第16話


空気が重い。体に絡みつく様だ……

ゆっくりと流れる時の中を、即座に把握していく…… まずは、ササラ!


ササラの剣の軌道を避けるように身をかわしていきながら、剣を握る右腕へ手刀で叩きつける


ササラの腕から離れて行くセラフィムを確認した後、すぐに後方から振り抜かれていたアリスの真紅の刀をアポカリプスで受け流した


アリスの武器である、炎の様な刀は当初の軌道を逸れるとリムの方向へと軌道修正してしまう。いくらダメージが軽減される空間だとしても、まともに当たれば少なからず怪我をしてしまうだろう。


「ヤバ……!」


俺は即座にリムを刀の軌道上から押し出す様に蹴りを放つと、リムは何とか双剣を使い衝撃を軽減させながら後方へと距離をとっていく。よし、良い判断だ。


即座に状態を崩したままのアリスへと攻撃を再開しようと振り返った時だった……


突然起きた大きな震動と共に、轟音が室内に響き渡ったのだった。





ゴゴオォォォ!!!





「な、なんだ!?」


「大丈夫ですかハク様!いったい何が起きているんでしょうか……」


「外部……からの震動。崩れる可能性……がある。」


「なに……なにっ!? ど~なってるのよぉ!?」




天井からパラパラと崩れた破片が落下して来ると、次第に揺れは激しくなり落下する瓦礫も比例するかの様に数を増していく。


「くそ!やばいぞ、此処はあまり長くは持たない、いちどササラの部屋へ移動しよう!」


ササラは頷くと直ぐに詠唱を始めていく


「転移!マイルーム!」


‥‥‥


‥‥



普段なら瞬時に転移され景色が変わるのだが

俺達はどう言う訳か転移されなかった。


「どうして……転移出来ない!?」


「ハク様ヤバいよ!このままじゃ……」


「あそこ。少し……崩れてる……」


崩壊して行く部屋の一点を指差すリム、確かに少しだが別の景色が覗いているようだ。考えてる暇はなさそうだ……



「ササラ頼む!」


「はい、やってみます!」



俺の言葉を聞きササラは直ぐにセラフィムを振り抜いていた。光の斬撃は崩れた壁付近に衝突すると、轟音を響かせながら外壁を吹き飛ばしていく。



「よし!これなら外へ抜けられるぞ。皆んな行こう!」



俺達は崩れた場所から外へと移動する為に、一斉に走り寄るのだった。



「何とか無事に脱出できそう……だ……」



思わず外に広がる景色に言葉を失ってしまう。


嘘だろ…… これはいったい……


数日前に俺が初めて見たリベルタの街並みは新鮮で凄く綺麗な景色だと思った。レンガの様な造りの建物や、見てるだけで少し癒されていた街路樹、シンデレラ城の様な建造物も俺には全て新鮮だった。


今、俺の瞳に映る景色は


まるで……


地獄だった……


ほとんどの建物は崩壊していた。かつての綺麗な街路樹は根元からヘシ折れ道を塞いでおり、綺麗な外観の建物もそこら中で崩壊し火や黒煙を上げている。



「なんだよ……これ!?」



思わず溢れてしまう言葉に3人はしばらく無言で立ち尽くしてしまう。無情にも崩れ落ちた隣の建物の崩壊音で、我に返ると状況がわからないままだがひとまず目的である、今にも崩壊しそうな此処から脱出しなければと思考に引き戻される。



「とりあえず此処から離れよう!?」



俺は先頭を走りながらも、少しでも安全そうな場所を探していく……



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