意味不明

『彼はスコープを井戸で覗く』



 その本と出会ったのは夏の蒸し暑い夜。

 偶然だった。部屋を掃除していたら出てきたのだ。


「なにこれ。こんな本、持ってたっけ」

 全く身に覚えがない本を俺は恐る恐るページをパラパラとめくった。

 中は子供向けの柔らかな絵と共に英字の文章が並んでいた。


 


 ……『絵本』だ。




 その『絵本』がなぜここにあるかと考えたときに、家のことを思い出して納得した。


 俺の家系は、絵を描く仕事関係についているのだ。俺もその家柄、小さな頃から絵を描くのが大好きで、将来は絵のお仕事に就きたいと思っている。

 これはきっと、うちの家系の誰かが書いた本なんだろう。とりわけ、海外に向けの作品である。俺はそう確信した。

 

 その本には家族の物語がつづられていた。


 次が、最後のページ。ゆっくりとめくる。


 「ん? どういうことだ?」

 そこは、真っ白だった。一語一句なく、絵もない。完全な白の世界。


 否、英文で一言だけあった。訳してみる。

『これから生まれる、あけへ。これがメッセージです。父のへきと母のそうより』


 俺に向けて? メッセージ? 何の? これは海外に向けての作品じゃないのか?


 あけは混乱した。

 「今日はゆっくり眠ろう」

その日は蒸し暑いせいからか、なかなか寝付けなかった。 

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