第7話


まずはこの世界での知識が必要になるか。


「この世界に図書館ってあるかな?

一般的な事や国の歴史みたいな物も知っておきたいんだけど?」


ササラはすぐに俺の言葉に頷くと


「図書館はあります! でも、 体調は万全では無いようですし…… よ、 良かったらここで調べる事もできますよ」


そう言いながらササラは、 壁に掛けられた機械を弄りはじめた。 すぐに何も無い空間に画面が立ち上がる。 恐らくパソコンの様な物だろうか? 恐らく科学的な事は日本より発展しているのだろう。


立ち上がった画面にはこの世界の地図みたいな物が映し出されていた。 よく見ると地図は一定の間隔で色分けされているようだった。


青、赤、紫、緑、水色、オレンジ、ピンク、黒、金、銀


おふぅ…… なにこれスッゲーカラフルだな……


「この色の場所はそれぞれの国になるのかな?」


3人は同時に頷く


「この地図で無色の場所は、 養成所や生活する為に必要な物が生産されている地域になっているんです」


なるほど、 って事はどの国も地図上の中心にあるこの場所から物資を補給しているって事だよな。 普通に補給できるなら争い合う必要なんてあるのか?


「なあ…… 一体何の為に争うんだ?

物資を補給する為の資金の為か?

それとも他になにかあるのかな?」


ササラは驚いたように俺を見つめている


「確かに知らないのは無理もありませんよね」


そう呟くと真剣な表情で俺を見据えて喋り始めた。 さっきの話を聞く限りちゃんと聞いておかなければ…… 俺はこの世界を知らなさすぎる


「私達ホムンクルスは恩恵を授かって生涯をその主人に尽くすと言いましたよね?」


俺はササラの言葉に頷く。 確か恩恵により25年の余命と言う概念がなくなり、不老不死を手に入れる事が出来るだよな


ササラは話を続けて行く


「恩恵とは…… 神の生命力と知らされています。 神が恩恵を授けると言う事は、 生命力…… 要するに神の命を分けて貰うと言う事になるんです」


神かよ……


確かに25年の寿命が恩恵により無くなるんだ

そら、 神の様な存在にもなるのか?


寿命があり、 分け与えるって事は……

男は不老不死になれないって事なのかもしれないのか?


「だったら、 この世界には確か男って10人いるんだよな?


恩恵を授ける為に無くなる寿命が何日分、 何年分かはしらないけど、 そんなにホイホイ男は恩恵与えてると死んじゃうよな?」


3人はゆっくりと頷くと今度はアリスが淡々と喋り始める


「だから争うのよ。 恩恵を授けてくれた人の為に……

違う国のレッドネームを消せば、 そのレッドネームに与えられた恩恵分の生命力を手に入れる事が出来る。 命をくれた人に恩返しができるの!」


俺は言葉を失ってしまった。

この世界での争いは1度火がつけば消す事が出来ないんじゃないのか?


レッドネーム同士が争い、 神の為に命を奪い合う。 その殺し合いが不幸にも神の命を繋ぐ仕組みとなっているのか……


命を与えてくれた神の為なら、 自ら望んで彼女達は争いに身を投じるだろう

それに昔から争いを繰り返していたとしたら

きっと、 何も不思議ではないのだろう


恐らく神も他国のレッドネームを殺し続ければ、 不老不死と言って過言ではないだろう


「この争いはずっと続いているのか……」


俺は絞り出す様に呟いていた。

その言葉に3人共同時に頷くのだった。 3人のまだ幼さが残るその表情からは、 とても強い意志が感じられた


この娘達も何年か後には……


そう思ってしまうと胸が苦しくなってしまうのだった。


少しの間1人になりたかった俺は、 悪いと思いつつもササラにシャワールームを貸してもらっていた。


頭からシャワーを浴びつつ、 考えをまとめていく。 きっと俺の存在はこの世界を掻き回す事になるだろう


それに、 日本に戻る方法も探さないといけない


もしかすると、 この世界の王達が何か知っているかもしれないが、 今はまだ接触しても良いのかさえ分からない……


下手すると俺が殺される可能性だって……


モヤモヤした気持ちを洗い流すように

しばらくシャワーを浴び続けていた。


とにかく今日は休もう


ゆっくり寝て明日考えよう……


なんか疲れた。


…………


……



眩しさに目を開けると

見慣れない景色に一瞬戸惑ってしまう


窓から射し込む光に

まだ少し頭がクラクラする


「ああ、 俺異世界に来てしまってたんだな……」


そう言えば昨日シャワーを浴びて確か……


「昨日は倒れこむ様に一晩眠ってしまわれました……」


突然聞こえた声の方へと視線を向けると、そこには優しく微笑んだササラが立っていた。


「すまない。 急に転がり込んだ挙句にベッドまで占領してしまったみたいだ……」


俺はベッドの上でササラに頭を下げると、 ササラは慌てた様子で顔を赤く染めてしまう


「い、 いえ! 気にしないで下さい! そ、 その…… むしろずっとここにいて下さっても大丈夫です! いて欲しいです……」


後半部分は小声で聞き取れなかったが

慌てた様子でそそくさと部屋から姿を消してしうのだった


ゆっくり眠ったおかげで体調は悪くはないな。 むしろ体調が今までにないくらい軽いぐらいだ


俺はふと窓の外を眺める。 まだ実感わかないよな、 ここが異世界だなんて。


「う~ん、 景色は異世界…… これはもう認めないとな」


窓に映る顔は自然と苦笑いしていた……







ん……?







俺は後ろを振り返り誰も居ないかを確認すると、 意を決してもう一度窓に映る自分の顔を凝視する。



「ど、 どう言う事だ!?」


窓に映し出された顔は若く

女性と言われても違和感がない顔をしていたのだ。 え、 なにこの美少年……


思わずペタペタと全身をくまなくチェックしていた……


もうすぐ36歳のおっさんが18歳ぐらいの美少年の体になっちゃった…… フフ……


キタコレ…… 俺の時代!!


神様ありがとうございますありがとうございますありがとうございまぁーす!!


ベッドの上で窓に向かって何度も最上級の土下座を繰り広げていた


「あの…… ど、 どうかされましたか……」


突然背後から発せられた声に飛び上がってしまった。 ぐはっ……


「うぉ!? あ、 焦った……!」


ササラは申し訳なさそうに俺を見つめていた。 た、 頼むからそんな目で俺を見ないでくれ……


「え、 と…… ササラ…… さん、 昨日の俺は俺だった?」


咄嗟に出た言葉にササラは必死に理解しようとするのが伺えた


「顔色は少し悪かったですが…… 今日は体調が良いように見えます。 そ、 それとササラとお呼び下さい!」


ササラの潤んだ瞳が俺を写し出している


「わかった…… ササラありがとう!」


ササラは俺の言葉に顔を赤く染めて満足そうに頷くのだった


顔色が悪く見えたがって事は、 容姿自体はこのままだったって事だよな……


異世界に来た変化なのか?


もしかすると他にも変化があるのかもしれない……




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