手記

3月25日

 3か月ぶりの晴れの日だった。

 イワンが行方不明になった。昼過ぎにリンたちのグループが、いなくなったことに気付いて、探していたけれど、まだ見つかっていないことを教えてくれた。そのあとみんなで探しても見つからなくて

 昨日任せるといわれたのに私はダメな人間だ。


3月27日

 晴れ3日目。

 昨日は2年も続けた日記を書けなかった。まだおとといのことが忘れられない。気づいてすぐに本部に報告したし、捜索の手伝いもしてもらってるけど、まだ見つからない。

 イワンはどこかに隠れているだけで迷子になってる。

 そう言い聞かせながら寝ることにする。



4月3日

 今回の晴れは1週間。今日から雨。

 イワンは見つからなかった。本部は27支部方面への奪還作戦を前倒しするらしい。つまりはそういうことだ。イワンは


死んだことにされてしまった。



6月28日

 雨。86日連続。

 本部からの連絡で教団が近づいていることを知らされた。このままいけば本部の到着と教団の侵攻とが同じくらいのタイミングになるかもしれない、と言われた。

 明日は年長の子供たちに教団や雨やこの仕事について知ってもらって手伝ってもらえるようにしなくては。あの子たち■(※「は」と書かれていたようだ)

 あの子たちを危険な目には合わせられない。

 教団から逃げるために。もう躊躇している場合ではない。



7月8日

 雨。96日連続。

 明日からは晴れるようだ。晴れたら逃げるための訓練ができる。この狭い孤児院じゃ走ることすらできない。時間を有効的に使わなくては。



7月19日

 雨。今回の晴れは10日間。

少しの心残りはあるが問題なくこなせた。あとは本部の迎えの場所さえ分かれば逃げられる。



 もし何かがあった時の為にこの日記をあの子たちに遺す償いにしようと思う。

 教団のこと。あの忌々しい結界のこと。みんなの素性。そして──私のこと。

 全部を遺しても許してくれはしないのかもしれない。でも、知る機会は残しておきたい。たとえ許されることでなかったとしても、私が書かなきゃいけない。



9月1日

 雨。44日連続。

 本部へ連絡を入れるのは今日で最後。これ以降は本部からの一方通行で定期連絡を入れるとのこと。救援到着まであと20日。

 教団は今月中に到着する可能性が高いとのことだった。

 遺書はもう書き終わった。もう、やり残したことはない。

 明日から何か起こらなければ日記は書かないこととする。


9月2日

 雨。45日連続。

 早速何か起きた。起きてしまった。雨漏りの補修が足りず、数人が負傷。幸いなことに全員が軽傷だった。

 早期脱出のことを考えて雨に濡れないようにしないと大きなけがにつながりそうだ。


9月16日

 雨。59日連続。

 本部からの定期連絡の日だったが、届かず。

 他の支部の記録から教団到着まで1週間を切ったところか。

 雨の強さには変化がないから少しだけ余裕がありそうだ。


9月20日 予定決行前日

 雨。170日連続。ただ、夜になって弱まりだしたから明日にはやむだろう。

 今日まで本部からの連絡はない。ただ、逆探知も見ていないから、まだ余裕はあるだろう。

 もう、誰も奪わせない。絶対に全員で逃げるんだ。


9月21日 脱出決行日

 昨日の予測通り晴れ。171日ぶりの晴れになる。

 今日は朝に日記を書いている。

 逃げきったらもう書く必要がなくなってしまうから。

 羽や尻尾を合羽に包んだ子供たちをついさっき送り出した。私はこれからを終わらせてから追うことになっている。


イワンおかえり


ごめんね

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