−2 ムギの語り⑵
私は今日も学校に行くべくいつもの通り道を歩いていた。川沿いの土手には今の季節、黄色いタンポポの花がたくさん咲いていて、暖かい風がそよいでいる。
「おはよう、ムギ」
後ろからやって来た同級生の徹くんが声をかけてきた。彼は一年くらい前に他校から転校してきて、同じ通学路を通うようになってからはこうやってたまに話をする時があった。
「おはよう」
「俺、家でタナゴ買っているんだ。結構可愛いんだぜ」
徹くんは私と同じくあまり愛想はよくないが結構頭は良くて、家で水槽に魚やクワガタとか育てているのをよく話ししてくれる。しかも不器用な私に比べてマメな性格で、ちゃんと一人で飼育して魚もクワガタも結構な歳を生きている。でも男の子の好きな魚とかの話はあんまり興味ない。私は他の話も振ってみた。
「ふうん。それより、昨日の休みはどこ行ってたの?」
「俺?別に」
「どっか遊びに行かなかったの?うちの親が私に休みくらい、家にいないでどっか遊びに行けっていつも言うの。街に買い物とか、カラオケとか行かないの?」
「行かない。俺、人混みとか苦手なんだよ」
「じゃあゲームとか?」
「それもあんまり。たまに川とか海とか行くけど。やっぱ魚とか昆虫とかが好きなんだ」
「そうなんだ」
そんな他愛もない会話をして学校へと向かった。そんな日々が続いたある日。
私の体調は時々良くない日があった。学校のストレスなのか、何だかだるくなったり体が辛くなったり、笑いたいのに不機嫌に見られたりで、誰もわかってくれないのかと思ったりした。お母さんはいろいろ近くの町医者に連れて行ってくれた。大体は検査の結果は問題ないと言われて、気のせいだったのかな?と思ってそのあとは普通に過ごし、でも体調は悪くて、何が原因なのかその時は解らずじまいだった。内科?胃腸科?婦人科?精神科?どこで診て貰えばいいの?そんな日が続いて、ある日とある病院で観たところ異常が見られ、検査して手術をしなければならなくなった。
お父さんとお母さんは若いから元気になるよ、大丈夫。と励ましてくれた。しかし、亡くなった親戚のおじさんとかの話を聞いたりすると検査や手術をしても体調は悪くなるのを聞くし、薬の副作用だったり費用も大変らしいので今は何も無くても不安の方が大きくなってしまう。今になって、アクスの気持ちがちょっと解ったかもしれない。飼い主に解られず段々弱っていったアクス。自分の病気は他人には理解されないんだ。私は、段々取り残されている感が強くなっていた。
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