「祐奈、、?」

「私、これ以上悲しんでいるしょう君見たくないから。ごめんね、こんな私で。」


そういって、場を離れた。

歩くスピードが速くなる。早く、早く、一刻も早くこの場を離れないと。

ずっと大好きな人だったから、最後の言葉ももっとちゃんと、いろいろ言いたかった。

でもこれ以上いると涙が出ちゃうから。語尾が震える前に言い切りたかった。


しょう君は追ってこなかった。


ショッピングモールの近くの公園のブランコに寄りかかる。

夏の午後だが、まだ日が強く公園には誰もいなかった。

ブランコのチェーンが日に当たって熱い。


きぃ、きぃ。足を使って少しだけ揺らす。


どうしてあんなこと言っちゃったんだろう。

でも、きっと、しょう君は彼女のことが好きだったんだと思う。

別に人を助けることに理由なんていらない。それをよく知っているはずの人だったのに、それを躊躇したのは、そこにいらない感情が入っていたから。

しょう君も、そして彼女も、二人して男女を意識しすぎていたんだと思う。

だから、人を助けるためにそれ以外の理由を探していた。

親友なんて言葉、二人にとってはとても辛かったのかもしれない。

名前のつかない関係だっていいと思うの。

でも不安定だから、耐えられなかったんだろうね。


彼が私に一言も言ってくれなかったのもきっと後ろめたさがあったから。


もし彼女が女の子じゃなくって、男の子だったら、

しょう君は迷わず彼女を助けに行っていたかな。

相談したりしてくれていたのかな。


しょう君は私のことを好きでいてくれたから、傷つけたくなくって言わなかったんだと思う。でも私、そんなもろい女じゃない。

私のこともしょう君は信じられなかったんだね。

言ってくれないとわからないよ。


死んじゃった人は、これ以上記憶が上書きされることもないから

しょう君はこれから彼女との楽しかった過去を振り返っては

今回のことをひどく後悔する

死んだ人がこれからどうしてくれるってことも

しょう君を救ってくれるってこともないだろうから

しょう君はずっと彼女を思い出して生きていくんだろうな


私はわがままだからそれがいやなの

普通の女の子じゃなくって、好きだった子が死んだんでしょ

彼女の私でもそれは癒やせないから

しょう君のそばにいることをリタイアしてあの子に譲ってあげた


好きだったよ、しょう君

でも中途半端な優しさがみんなを不幸にしてしまった

彼女の思い出と一緒に生きていくつもりはないから

バイバイした


足下に蝉の死骸があった

小さく合唱して、公園を出た

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