第3話 初めてのライブは

暗い部屋の中、再びパソコンを叩くGM。

プレイヤーは2人確保した。

ここから出会いのシナリオをやっていくのが妥当だろう。

『アイドル』としても、ここからがスタートである。

ルール2のFS判定の説明を挟みつつ、プレイヤー二人にハンドアウトを渡す。


GM:今回から、PC2人体制となります。次回から3人目が来てくれる……はず!

リオ:それでも少人数だよね。

GM:少ない人数の方が掘り下げが楽ですからね。時間の短縮であったりと利点もあります。あとGMの友達が少なくても回せます。TRPGには一緒に遊んでくれる友達は同梱されないからね……。

エリシア:……と、兎も角シナリオに入りません!?

リオ:そ、そうだね!

GM:了解です。



プリプレイ

リオ=ハルカワの場合

リオ:一話目にしていきなり幼馴染といれかわって転生しました……ってラノベみたいだな僕の人生!?

GM:『俺、アイドルはじめます。チート無し、でも女の子だから問題ないよね!』と言う感じですね。

リオ;いや、問題しかないからね、それ!?……ご、ごほん。兎も角幼馴染である翼を探す感じです。データ的にはアコライト/バード。種族はアーシアン。プロテクションとヒールが出来ます。って感じでいいですかね?

GM:はい、問題ないです。

リオ:回復と支援、ミドルの判定は得意なのでお願いします。……所詮元一般高校生なので前衛張れないんで……。

エリシア:そこはわたくしがカバーしますわ。


エイリスツィア・グラスウェルズの場合。

エリシア:白竜の国、グラスウェルズ王国が貴族、エダム公アンリが娘……ですが今はただのエリシアを名乗っていますわ。マスターピースを求めて旅をしていたところ、タケウチさんと言う方と出会い、アイドルを目指しています!

リオ:グラスウェルズって基本ルールブックに載っていましたっけ。

GM;ないです。

リオ:……。ちなみにアンリっていうのはどんな人?

エリシア:ブレイクシリーズの悪役ですわ。

リオ:悪役令嬢(ぼそっ)

エリシア:まずは一つ目の『マスターピース』を手に入れましたわ!次のライブも頑張ります!

GM:はい、今回はライブ回なので頑張ってください。

エリシア:クラスはウォーリア/ダンサーのヒューリン。近づいて《バッシュ》したり《カバーリング》を頑張りますわ。



GM:ギルドサポートはどうします?

リオ:えっと……。

エリシア:《蘇生》ですわね。

リオ:(データを見ながら)むしろこれしかないね……。ギルド名は、まだ未定で大丈夫です?他の人が来てから決めたいです。

GM;はい、ユニット名にもなりますしのんびりで大丈夫です。それでは、オープニングに入っていきましょう。



※ ※ ※



GM:最初はエリシアのシーンとなります。

エリシア:わかりましたわ!



「~ら~ら~♪」


 プロダクション、というには狭い部屋の中歌声が響く。

 幾度も幾度も、同じ旋律を繰り返す。

 唇の動きと音程を安定させる訓練、らしい。

 それが終われば今度は走り込みと、ステップの基礎。

 アイドルという職業は華々しいが、その裏側を支えるのは地道な努力だ。


「とはいえ……これは、なんとも言えないですわね……」


 一通りのボイストレーニングを終え、ため息を一つ。

 毎日毎日レッスンだけの日々、というのは摩耗する。

 相方であるはずのミクは「いつになったらデビューできるんだにゃ!? こうなったらストライキだにゃ!?」と現在失踪中。

 一人レッスンと言うのは、気が滅入るものだった。


エリシア:「ふぅ……プロデューサー……わたくし……」

GM:「はい」不意に君の後ろに立っているタケウチさん。

エリシア:「きゃあああっ!?お父様ぁぁぁっ!?……あ」流石にびっくりして後ずさりますわ。

GM:「……」君のプロデューサーことタケウチさんはその泣き顔に流石に少し悲しそうな顔をした後。「貴女の、初ライブが決まりました」

エリシア:「えっ!……やりましたわ!」

GM:「ええ、初めてのライブとなります。ただ……このエストネルでライブを開催するにあたって。エストネル王から条件がつきつけられました」

エリシア:「あのしょうわ・……いえ、陛下が?」

GM:「以前手に入れた『マスターピース』、それを演目の一つに使用する。と言うのが条件だそうです。……そうでなければ広場一つ貸さない。と」

エリシア;「マスターピースを、ですって?」まさか、自分の権威付けに使うつもりですの……?意図が見えないですわね。

GM:「しかし、マスターピースは二人以上の歌姫が必要です。ミクさんに頼もうとも思ったのですが、現在彼女はどこにいるのか捜索中でして……」

エリシア:「うう、わたくしの力不足でしょうか」

GM:「いえ、私の落ち度です。……なので、申し訳ありません。ともに『マスターピース』を歌いこなせる人を探してはくれませんか?」

エリシア:「ええ、このエリシア、承りましたわ!」

GM:「ええ、頑張りましょう」

エリシア:「プロデューサーの笑顔にかけて、お仕事がんばりますわ!」

GM:では、ここでシーンを切ります。

リオ:……346ネタが多いけどやってることは765……(ぼそっ)

エリシア:こ、これから頑張ればいいことですわ!




