デートの日、しょう君は明らかに悲しんでいた。
そりゃ、そうだよな、知っている人が死んでしまったんだから。
でもしょう君も何も言ってこなかったし、私も何も知らないていでそのまま約束していたデートを決行した。
どんな子だったの?とか、どこまで近しい子だったの?とか彼女特権でいろいろ聞きたかったけど
そんなことをするのはさすがに良くないと心にとどめておいた。
無理に話題を作ろうとするのもなんだか気が進まなくって、
二人の間に無言の時間がたびたび流れた。
「もう帰ろっか」
いくつかの時間のあと、耐えきれなくなって口に出してしまった。
「あっ、ごめん、、、」
「いいよ、別に。何かあったんでしょ」
申し訳なさそうな、泣きそうな顔。
目の前にいる誰かを大事にするような性格だった貴方が、ここにはいない誰かを思っている顔がいやだった。
好きな子だったのかな、なんて意地悪を思ってみる。
「だから、もう帰ろう、家でゆっくりして」
そう言って、席をたった。
こんな時間を感じるのも辛くなってきた。
「実は、知っている子が死んじゃったんだ」
しょう君が口を開いた。
知っているよ、そんなこと。
それ以上は言わなくて言い。
「すごく仲良かったんだ。何でも話せる子で、自分としては大親友だと思っていた。」
うんうん、それは悲しい。
「でも、彼女はきっとそうではなかったんだ。だって本当に辛いとき、彼女は何も言わず一人で死を選んだんだから」
でも、そこまでする必要、しょう君にはないでしょ。
あくまで友達なだけで、言うも言わないも本人の自由じゃない。
「彼女のSOSを僕は知らず知らずのうちに拒絶していたんだ。僕が彼女に本音を言わせなかったんだ」
ちょっと待って、どういうこと。よくわからなくなってきた。
普通の男女の友情の話じゃないの?なんでこんなに話が膨らむの?
「いろんな言い訳を考えないで彼女に会いに行けばよかった。変だと思ったあのときにすぐに行けば良かった。そうしたら彼女は生きていたかもしれないのに」
「そんなことない」
「違う、僕は本当にダメな人間なんだ。あっちにもこっちにもいい顔して、関係がゆがむのが怖い。そう思って一歩が踏み出せなかったんだ。」
「どういうこと」
「彼女のとこを訪ねようと思ったんだ。でも、自分たちただの友達だし、そこまでするのはどうかと思ってしまったんだ。今思えば、そんなこと考えること自体がくだらなかった。人を救いたいって気持ちに名前のつく関係や、男女なんて関係ないんだから。それをわかっていなかった。」
「そうだね。しょう君、私達お別れしよう。」
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