第11話




「ハク様は戦闘を経験した事があるのですか? こう見えてもホルス学園内で私は序列3位のランカーなんですよ!?」



確かリムがササラはランカーだといっていたな。ランカーの定義が俺には分からないが、恐らく学園内での強さで決まるのだろうからかなり強いって事は間違いないだろう。



「いや、戦闘経験はないな……

俺の世界での基礎能力がもしかしたら、この世界より高い可能性があるって事も考えられるよな。どっちかと言うと…… あまり体を動かすのは好きな方ではなかったかな」


実際俺は日本にいた頃に運動と言う運動を自ら進んでしていなかったし、どっちかと言うと苦手な方だった。



「ハク様がもっと戦闘経験を積めば、私なんか直ぐに相手にもならないと思います……

私も努力してハク様の為に強くならないといけませんね!」



そう言うと、ササラは両手を胸の前で握りしめる。 なんか嬉しい…… あっちでは俺の為に尽くしてくれる女性なんて居なかった。 逆に俺がプレゼントしたり、旅行代全額払ったり、ガソリン代出したり、挙げ句の果てに音信不通になったり…… あれ、なんか目から汗が……



それにしても、ホント可愛いよな。な、なんか無性に抱きしめたい。ダ、ダメだ…… 一回落ちつけ俺。


気持ちを抑えてササラの頭を優しく撫でる。



「ハ、ハク様……? 急にどうしたんですか!?」



ササラは仔猫の様な瞳で俺を見つめてくるのだった。ぐ…… 反則だろ。




「いや…… ササラは序列3位のランカーなんだろ? ランカーってのがイマイチ俺はわかってないが、順位があるくらいだからスゲー事だと理解はできるよ!

だから頑張ってるなぁ〜と、思って頭を撫でてるんだ」



ササラは俯き俺の行動を素直に受け入れていた。うん、きっとスゲー努力して頑張ってたんだな。リベルタで強くなるって事は、レッドネームになる為には必要って事だろ。



「ありがとうございます…… 私、もっともっと強くなりますから! ずっとハク様のお側にいさせて下さい……!」



俺はササラの顔を覗きこみ、ササラへと微笑むと思わずササラを抱きしめてしまうのだった…… せっかく我慢したのにさっきの俺の努力返して欲しい。


でもさ…… こんなに思われてるなんて、幸せだよな。 これからはずっとササラと共に歩んでいきたい。 彼女を守る目的ができた。

この世界で俺が成すべき事がわかった気がした。



「当たり前だろ…… ずっと一緒だ!」



ササラは頷くとその瞳に涙を浮かべていた。



「……はい」


…………


……



次の日も俺達は時間いっぱいまで訓練を続けて行た。昨日と違って、今日はアリスとリムにも訓練に参加してもらっていた。


これだ…… この感覚!?


3人は俺へと連携を取り合い攻撃を繰り出していた。昨日ササラとの訓練で突然発現したスローモーションの世界を次はしっかりと実感していたのだ。

迫る斬撃の軌道上を縫う様に身を捻りながら、それぞれの武器を薙ぎ払った。アポカリプスで少し軌道を変えてやると、アリスとリムは同時に体勢を崩してしまう……


ササラだけは上手く俺の攻撃を受け流したかと思うと、2人を守るように俺へと追撃までしてくる。 

やはりアリスとリムより1枚上手だよな

さすが、ランカーと言ったところだろう


「まだです!」


ササラの武器である輝くセラフィムを振るったと同時に発生する光の斬撃!

俺は一瞬何が起きたかわからなかったが、目の前へと迫り来るそれを、マトモに喰らえばヤバいと体が咄嗟に反応していた



「く、ヤバッ……」



アポカリプスを咄嗟に地面へと突き立てた瞬間、腕へと伝わる衝撃をひたすら耐え抜いていた。ちょ…… アカンやつやん!? マトモにもらったらアカンやつやん!?



「な、なんて威力だよ……!」



俺の痺れて震える腕が悲鳴をあげていた。

いくらダメージが緩和される空間と言えども

マトモに当たっていたら気絶するほどの衝撃を受けていただろう。もしこれが実戦なら……


自然と冷や汗が流れていた。


気を引き締めろ……

俺は地面からアポカリプスを引き抜くと、再びササラへと追撃を開始する。 俺の猛攻は嘘のようにかわしたり器用に受け流して行くササラに徐々に焦りを感じていた。

力まかせの攻撃は次第に大振りになっていたようで、ササラに意識を集中させていた俺は背後から迫る攻撃に気がつくのに遅れてしまうのだった。


リムとアリスによる死角からの攻撃は、俺の肩と脇腹へとヒットする。


スローモーションに見えていたとしても

攻撃に気がつかなければ意味がなかった……


俺はたまらず地面に片膝を落としてしまう。



「ま、参った…… 降参だ!」



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