※ ※ ※





GM:では、リオのシーンとなります。


 気が付くと、僕は町中に立っていた。

 周囲の文字を見ると『エストネル』という都市に来てたことだけは分かる。

 全然日本語と違う文字なのに、くっきりと読める。

 ああ、僕は異世界に来てるんだな。

 今更ながら、そんなことを僕はぼんやりと考えていた。


「……本当に、異世界転生しちゃったんだな、僕」


 歩いてる人を見れば、普通の人に混じって翼の生えた人や、猫耳の人間。竜人たちが歩いている。

 身体を見れば、僕もいつの間にかファンタジーな服を着てた。

 翼の体だから、どうしても落ち着かない。


「ここから、どうすればいいんだろう。あの女神が教えてくれたりは……無駄、だろうなあ」


 そうやってため息をついてると。

 僕に声をかけてくる人が居たのだった。


「……無駄ね」


GM:さて、君が一人黄昏ていると。不意に声がかけられます。

リオ:「!?」

GM:銀髪の女性だ。いわゆるファンタジーの魔法使いの格好をしているね。「--ベネットは粛清した。もういない」

リオ:「あ、あなたはあの女神の、知り合いなんですか?」口ぶりからしてどう考えてもあの緑髪の上司、だよね……。

GM:「フェルシア。世界の管理者と呼んでいる人もいるけど。好きに呼んでいい」

リオ:「……」

GM:「その場のヘルシア緑茶から名前を付けられた事実を言ったら殺す」

リオ:「い、いやまだ連想してないですからね!?」あと10秒もあったら連想しそうだった……。明らかにあの女神より話が通じなそうだ……。

GM:一応通じると思います(苦笑)


 フェルシア。

 初代アリアンロッドリプレイ(通称『無印』)に登場するプレイヤーキャラクター。

 色々あって現在は女神をしている。

 たまに敵キャラで登場もしたりしていたりしていなかったり。

 ……ヘルシア緑茶ってまだあるよね?


GM:「あなたがすべきことは二つ。この世界にばらばらの断章としてのみ存在する『マスターピース』と呼ばれる歌曲を復元すること」

リオ:それは、女神から説明を受けた部分。ではありますね。「もう一つは?」

GM:「そして、それを使って。この世界の歴史を途絶えさせないこと」

リオ:「歌曲で……歴史を……(世界が絡むと、なんとも異世界転生らしいな)」

GM:「ただ、手に入れるだけじゃなくて。歌いこなし、踊る必要がある。だからベネットにはそれをこなせる人間を探すことを頼んでいた」

リオ:「ダンス……そりゃ、やれば出来るという自信は……あるけど」

GM:「自信があるのはいいこと。出来ないならここで死んで貰う」

リオ:「それやっぱり脅迫ですよね!?」

GM:「脅迫じゃない……命令」

リオ:ひぃっ!?断るという選択肢が……ない……!

GM:「よろしく」(静かな声で)

リオ:「や、やりますよ!……ただ、一つだけ。翼の事を教えてください。幼馴染なんです」

GM:「それは……だめ、教えない」

リオ:「なん……で……」くっ、まじめな分あの女神よりたちが悪い。

GM:「てへぺろ」

リオ:「……」

GM:「……」

リオ:「は?」

GM:「ここで待っていれば『マスターピース』を求める人間が現れる。待っていればいい」そういって、彼女は消えます。

リオ:いなくなったのを確認してから--叫びます。


「この世界の、女神は……!」


 ぎゅっと拳を握りこむ。

 これくらいやったって、絶対許されるはずだ。


「どいつもこいつもあんなんばっかりかああああっ!!!」


 かくしてエストネルの街角に、叫び声が響くのだった。


GM:では、次のシーンに向かいます。

リオ:翼……どうなってるんだよ……。

エリシア:次は合流のシーンですわね。





※ ※ ※




GM:では、合流のシーンとなります。道の真ん中で放心しているリオをエリシアとタケウチさんが発見する感じですね。

エリシア:「そこの貴女!」

リオ:「は、はいっ」

エリシア:「広場で叫ぶのはあまり良くないですわ……あら」

タケウチ(GM):「ええ」

リオ:「……?」この人たちが、マスターピースを探す人。か?

