第5話 帰
結局、俺は仲間と一旦帰ることを選択した。帰ってから井原屋にあの日の返事をして、魔神世界に飛ぶ事にした。
「了解だ。また一週間後に君を呼びに行く」
新島母はそういうと霧雨のように溶けて消えた。そして、列車は停車していた。
〜一週間後〜
あの後列車は片道を引き返し、六甲國史上初の公式的な帰還となった。しかし、国民から浴びせられた言葉は賞賛ではなく罵倒だった。戦場から逃げて帰ったのだと。純血のことを守らないクズどもだと。未知線路の開拓も国防も行わない称賛ほしさのゴミどもだと散々言われた。この国は狂っていると改めて実感した。
隊長は拳銃を自らの頭に撃ち自殺した。井原屋は父親が対魔術国家戦線統括部長に選ばられたらしく混血監視の任から解かれた事により家族諸々首都に帰ったらしい。父親は混血の人で工場勤務と聞いていたので、それなりにショックだった。結局返事をできないまま魔神世界に飛ぶ事になるのが心残りではある。
「君の母親に君のことを話したら随分と喜んでいたよ。会いたいと言っていた」
「それは良かったです。相当辛い経験だったはずなのに優しいんですね」
「過程がどうであれ自分が産んだ子にはそれなりの思い入れがあるもんさ」
「実は拒絶されるんじゃないかって不安だったんですよ」
「する人もいるよ。出るよ。良いか?」
新島母が俺に聞いてきた。新島母の車に乗り込んだ俺は第七市街の汚い灰色の風景を見ていた。
「ならでるよ」
車が動き出した。
そして、最期に見た風景は目の前に飛び散る血と肉片。感じたものは衝撃と頭の中がスカスカするという感覚だった。
俺は狙撃されて死んだ。という事だ。
新島鉄道 零章 KO=李 @komotoreimei
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