第3話 階層外



階層外エリア…??

 

「階層外エリアってなんだ?十九層じゃないのか?」


「十九層なんですけど、上の階層から落とし穴から来れるエリアですね。言うなら十九・五階層?まだダンジョンが出来たばっかりなので罠がないので気付きませんでした。

普通は生きてこの階層には来れませんし、仮に生きてたとしても上の階層へいく道がなく、発光花しかない。そして魔物もいない。階層外エリアの特徴です。セーフティーエリア、アクシデントエリアとでも呼んでいただければ」


いや、本来は罠があって生きてこれる確率も低いならセーフティーエリアではないだろうが…!


「あ゛?じゃあ下にいくしかないのか?」


「はい」


「おい。まじか。はあ。結局下にいくのか…。というかなんでお前は自分がいる階層も知らないんだ」


「大地さんだって知らないじゃないですか!私はさっきの階層に生まれたばっかでわからないこともあるって言いましたもん!

あ、ちなみに全て把握ですがこの階層外エリアは廃棄場もあるので死んだ人の装備などがあるかもしれませんよ!」


「いや、このダンジョンができたばかりなのに廃棄場行っても死体くらいしかないだろうに」


「死体はダンジョンに吸収されて魔素に分解されますので大丈夫です!」


魔素を消費したいのに死体は魔素に分解するんだな。

まあ疫病が発生して誰も寄り付かなくなったら困るし仕方ないことなのかね。


「死体がなくてもなにもないだろ。財布とか服とかくらいか?そんなものいらないわ」


「じゃあ大人しく下に行きましょう!」


このヒヨコ開き直りやがった…。

はあ。まあ下にいくしか道はないんだもんな。行ってやるさ。


先程見つけた階段へ戻る。同じような風景なので何処をどう進んだのかもわからないし、途中行き止まりにも何度も当たったりしたがなんとか戻れた。

さて。この下には魔物がいるのか。


「モモは魔法とかで戦えるのか?」


「基本的にダンジョンフェアリーは攻撃手段がないんですよ…。生活魔法と回復魔法の1くらいですね」


「まあそれでも助かるか。基本的にってこては例外もあるのか?」


「はい。進化すれば進化先によってスキルは変わりますね!私達ダンジョンフェアリーは同じ種族でも姿が違いますので進化先が結構別れるのです」


「モモはニワトリになるのか…」


「だからヒヨコじゃないですー!」


「だが、見た目はヒヨコだろう?進化先はニワトリだろう?」


「そ、そーかもしれませんが、きっとニワトリにはなりません!」


ヒヨコがニワトリ以外の何になるんだろうか。

もしそれが本当ならものすごく気になる。


「でも、進化するにしても魔物を倒すことができないだろう?どうすんだ?一緒に行動してれば経験値や魔素がモモにもいくのか?」


「いえ、ゲームみたいにパーティで経験値分散ってのはないです。魔物に一撃でもいれなければ無理ですね」


「ゲームの知識もあんのか…。まあそう言うことなら当分は進化どころかレベル上げも厳しいか。攻撃手段をそのうち探してみようか」


「はい!」


「じゃあ二十層に行くか」


「行きましょう!」


不安しかないが…なるようになるか。

そして階段を降りて二十階層。階段を降りた先は巨大な空間。ぶっとい柱が何本も並び某ゲームのドラゴンがいるような雰囲気の部屋だ。ボス部屋って感じだな。


「迷宮、ではないよなこれ」


「あ、言うの忘れてました!十階層毎にボスがいます!ここは二十階層のはずなので…ボス階層ですね!」


は…?

初っ端からボス…?レベル1で?

逃げるか?でも階層外から十八か十九階層かはわからないが上に行く階段はないんだよな…?ならボスを見てから階層外に戻って作戦を練る、か。後はさっきは行かないと言ったが何か使えるものがあるかも知れないし、廃棄場に行ってみるか?一応退路を確認しておく…?


「お、おい階段がなくなってるぞ!」


「あ、言い忘れてました。階層外内部に生きてる生物がいると下へ続く階段がその生物の比較的近いところに出現しますが、その生物が階層を降りた時点で階段は消えます!」


また後出しかよ…。文句を言いたいところだが、今騒いでも仕方がない。退路がないなら…進む、か。


「ちなみに…ボスを倒さないと次への階段が現れないとか…?」


「いえ?そんなことはないですよ!逃がしてくれるかは知りませんが降り階段は消えたりしません!」


なら活路があるか…?何処かで魔物を倒して強くならないといけないのは確かだがいきなりボスは厳しいだろ。


「二十階層のボスと二十一階層の魔物ならどっちが弱い?」


「二十一階層の魔物ですね。ボスは次の階層からでもやっていけるかどうかの試練、みたいなものですから二十一階層の魔物よりは少しだけ強いはずです。まあ速さに秀でていたり、力に秀でていたり。また集団戦が得意だったり、精神に干渉するのが得意だったりと強さにも色々ありますから一概には言えませんが魔素量的にはボスの方が上のはずです」


なら無理にここのボスと戦わなくていいだろう。逃げられるかわからないが…死ににくくなってるんだから逃げるだけならなんとかなるだろう。


「よし、なら逃げる」


「えー。ここで戦うのも降りて戦うのもあんま変わらないですよー」


「それでも出来るだけ勝てる方に賭けるに決まってるだろうが」


「じゃあ頑張ってください!逃がしてくれる相手かは知りませんが再生持ちならなんとかなると思いますし!」


大きな空間を進むと人影、のようなものが見えて来た。声をひそめモモに聞いてみる。


「あれか…?階段はどこだ…?」


「大抵階段の前で待ち構えてるのであいつの後ろかと。それと…あれは…キングエイプです!大きな猿ですね。バトルモンキーの上位種です!」


「ちょ、声でかい」


「ゥォォオオオ!」


「バレたか!?」


「バレましたね!」


「バレましたね!じゃねーよ!さっさと逃げんぞ!」


逃げるにしても後ろではなく右に向かう。徐々に回り込み階段まで逃げる。

キングエイプってことは猿系の魔物だろう。猿の魔物と追いかけっこしたって敵わないだろうがそこら中にある柱を使って逃げ切ってやる。


「大地さん!どんどん追いつかれてますよ!やっぱり戦いませんか!?」


「無責任なこと言うな!レベル1で20階層のボスなんて絶対無理だろう!


「いえ!ほらあれでく!目潰しとか鼻の中に棒を突っ込んでかき回してあげたり、急所を潰したりすればなんとかなるんじゃないですか?」


「え…ヒヨコ…えげつな…」


「モモですぅー!ヒヨコじゃないですー!」


「騒ぐなっての!いいから逃げるぞ!」


『オォォォオ』


「ほら!お前が余計なこと言うから怒っただろうが!」


「え!?私のせいですか!?」


チラッと後ろを見たらかなり近かった。猿というより茶色のゴリラだろあれ。かなりでかいぞ!?


「逃げられませんって!戦いましょう!私もサポートしますから!」


「はぁっはぁっ。お前戦闘力ないんじゃなかったのか!?」


やばい。ただでさえ全力疾走なのにこんな怒鳴り合いしてるから息が切れてきてる。


「生活魔法で水出したり、火を出して毛を燃やしたりして意識を逸らせます!」


いやいや、それでどうにかなるならボスじゃないだろう!?

でももうすぐ後ろまで来てる…!確かに逃げられない、か。


「なら頼む!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る