エリシア:この容姿、先ほどの響く声……タケウチさんに目配せをします。

タケウチ(GM):「そうですね……アイドルに、興味はありませんか?」

リオ:「はいっ?」

GM:(すっと名刺を差し出す)

リオ:「……」

GM:(ずずいっと差し出される名刺)

エリシア:「ええと、わたくしたちはアイドルの事務所をやっているのですわ。この方はプロデューサーのタケウチさん。目つきが悪くて大きいですがとても良い方ですのよ。決して人さらいではございませんわ」

リオ:「は、はあ……」展開が、早い……!ここで人さらいでしたというオチだったら100年は恨むぞあの女神。

GM:「100年生きる気でやんすか?」

リオ;唐突に混じるなぁ!?ともかく、ここで断るって選択肢はまずないよな……。《インサイト》があるから嘘じゃないことも分かるし。

タケウチ(GM):「アイドルに、なっていただけないでしょうか……その、貴女なら良いアイドルになれると思うのですが」

リオ:「わかりました……お引き受けします。その話」

エリシア:「本当ですの!? ありがとうございます!……と、申し遅れました。わたくしはアイドルのエリシアと申しますわ!」

GM:「タケウチ、と申します。プロデューサーです」

リオ:「僕は、リオって言います」……私にしようか悩んだ(苦笑)

エリシア:「リオさん、ですわね。よろしくお願いしますわ!」

GM:「お二人には企画中ですが、ユニットを組んでいただきます」

リオ:「うん、よろしく!」


 タケウチさんと、エリシアさんと握手をした後。

 僕はエストネルという町の一角。

 小さな二階建てのレンガ造りの建物。彼らの『プロダクション』に来ていた。


GM:「ここが、一応のプロダクションになります」

リオ:(よかった、屋根がある家に泊れる……)

GM:「ただ、一つ申し訳ないことがありまして。現在ライブの予定がありますが……。我々の力ですと会場の確保、資材搬入等に関しては人手が足りず、我々の手で行わなければなりません」

リオ:「大丈夫です!そのくらいだったらライブをやるのに必要でしょうし!」

GM:「ありがとうございます。それと、もう一つ。我々の目標である『マスターピース』という歌を歌う必要があります。この大陸に平穏をもたらす歌と呼ばれているものです」

リオ:「大丈夫です。僕も、マスターピースを歌いたいと思ってますから!」

エリシア:「あら、本当ですの!? こんなところも一緒だったんですのね!」

リオ:「う、うん……ありがと」

GM:さて、顔合わせが終わったところで、レッスンの時間が来ます。それぞれ得意分野で判定をしてみてください。

エリシア:了解しました。ではダンスを見せますわね!「先輩として頑張りますわ!」(ダイスを振る)達成値は11ですの。

GM:素人としては凄くうまいけど、アイドルとしては駆け出しくらいの出来だね。それでもきらびやかに光って見える。

エリシア:「こんな感じですわ」今まで踊ってきた社交ダンスと違って、このアイドルのダンスと言うのは違ったコツが必要で中々難しいですわね……。

リオ:「おぉ……!凄いですエリシアさん!」パチパチと拍手します。異世界でこんなダンスを見られるなんて……!

エリシア:「ありがとうございますわ」と、スカートをつまんでお辞儀をしてみせますわ。

リオ:優雅な仕草……お嬢様なのかな……そういいつつ、今度は自分が歌ってみますね。

GM:では『呪歌判定』ですね。

リオ:精神は8にさらに美しい声を持つスキル《シルバリィソング》の力で+1d。翼の身体だから、声だって綺麗に出せる。(ダイスを振る)達成値23!

GM:そうですね。それだと普通じゃ歌えないレベルの歌になります。美しい歌声が周囲に響き渡る。「まさか、これほどとは……」とうなるタケウチ。

エリシア:「ええ……とても……すごいですわ。王宮でもこれほどのものは中々聴けませんもの」うかうかしてられませんわね。次回の成長で《ダンシングヒーロー》を取らなければ。

リオ:「~♪」(借り物の身体……だけど、歌うのは……やっぱり、楽しいや……)

エリシア:歌い終えたリオに思いきり拍手しますわ!「リオさん、これからのライブ!頑張りましょう!一緒にやれば、きっと成功しますわ!」

リオ:「う。うん……頑張ろう!」



 大丈夫。

 そういって、僕は自分に言い聞かせたんだ。

 借り物の身体で、翼の体でも。

 僕は、歌える。アイドルは出来る。

 ……。

 正直に言えば、あの時、一瞬だけ。僕は翼に身体を返さなきゃっていうことを。忘れてたんだ。

 歌うのは、楽しかったから。



※ ※ ※



GM:では、ここから初めてのライブの準備のための判定をこなしていく感じですね。『舞台の準備』や『ライブの宣伝』『衣装の作成』、『場所の確保』などの内容があります。

リオ:アイドルとしての第一歩ですね……!

