第6話


男性の体液を取り込む事により、ホムンクルスの生命力はアップする。

話を聞いた限り治癒力、 運動能力などの向上と思われる。


通常ホムンクルスの寿命は25年らしいが、 恩恵を受ける事により寿命と言う概念がなくなると言うのだ。


不老不死と言っても、 肉体的に致命的なダメージを負うと命を落としてしまう。


1人の男性の恩恵を受けると、 他の男性に対する耐性力がつくらしい。 さっきのアリスみたいに、 触れられるぐらいじゃ発情しないって事だろうか?


1度恩恵を受けた男性の生命力によって、 さらなる恩恵を向上して行く事ができることから、 恐らく1度に受けれる恩恵に限界があるって事だと思えた。


この世界では選ばれた者だけが、 男性の恩恵を授かる名誉を与えられるらしい。


恩恵を授かった者はレッドネームと呼ばれ、左手の甲にそれぞれ王の紋章が刻印されると言う事と、 刻印されたレッドネームは恩恵を与えた者に永遠の忠誠を尽くすと言う事がわかった。


しかもこの世界でも戦争や争いがあるらしく、 レッドネームが治安維持や戦争で活躍すると言う。 ようするに、 ホムンクルスに各国の王達は自らの体液を与える事によって、 ホムンクルス達の能力を底上げし専属のレッドネームと言う兵隊を創り上げる。


そしてレッドネームという忠実な兵士を使い戦争を繰り広げていると言う事になる。


戦争に負けた国の領土は奪われ、 負けた国のレッドネームは全員排除される……


この世界を支配している10人の男達のエゴだろ……


個人的に戦争を引き起こし、 レッドネーム達を道具の様に戦わせるなんて!


「一通りの話はわかったよ。 でも、 この世界の男達のエゴでレッドネームは死んで行くんだろ……?」


俺は思わず俯いてしまう


「はい、 私達ホムンクルスはレッドネームになり、 それぞれの主人に忠誠を誓う事に存在意義があるんです。

それに…… レッドネームにならなければ25年で私達ホムンクルスの命は途絶えますから。


生きる事を与えてくれる主人に忠誠を尽くすのは、 当たり前の事なんですよ。」



この世界の暦はほぼ同じに思えた、 僅か25年で生涯を終えるホムンクルス。 胸が締め付けられるようだ……


「ホムンクルスはこの世界に何人ぐらいいるんだ?」


リムは顎に人差し指を当てて少し考えると


「確か…… ホムンクルスの人口は、 約4億3千万人…… 月に150万人ぐらいが生を受けます。 15歳までにレッドネームになれる素質があれば…… 候補生として養成所に行きます…… 年間1,800万人の中から、 養成所に行くのは5万人ぐらい…… 毎年…… 最終試験でレッドネームになれるか決められます」



(4億3千万人…… レッドネームが何人いるか分からないが、 俺の世界の人口は約73億人だったかな?

確か日本で1億2600万人そう考えると、 このリベルタって所は俺の世界より少し小さい可能性があるのか?

ただレッドネームになると実質不老不死になるんだよな?)



「その5万人からレッドネームになるのは何人ぐらいいるんだ?

それにレッドネームになれなかったホムンクルスはどうなってしまうんだろ?」


「レッドネームになれるのは…… 年に1万人いないと思います…… レッドネームになる為の試験に…… 合格すれば……

希望する国にレッドネームとして移住出来るようになります……

レッドネームになれなかった…… ホムンクルスは……

それぞれ仕事を振り分けられます…… 国を維持する為に…… 必要な事」


(なるほど…… 1万人がレッドネームになったとして、 10人の男の国の中から希望する場所に移り住む事になるのか。

レッドネームになる素質が無ければ、 国を維持する為に労働者として働くって事だろうな)


大体理解はできた。


「因みに3人は養成所に入っているのか?」


ササラとリムは頷く


「はい、 リムさんとアリスさんは16歳になります、 私は2人より一学年上の17歳です

養成所では皆んな3年間の教育を受ける事になります」


「因みに…… ササラ先輩は養成所…… ホルス学園でもランカー…… 凄い……」


ササラの後にリムが説明してくれる


養成所はホルス学園と言うらしく、 3年間の教育を経てレッドネームになる為に教育されるとの事だった


ランカーと言うのは学園内でも生徒個人のランキングが存在するらしく、 その中でも優秀な上位10人の事をランカーと呼ぶらしい。


あとわかったのは、 養成所は各地に多数存在するらしくホルス学園を含め30校あると言う。


ホルスとは俺が知る限りエジプト神話に出てくる神で、 他の学園の名前を聞く限り、 セト、 イシス、 オシリス、 ネフティスなど聞き覚えのある名前が使われていた


もしかすると…… 俺以外にもこの世界に迷い込んだ奴がいる可能性があるのかもしれない


2人から一通り話を聞き終わった俺は、 内容の重さに頭を抱えてしまう。


どうやら本当に異世界に来たみたいだ……


一瞬で瞬間移動した事も、 ササラやリムの話も、 まるで嘘を言っているような風には感じられなかったからだ。 何より俺を騙した所で何の得にもならないだろうし……


「一旦休憩にしよう。 少し休んで話をまとめたいし……」


ふとアリスに視線を向けると、 ベッドの上で横になっていたアリスと視線が合う


「あれ…… 私……」


身を起こしたアリスは一瞬考えた後に、 何かを思い出したかのように顔を赤く染めてしまうのだった


「あ、 ゴメン! 話は2人から大体聞いたんだけど。 どうやら俺は異世界に迷い込んだみたいなんだよ……

それと、 俺は男だよ。 何も理解してなかった…… 悪かった!」


俺は一応アリスと2人にも頭を下げる


「まさか…… 本当に男なんですか!?」


ササラとリムはアリスの言葉に頷くと、 リムはアリスへと淡々と説明を始める


「アリスの症状…… 発情…… と思う。

愛液の分泌…… 高揚…… 快感。当てはまる」


リムの言葉にアリスの顔は更に目に見えて熱を帯びて行くのがわかった


「リ…… リム分かったから!

そ、 それ以上言わなくていい!」



アリスは慌ててリムを制止する


その一部始終をオッサン目線で眺めていた。 ホントわからないな…… 彼女達がホムンクルスだなんて……


それに俺が11人目の男として突然現れたと知られたらどうなるんだ?


この世界では大問題だよな……


いきなり国が一つ増えるって事になるんだよね?



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