でも超速再生持ってる大地さんなら食べられた端から再生しますよ!無限に食べられる食料ですね!」


「そんなもん精神的に死ぬわ」


「きゃー!つーぶーさーれーるー!」


とりあえず鷲掴みしてみたが…。まあこいつに助けられてるのもアドバイスをもらっているのも確かだし、許してやろう。てことで離してやる。


「ほ、ほんきで潰そうとしました!?しましたよね!?」


「ちょっと触っただけだ」


「あ、そうなんですね。って騙されませんよー!」


「そういえばオークはお前のこと見えてなかったのか?声には反応してたがお前のこと見えてなかったように思えたが」


「また話を逸らしました……。透明化のスキルです。契約したパートナーには見えますが他の生物からは見えなくなります。まあ今はあまり長時間はできないんですけどね」


「便利だな。それならさっきもキングエイプの時みたいに魔法でサポートしてくれてもよかったんじゃないか?それにモモなら透明化しなくても上空にいれば安全だろう」


「空を飛べる魔物もいますので…。それよりそろそろ移動しません?疲労とかもなくなったでしょう?」


「確かにな。もう一つ聞いて良いか?正直あれだけのこと…あんな痛みがあったらトラウマになっててもおかしくないと自分でも思うんだが、特に恐怖が湧いてこないんだ。これも再生の効果か?」


「どうなんでしょう?確かに再生でも壊れた精神や汚染された精神は再生しますけど…大地さんはただ単に耐性系スキルが高い、もとい図太いだけかと思います」


「もう一度握られたいか?」


「いやですー!」


すーっと上空に逃げやがった。

まあいい。そろそろ先へ進むか。

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