GM:はい。ここから一人3回まで判定可能となります。全部で6回判定できる計算ですね。当然全部クリアせずにゲリラライブを強行することも可能ですが、クリアできなかった判定の数だけ後のライブのFS判定の難易度が上がっていく感じですね。

エリシア:絶対に成功させなければ、ということですね。

リオ:僕には《アンプロンプチュ》があるから歌である程度は何とか出来るんだよね。翼の身体強いや……。

エリシア:大分頼ることになりそうですわね……。まず、わたくしから判定を行きますわね。宣伝からやってみます!

GM:では知力の判定で、難易度は12となります。

エリシア:能力値は知力で……(ダイスを振る)。う、達成値10……失敗ですわね。

GM:では、全力でビラを作るものの、全力過ぎて全く枚数が刷れなかった感じですね。

エリシア:「うう、申し訳ありませんわ……」もっと得意分野を活かさないと難しいですわね。

リオ:「大丈夫、僕が代わりに宣伝してきます!」では僕が《アンプロンプチュ》を使って宣伝してきます。知力だけだと期待値が怖いので全力!(ダイスを振る)15なので成功!街頭で歌って宣伝とライブの告知をします。

GM:では、お客さん達が興味を持ってくれた感じだね。「へぇ、アイドル……歌手みたいなもんかね?」「みるだけならいいんじゃないかな」

リオ:「はーい♪皆さん、私たちのライブ、見に来てくださいね♪」

エリシア:「リオさん……すごいですわ……!」

リオ:翼の歌声に、僕の作戦。客寄せならできて当然!

GM:「でも、あれって道の真ん中で叫んでた女だよな……」

リオ:「はは……なんのことやら……別人ですよ、別人……」(激しく目を逸らす)

GM:では、リオが冷や汗を流したところで次のシーンに行きましょう(笑)

リオ:人のうわさは75日……大丈夫……大丈夫……のはず……。



※ ※ ※




エリシア:このシーンは、今度こそリベンジしますわ!

GM:では、どの判定で行きます?

エリシア:当然、わたくしの得意分野……つまり、筋力!資材の搬入ですわね!

GM:では、舞台の準備のための資材や、音響のための道具を運ぶための判定ですね。タケウチさんも頑張ってるので、その手伝いをする感じになります。使用能力値は当然、筋力となります。

エリシア:「力仕事は任せろ!ですわ!」(ダイスを振る)達成値17!

GM:それは凄い! 規定以上の資材を運ぶことに成功します。

エリシア:お母様に鍛えられましたから。丸太をひょいと持ち上げますわ。

リオ:「エリシアさん、凄いです……!魔法か何かですか?」(女の子なのに、僕が男の頃よりすごい……!?これが異世界の魔法なのかな)

エリシア:「単純な筋力ですわ」(満面の笑み)

リオ:異世界半端ない……っ。

エリシア:「この程度、お母様の岩投げ訓練に比べれば平気ですわ!」

リオ:「エリシアさんの家庭環境が……すごく気になる……」



 史実の騎士の訓練では岩を持ち上げる訓練がある。

 ちなみに岩を投げる訓練はない、はずだ。




※ ※ ※




リオ:じゃあ、今度は舞台を使わせてもらうために、役人さん達の説得にあたるよ。説得は【精神】だから大得意だ。

GM:では難易度は15となります。

リオ:う、高い……けど僕の精神も高い。《アンプロンプチュ》いけるはずだ!(ダイスを振る)15!

エリシア:……ぎりぎり、成功ですわね!

リオ:ひやひやした……。

GM:「ここの広場をよくわからない連中のライブ、とやらに使わせるわけにはいかないな」そんな感じの頭の硬い役人さんがいる感じですね。

リオ;ではその役人さんに近づいて行って「あの……それでも、ここしかなくて。使わせてくれませんか……」と下から見上げるような全力であざとい視線で相手を見ます。翼の事は僕がずっと見てきたんだ。生かす方法だって知ってる……!

GM:ではそのあざとい視線に「うぐ……っ」と思わず後ずさる役人さん(笑)

リオ:「絶対、凄いライブを見せられると思うんです!みんなの心を動かせるような!」

GM:「……うぐ……仕方……ないな……」とリオの熱意とあざとさにやられて役人さんが許可を出してくれます。

リオ:「ありがとうございますっ!」そう言いながら半ば強引に握手をします。

GM:つ、強い……。

リオ:やるからには、全力です!アイドルですから!

