メッセージ

 そんな日が二週間ほど続いた、ある日。

 

 いつも通り学校の教室に向かっていた。

 そして、自らの教室に入ると中では人だかりができていた。

「おー、あけー! いいところに来た、聞いてくれよ!」

 その中心人物であろう、陸也りくやが声をかけながらやってきた。

 そして、目の前に来ると、小声で一言。

「俺、彼女できたわ。あそこにいる、ロングの子が俺の彼女」

「え、あの子って難攻不落って言われていた子だよな!?」

「おう、そうだぜ」

「どうやって落としたんだ?」

「やっぱ、あけの言う通りだった。当たって当たって当たりまくったら、そのひたむきさにやられたって言ってた。やっぱ、やってみないとわからないな。あけがアドアイスしてくれたおかげだよ。ありがとう」

 開いた口がふさがらなかった。あの絶対に落とすのじゃ無理と言われた彼女を落とすなんて。

「すごいな、お前……お幸せに!!」

「おう!」


 陸也りくやが輝いて見えた。

 ひたむきに当たった彼が、結果で示した彼が。




 「『やってみないとわからない』か」



 

 俺も負けてられない。恋愛という陸也りくやと同じ舞台ではないが、あいつみたいにがむしゃらに当たってみよう。


 何度でも、何度でも。

 当たって、当たって、当たって。


 そうだ『思考』ではなく、するんだ。


 キーワードは主に四つ。

 『彼』 『スコープ』 『井戸』 『覗く』


 最初は、英語にしてした。

 あとやっていない『試行』は一つ。――カタカナだ。これしか思いつかない。


 声に出して読んでみる。しっくりきたのが答えかもしれない。

「カレスコープイドノゾク」

「スコープイドノゾクカレ」

「カレイドスコープノゾク」

「ノゾクイドスコープカレ」


 どれも、しっくりこない。


 ダメだったか……と諦めかけた時。



「えっ」

 そんな声がした。声の主を探してみると髪が長めの女子と目があった。きっと、彼女が発したんだろう。難攻不落と言われていた陸也りくやの彼女だ。

 その彼女はとことことあけの席にやってきた。そして、一言。

あけくんは万華鏡が好きなの?」

 俺の頭にははてなが浮かんだ。そんなこと言っていない。そのことを言おうとすると

「だって、カレイドスコープ……って言わなかった?」

「うん、言ったよ。でも万華鏡と何の関係が?」

 彼女が話しかけてきた意図がわからず聞き返す。


「カレイドスコープっていうのはね、万華鏡のことだよ。私、万華鏡好きだから。好きすぎて思わず美術の時間の時も覗いちゃったよ」


 衝撃の一言だった。

 その一言を処理するのは一定の時間必要だった。

 そしてその瞬間、すべてが繋がった。


 女の子の話は続く。

「万華鏡ってすごくてね、中が二個の色の鏡だけで覗くと見える数が決まっちゃう……つまり有限なんだ。だけどね、三個になると無限になるんだよ。三個って三原色みたいだね。」



 つまり、すると。


『彼はスコープで井戸を覗く』=『カレイドスコープノゾク』=『万華鏡を覗く』

               +

『彼はスコープで井戸を覗く』=『He , look , scope , well』=『この範囲をよく見ろ』

              ||  

      『万華鏡を覗いて、その範囲をよく見ろ』


 また、三原色……つまり朱たち家族三人という色を覗いてみる。

 そして、白紙のページ。

 

 そう、光の三原色で家族が構成されているので、朱が生まれたら三色が混ざり、『真っ白』になるのだ。




 そういうことだったのか。あけはすべてを理解した。

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