第10話


個性か。確かに光属性であるササラの剣は見た感じ光を放っている。 キラキラと煌く細身の剣はとてもササラに似合っていた。



「なるほど…… 俺にも呼び出す事ができるのかな?」



ササラと同じ様に右腕を胸の前に構えると、俺は一度体勢を整えていく。個性、ササラはそう言っていた。 この世界での俺は白の王だ……


王たるものそれなりの武器を呼び出さないとなんかカッコ悪いよな。



「来い!俺の武器!」



さあ、何が来る!? どんな武器であろうとしっかり使いこなしてやる!




…………


……




何も来ないんかーーい!?






「ん~…… 何も現れないな。」



ササラは変な空気の中、 思い出したかの様に言葉を発した。



「イメージです! 目を閉じて武器を思い浮かべて下さい!

そうすれば何か掴めるかもしれません……?」



え、そこ疑問形なの? まあ、参考にはなったから気にせずやってみるが……


イメージ…… イメージと……


眼を閉じ俺の武器を想像していく。俺はササラを護りたい。その為には戦う力が欲しい。

どんな困難が来ようとも切り抜ける力が欲しい!


もう一度腕を胸の前に構えた俺は不思議と、自然に頭の中に浮かんで来る言葉をそのまま声に出した。



「来い…… 光剣アポカリプス!!」



俺の手元は自分でも目を閉じてしまうぐらいに強烈な光を発すると、 手の中に光が吸い込まれ集結していく、4枚の翼が刻印された大剣が姿を現すのだった。


その刀身は俺の背丈程の巨大さで、 かなりの重量に思えた。




「光剣アポカリプス…… これが俺の武器なのか?」


「す、凄いですハク様! 光剣アポカリプスには私と同じ紋様が刻まれているんですね。それにとても綺麗ですね……」


ハクはアポカリプスを握りしめると一太刀振るってみる。普通であればこんな巨大な剣なんて持ち上げることすら出来ず、 武器としては役に立たないだろうが、俺はササラが言っていた言葉を思い出していた。



「おぉ!? か、軽い…… めちゃくちゃ軽いぞ!呼び出した武器は自信の半身みたいな存在って意味が分かったよ……!」



それはまるで、 木の棒を振っているみたいに感じるほどの感覚だった。身の丈ほどの大剣を片手で振るう俺の姿は、 元の世界であれば化物以外の何者でもないだろう……



「ハク様、よければこのまま一度手合わせしてもらってもいいですか?

この空間では部屋にかけられたスキルのおかげで大怪我をする事はありませんよ」



そう言うと同時にササラはセラフィムを構えていた。 え? 俺に拒否権ないじゃん?

見た目と違ってササラはスパルタなのでは……


そんな事を思いつつも、 俺は慣れない剣を見よう見真似で構えるのだった。素人目の俺から見てもササラに隙が見えないのがわかる……



「それじゃあ…… ササラお願いするよ。」



俺は右腕一本で大剣を持ち上げると、ササラにその切っ先を突きつける。



「行きます!!」



ササラの速さは異常だった、一瞬ササラが消えたかの様に思えた瞬間に俺の大剣は跳ね上げられてしまった



「くっ!?」



咄嗟に右腕を捻ると弾かれた反動に逆らわずに、ササラの右脇腹へと回転しながら斬撃を放っていくが、ササラは直ぐに反応すると衝撃を受け止めようとマトモに俺の大剣を真正面から受け止めた



「きゃ……!」



ササラの足は地面から離れると大剣の軌道上に吹き飛ばされてしまう。空中で器用に身を捻り体勢をすぐさま立て直したササラは、着地の反動を利用して俺へと追撃をしてくる。その軽い身のこなしはまるでアクション映画を見ているような感覚に思わず驚いてしまう



「一撃が凄く重い……ですがっ!!」



俺は迫り来るササラに焦りながらも、 咄嗟に軌道上に合わせ大剣を真横になぎ払っていく



「正面から受けなければ…… 問題ありません!」



ササラは横から迫る斬撃を斜に受け流すとセラフィムの腹を滑る様に、俺の斬撃は斜め上へと軌道を変えていくと盛大に空を切ってしまう



「うぉぉ!!やばっ……!?」



強引に空を泳ぐ大剣を引戻しササラへと剣を振り落とすが、僅かな隙をササラは見逃さなかった。


目前にはササラが放った閃光のような強烈な突きが迫っていた……


あ…… これダメなやつ……!?


徐々に迫る切っ先に俺は死を覚悟してしまう


父さん母さん俺を産んでくれてありがとう。


ペットの猫ミャーちゃん。オヤツもっとあげれば良かったな…… ごめんな……


こんな事ならじーちゃん、ばーちゃんの仏壇のお茶をケチらずに高いお茶に替えてやれば良かった…… 100均でごめんな……


それと……


えーと……





って、死ぬの遅くないか??





ゆっくりとだが確かに切っ先は迫っている


あれ…… これ避けれるよな?


迫る切っ先の軌道上から頭を少しずらしてみる……


剣先は後数ミリで俺に触れる場所でピタリと止まっていた。恐らく本気で当てる気は元々無かったのだろう……


俺はササラへと振り下ろそうとしている剣を慌てて停止させるのだった。その時一瞬だが空気が変わった気がした。



「凄い…… 凄いですハク様!? 私は本気で当てに行ったんですよ!」



ササラは驚きを隠せず興奮していた



「いや…… ちゃんと寸止めしてくれたよな?止めてくれなかったら本当に死んでたよ……はは……」


「ハク様は私の攻撃を見切っていましたよね! ハク様…… 最後ハク様が剣を止めてくれなければ倒れていたのは私の方でした……」


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