エリシア:リオさん……流石ですわ。



※ ※ ※



エリシア:さて、3回判定できるという事はこれがラストターンですわね。エストネルの皆様にアイドルについて知ってもらうためのパフォーマンスを行いますわ!全力のダンスで!

GM:了解です。では目標値は10となります。

エリシア:先輩として頑張りますわ(ダイスを振る)……10。

リオ:さ、さっきから危ない……っ。

エリシア:肝が冷えましたわね。

GM:とはいえ、成功ですね。

エリシア:ええ、先輩の面目躍如として、軽やかに踊って見せますわ。「これがアイドルのダンスですわ!」

GM:周囲に人が集まって色々話しかけてくれる感じですね。「期待しているよ!縦ロールのお姉ちゃん!」

エリシア:「エリシアですわ。ありがとうございます!ライブも見に来てくださいませ!」

リオ:よし、これで残っているのは衣装だけですね……!エリシアさんありがとうございます。

エリシア:いえ。リオさんが凄いからですわ。筋肉も締まっているようですし。

リオ:いや、筋肉と言うわけじゃ……。もしかして、エリシアさんの褒める基準って筋肉なんじゃ……。

エリシア:ふふふ(笑)



※ ※ ※


リオ:あとは衣装……器用は得意じゃないから、《アンプロンプチュ》を使うしかないかな。

GM:まあ、そうなりますね。では判定お願いします。

リオ:(ダイスを振る)達成値18!やっぱり《アンプロンプチュ》は強い!

GM:その分MPを消費しますからね。では、判定に成功したので衣装の作成に成功します。

リオ:昔は、衣装をつくる真似事をしてたこともあったんだ。アイドルは出来ないなら、せめてってね。


 錬金術によって作られたミシンを使いながら、小さく呟く。

 この世界の錬金術は凄い。

 大体の機械にやらせてることは出来る気がする。


「ふぅ、こんな感じかな」


 出来上がった衣装をチェックして、小さく微笑む。

 こういう衣装を着て、自分が踊る日がくるなんて。思ってなかったから。


リオ:白をベースにした、ひらひらとしたイメージのものにします。きっと、それが翼に一番似合うと思うから。

GM:さて、次のシーンでミドルフェイズ最後のシーンとなります。舞台の前夜ですね。




※ ※ ※



GM:このシーンは戦闘があります。あとこの後戦闘はないです。

エリシア:舞台の前夜。ですわね。ではリハーサルを終えたあたりでしょうか。

GM:はい、リハーサルを終えて、舞台の最終チェックをしようとしていた感じですね。


 舞台の前夜。

 リハーサルを終えた僕たちが見たのは、信じられないような光景だった。

「ああ、ここだっけか。解体工事をしなきゃいけないの」

「この大陸に平和なんざ似合わないからな」

「王様も目こぼしするだろうよ、こいつらだったらな」

 数人のチンピラたちが舞台の前にたむろしていた。

 チンピラに関しては、この大陸に来てから。何度もすでに目にした。

 日本より、ずっと治安が悪いことも知っている。

 けれど、自分たちにこうしてすぐに暴力が降りかかって来るとは、思ってなかったんんだ。


 少し視線を下げたら。

 気絶してるタケウチさんが居て。

 否が応でも、足が震えてきてしまう。

 


リオ:ちょ、ちょっと……何をしてるんですか!?

エリシア:「乱暴狼藉なら、容赦しませんことよ!」前に出ますわ!

GM:「ん?なんだ、小娘共が」そういいながら舞台を破壊しようとハンマーをふるっているね。

リオ:「こ、ここの公演許可はもらってます。あなた達に、どうこうする筋合いなんてありません」

エリシア:「ええ、何の目的があってこんなことをなさるんですの?」

GM:「……ああ、理由なんざ簡単だよ。気に食わないからに決まってるだろ?」

エリシア:「気に食わないから……そんな、理由で……」もしかして、このチンピラたちは……。

GM:ご明察です。エリシアには見覚えのあるマークが見えます。

エリシア:「その紋章……こんなところにもいますのね……っ!」

リオ:知っているのかライデン……じゃなくってエリシアさん!

