お昼のLINEのニュースで僕は彼女の死を知ることになった。
「東京湾にて、女性の遺体発見
七月三十一日明け方、東京湾に面した道路をランニングしていた男性から、人のようなものが浮いているとの通報が入り、湾岸警察署の職員が確認したところ女性の遺体を発見した。その場で死亡が確認された女性は、茨城県在住の田中聖瑋(せい) (二十二)さんと見られる。死後数日経っており、目立った外傷のないところから自殺・事故の両側面で捜査が続けられている。」
そこに示されている名前も住所も年齢も全て僕が知っている「田中 聖瑋」と一致した。丁寧に名前の読み方までついている。
もう一歳、歳がずれていれば、あと十日ほどで彼女は二十三歳になる。
彼女のニュースは、インターネットで調べればすぐに表示された。
中には、「すごく太っていた時の写真だから、恥ずかしくて見せられないよ。」なんて言っていた学生証の写真までも出てきた。
極めつけは、記事に掲載された部活の写真である。
聖瑋以外には、顔の部分にモザイクがかかっているが、間違いなく去年の引退の時に部員全員で撮った写真であった。
自分のスマートフォンにも同じデータが残されている。
信じられなくて、嘘だと思いたくて、既読のつかないトークルームを開き、電話をかけた。
ディスプレイには、笑顔の聖瑋と高校時代のチームメイトの写真が映し出された。
永遠と続く呼び出し音が、心臓の鼓動のペースを速めている。
しばらくして、キャンセルがかかった。
携帯番号にかけよう、そうアドレス帳を開いたとき、彼女の名前は表示されなかった。
LINEのトーク履歴や、何度か交わしたGメールのアドレスにも彼女の電話番号は表示されなかった。
こんなことなら、部活のメールも消さずに残しておけば良かった。
このとき、僕は再び絶望した。
彼女のことを全くわかっていなかったんだと痛感して。
仕事に全く身に入らなくなった。
与えられた仕事を単にこなすだけの日々。
職場の人からも、体調が悪いのかと何度も心配された。
でも、うまく伝えるための言葉が見つからなくって、
「夏バテかもしれないです、すみません」
なんて、しょうもない嘘をついた。
それは家族にも同様で、実家に住んでいるからという理由で、日課にしていた晩ご飯作りもまるっきり母親に任せてしまった。
ご飯の時間以外は自室のベットでイヤホンをして過した。
部屋に日が射すと、自然と目が覚めた。
レールから外れないよう、あらかじめ設定された遊園地のカートの乗り物みたいに、きぃきぃと鈍いきしみを上げながら、同じ道をただただ走っていた。
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