第3話:もうひとりのわたし

言葉が出てこなかった


言葉を選べなかった


女「・・・なにかいってほしいな」


「ごめん」


女「私が床に転がっていた時、あなたはベッドで幸せに寝ていた・・・」


「・・・」


女「ごめん、意地悪を言ってみた」


「・・・いや・・・間違っていない」


女「・・・気が済んだ?」


「ありがとう・・・わたしはあなたを助けたい」


女「・・・はぁ?」


「あなたが私を助けてくれたから」


女「忘れていいのに」


「それは・・・無理だよ」


女「レイプされそうになったあなたを助けた話?」


「そう、あなたに殺人までさせた」


女「・・・べつに・・・どうでもいいのに」


「そんなことは」


女「あれが初めてじゃないの、人を殺したのは」


「・・・?」


女「・・・聴きたい?」


「・・・うん」


女「きかなければよかった・・・と後悔・・・してるくせに」


「もう・・・これ以上があるの?」


女「さあ?」


「・・・」


女「私には双子の妹がいたの」


「・・・」


女「もう、だいたい分かったでしょう?」


「・・・」


同じ顔のもう1人の私が目の前で犯されて・・・


私はそれを見て耐えられるほど強くなかった


ある日、私は彼女を助けてあげられる、そう思ってしまったの


それが答えだと思った・・・ただそれだけのこと


私は彼女を自由にしてあげた・・・


「・・・そう」


あなたがレイプ犯に犯されそうになっていた時に


その光景が重なったのかもしれない


でも、相手は1人


助けるのは・・・あなた・・・なんか矛盾してるかな・・・


今考えると


本当はあの子に生きて助かってほしかったのかも・・・


だからあなたを助けたのは私が勝手にしたことだから気にしないで


そして私のことも忘れて

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