エリシア:「秘密結社……バルムンク……」



 バルムンク。

 アリアンロッドサガシリーズに共通する悪役である。

 魔族が表向き存在しないアルディオン大陸に置いて、魔族が暗躍する組織だ。

 この大陸に戦乱をもたらす組織として知られている。

 ちなみに、エリシアの母国であるグラスウェルズにとっては、特に縁が深く。多くの無茶な侵略戦争をグラスウェルズに行わせていた。


GM:「ほう……俺たちの正体について知っているとはな」

エリシア:「ある程度以上の知識があれば、レイウォールとグラスウェルズの病巣について知らぬものはおりませんわ」

リオ:「……それって、ヤバい組織なんじゃ……」

エリシア:「大丈夫ですわ。わたくしが戦いますもの。……ところでリオさん、先ほどの『ライデン』とは一体?」

リオ:「そこは突っ込まないでぇ!?」

GM:「まあいい、ここでお前らの歌姫ごっこはゲームオーバーだ!」というわけで戦闘となります。

エリシア:了解ですわ。「そんなことにはなりませんわ!早々にお引き取りさせていただきます!」

リオ:「うん、僕は前に出られないけど……全力で援護するから!」


行動順

バルムンクの皆様(モブ)7

エリシア 5

リオ 3


エリシア:セットアップに《ステップ:アース》ですわ!防御と魔法防御を上げますわ!

リオ:……これ、僕の出番あるかなあ。

GM:さて、どうでしょう。此方のセットアップはありません。「ひゃっはー」と言う程度。

リオ:同じくないです。

GM:ではこちらが動く!マイナーアクションで《インベナム》で毒を付与、メジャーアクションで《連続攻撃》!一杯いるので連続して攻撃されてる感じですね。

エリシア:来なさい!

GM:(ダイスを振る)命中は15!毒を塗ったナイフでえぐるように攻撃。

エリシア:(ダイスを振る)16で回避成功ですわ!

GM:「そんな、俺の短剣が外れただと!?」

エリシア:「毒なんて優雅でないもの、振り回さないでくださる?」

GM:「ちっ、ならばもう一撃だ!」というわけで《連続攻撃》2発目(ダイスを振る)命中17!

エリシア:(ダイスを振る)流石にクリティカルは出ませんわね

GM:ダメージは30!さらにダメージが入れば【毒】です。

リオ:「……や、やらせませんっ!《プロテクション》です!」《プロテクション》で(ダイスを振る)7点軽減!

エリシア:6ダメージ喰らいましたわ。「お母様の一撃の方がはるかに重いですわ……っ!リオさん、ありがとうございます!」

リオ:「ど、どういたしまして……やった、魔法……できた……」テンパりながら杖を構えます。杖を使ったのも初めてで、魔法も初めて使ったから。

エリシア:「さあ、行きますわよ!」《バッシュ》で突っ込みますわ!(ダイスを振る)命中16ですわ。

GM:……ぐ(ダイスを振る)避けられない。

エリシア:(ダイスを振った後計算しながら)14ダメージ通りましたわね。

GM:はい、計算有難うございます。「意外とやるじゃねえか……こいつ」と、少し動きが鈍くなる。

リオ:……うーん。ここで《ヒール》を撃ったばあいどう考えても過剰だから、行動放棄します。魔法を使えた反動で少し放心してる感じ。

エリシア:毒ダメージを最後にいただきますね。「……っ、まだまだですわ!」

リオ:「エリシアさん……!」ぐ、ファンタジー世界に来たとは言えこちとら元もやし高校生がこんな異世界バトルできるかぁ!?

GM:では次のラウンドですね。セットアップスキルは全員ないのでこちらから行動します。

エリシア:「かかってきなさい!」大丈夫ですわ、リオ。このライデンにお任せなさい!

リオ:ライデンって気に入ったんですね!?

GM:「いくぜぇ!」組み合わせは変わらず。命中は(ダイスを振る)21!

エリシア:(ダイスを振る)失敗ですわ。

GM:よし、ダメージは33点となります!

リオ:させるか!《プロテクション》!(ダイスを振る)うぐっ、4点しか軽減できない。

エリシア:「けほっ……負けませんわ!」ちょっと厳しいですわね。残りHP9です。

GM:二発目は……あ、ダイス目が。

エリシア:これなら(ダイスを振る)……回避ですわ!そのまま返しの刃で攻撃します!毒もありますし時間をかけたら不利なのは分かりましたから全力ですわ!(ダイスを振る)うぐっ……命中のダイスの目が全部2……。

GM:よ、避けられるはず(ダイスを振る)……あ。

リオ:よし、当たってる!

エリシア:ここでフェイトを3点ダメージにつぎ込みますわ!後先考えずに一撃!(ダイスを振る)30ダメージですわ!

GM:……う、そのダメージだと……(計算しつつ)ギリ、倒れる。

エリシア:ふう……何とかなりましたわね……。あとのFS判定は少し厳しくなりますが……。

リオ:そこは僕がカバーしますよ!

GM:「くっ、こんな小娘共に倒されるとは……」

エリシア:「これがアイドルの力ですわ!」

GM:「アイドルの力……これが……」といいつつ倒れます。

エリシア:後で、お役人さんに預けますわね。それと、倒れているタケウチさんを起こしますわ。

GM:「……っ、エリシアさん……これは……お二人とも、大丈夫ですか?」

リオ:「ふふ、大丈夫ですよ」

エリシア:「ええ、大丈夫ですわ!」

リオ:「むしろタケウチさんの方が大丈夫……ですか?」

GM:「大丈夫です……鍛えていましたから。私は、これからこの人たちを引き渡してきます。あなた達は休養を」若干ふらつきながらも、たしかな足取りで、バルムンクの皆様を連行していきます。

エリシア:「リオ、ありがとうございます。貴女の力が無かったら危なかったところでしたわ」

リオ:「私なんか……エリシアさんがいなければ」

エリシア:「いいえ、わたくしこそあなたが居なければ……」

リオ:「エリシアさん……」


 決着のつかない譲り合いをして。

 僕はエリシアさんと同じタイミングで噴き出してしまった。

 初めて魔法を使って、戦って。

 大変だったのに、妙に気分が良かったんだ。


「ふふっ」

「あははっ」

「……明日は頑張りましょう、リオさん。プロデューサーの為にも」

「はいっ!」



※ ※ ※


GM:では今回のクライマックス、ライブのシーンとなります。

リオ:あ、ライブの前に一度エリシアさんに話したいことがあります。

GM:了解です。

リオ:「あの、ライブの前なんですけど……」 

エリシア:「なんですの?」

リオ:「僕の名前、何ですけど……舞台の上では『リオ』じゃなくて。『ハルカ』って呼んでくれませんか?」

エリシア:「それは、あなたの別の名前なんですの?」

リオ:流石に男の頃の名前で呼ばれるのは、ね……。「アイドルとしての名前というか、色々事情があって、名前で呼ばれたくないので……」

エリシア:「そ、そうなんですのね。どんな意味の言葉なのですの?」

リオ:「春の川。サクラの花びらが流れる、穏やかな川っていう意味です」

エリシア:「素敵な名前、ですわね。プロデューサー、なんだかいける気がしましたわ」--それに、わたくしも、本名は名乗っておりませんものね。

GM:秘密の多いPTですね。

エリシア:いつか、名乗る日が来るとは--思いますわ。きっと。

GM:では、エリシアが覚悟を決めたところで、ライブの時間が近づいてきます。



小さな広場には、70人ほどの人が集まっていた。

「アイドルって、どんなものなんだろうな」

「マスターピースってあのおとぎ話のアレだろ? 実際にあったんだなぁ」

そんな話をしてる人たちは、みんなビラを持ってたり、もしくは街角で宣伝した時に居た人たちで。

僕たちの頑張りが、まっすぐに伝わっているみたいだった。

端っこの方にいる猫耳の人は、なんというか微妙な表情だった。

「ミクが居ないうちに初ライブが始まるにゃんて……」

まあ、気にしないことにしよう。


エリシア:「リオさん--いいえ、『ハルカ』」

リオ:「は、はいっ」ちょっと緊張している感じです。

エリシア:「プロデューサーも言っておりましたけれど、まずは楽しみましょう。それと--大事なのは、笑顔ですわ!」

GM:「ええ、あなたのよさを。まっすぐに出してください」

リオ:「……そうですね。いや、大丈夫ですよ」


緊張を打ち消すように、軽く笑顔を一つ。

これは、翼の体で。

目的は『マスターピース』とかいうのを見つけることで。

僕は、駒にしか過ぎないのかもしれない。

それでも、僕は夢見てたんだ。


『アイドルになる』ってことを。


GM:ではFS判定を行いましょう。内容は『ライブを成功させろ』となります。進行値は10を目指してください。処理は行動値の順なのでエリシア→リオとなります。

エリシア:分かりましたわ!最初の判定はなんですの?

GM:まずはダンスの判定です。使う能力は【敏捷】です。目標値は7。

エリシア:わかりましたわ。(ダイスを振る)達成値は11ですわ!

リオ:+4成功!きっちり進みますね!進行値は2です。

GM:はい、見事なステップで観客を魅了していきます。

エリシア:「皆様、本日はありがとうございますわ!」

リオ:「私たちのステージ楽しんでいってくださいね!」

GM:次はリオですね。判定はまだダンスの敏捷のままです。

リオ:ここで《アンプロンプチュ》を使っちゃいます。この後はきっと歌だからシーン1回のこれを切っても大丈夫のはず!(ダイスを振る)達成値15!

GM:問題なく成功です。

リオ:ただのダンスだけなら難しいけど、歌に乗せれば、僕だって出来る!

GM:ここで進行値が5になるので判定が変更になります。

リオ:よし、狙い通り【呪歌】に……。

GM:いえ。こういう判定です。


「お、おい、舞台が傾いてないか?」

「えっ!?」


順調にダンスをして、歌を主体のステージに移行しようとしたところで。

みしみしと嫌な音が聞こえてきた。

少し振り返れば、倒れかかって来る道具が見える。

……昨日戦った後、頑張って直したけど。それでもやっぱりガタが来てたんだ……!


GM:というわけで判定は【命中】です。目標値は11。

リオ:「エリシアさんっ!」

エリシア:「分かっていますわ!」残ったフェイトを2点つぎ込んで判定しますわ!(ダイスを振る)達成値は21。舞の動きのまま槍を抜いて、まるで演出であったかのように観客さん達に当たらないように舞台を破壊しますわ!

リオ:よし+10成功だから……進行値は9。あと1だ!

エリシア:「皆さんご心配なさらずアイドルは…ピンチも乗り越えますわ!」

GM:はい。ですが--最後の難関が現れます。

エリシア:……成程。そうでしたわね。『エルウォーデン王』が指定した、ライブの条件は--。

GM:最後は『マスターピース』を歌うための【呪歌】判定です。難易度は--27。

リオ:「エリシアさん。ありがとうございます……。ここから、やってみます。最後は--私の歌で!」


 マスターピースについては、エリシアさんから聞いていた。

 すごくきれいなメロディの曲で。

 とても、難しい曲で。

 作った人の、心が伝わってくるような、そんな曲だった。

 きっと、変な命令がなくっても。僕は選んでいたと思う。

 アイドルとして、全力で。

 歌いたくなる曲だから。


リオ:《アーシアン:召喚》に残ったフェイトを使えるだけ突っ込みます。ダイスは8個!

エリシア:お願いしますわ……!

リオ:(ダイスを振る)ダイス目だけで27!達成値は35です!


--歌声が響く。

歌うほどに、どんどんと曲に引き込まれていく。

僕の歌声が、高まっていく。

薄く目をひらけば、歌の魔力か柔らかな白い光が舞台を包んでいた。


「これが……マスターピースの力、ですのね……」

「はい……いい、笑顔です。


舞台袖のプロデューサーやエリシアさんの言葉すら、聞こえなかった。

いや、その時の僕は--。


翼のことも、忘れてたのかもしれない。


GM:歌い終えた君を、拍手が包む。いつの間にか観客も増えていた感じだね。

リオ:よし……っ!

エリシア:やりましたわね!

リオ:「皆さんー!ありがとうございました!また--ライブがあったら、来てくださいね♪」

GM:では、ライブが盛況に終わったところで、シーンを切りますね。



※ ※ ※



「ライブ成功、お疲れ様でした」

「乾杯!ですわ」

「はい、乾杯ですね!」


小さなプロダクション。

行われていたのはささやかな打ち上げだった。

置かれていたのはもちろんお酒じゃなくて、ジュースだったけれど。それで十分だ。


エリシア;「ハルカのおかげですわ」

GM:「ええ、いい笑顔でした」

リオ:「はい……そう、ですね……」力が抜けちゃって、つい涙が出てしまいます。

エリシア:「ハルカさん!?どうかしたんですか!?」

リオ:「い、いえなんでも……なんでもないです……」感極まって、だから。なんか恥ずかしい。


ぐしっと瞳から溢れるものを必至にぬぐう。

だって、恥ずかしかったから。

その辺は、やっぱり。僕は男の子だったんだと思う。


リオ:「あ、あの舞台も終わりましたし。ひとまずはまた『リオ』と呼んでください」

エリシア:「え、ええ。分かりましたわ」

リオ:翼の身体だったし、本当に叶えたかは分からないけど。それでも。僕が求めていたものだったから。--だから今『ハルカ』って呼ばれたらまた泣いちゃいそうだからね。

GM:「……そういえば、お二人に。先ほどファンを名乗る方から花束が届いております」

リオ:「えっ!?」

エリシア:「本当ですの!?」


 そういってタケウチさんが取り出したのは、青い薔薇の花束。

 花言葉は知っている。

 確か--『夢をかなえる』というものだ。

 現実世界じゃ、とんでもなく珍しい薔薇だったから。

 けれど、僕はそれ以外のことで。目が離せなかったんだ。


「そのカードは……模様?文字が、書いてありますわね」

「う……うん……」


 小さな紙片が、花束についていて。


『初ライブ おめでとう  翼』


 そう--日本語で書かれていたから。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る