第6話

夏休み前のテストが終わったころだった。その日も真夏の太陽が、熱く容赦なくむき出しのグランドの土をジリジリと焼いていた。部活動でグランドをテニスボールを追いかけて駆けていったとき、グラウンドの隅の一本の木の木陰。慎吾は一人で寝そべってほんをよんでいた。

「大野くん」

「なんだよ、真知子か、どうしたんだよ」

「何してるの、こんなとこで」

「見りゃ分かるだろ、勉強だよ過去問」

「こんなとこで」

「どこでもいいだろ、俺の勝手」

「ねえ、なんならさ勉強付き合ってあげる?。部活のあと時間ある?」

「時間?、勉強の時間ならあるよ。部活どころじゃないし」

「ふ~ん、勉強熱心ね」

「なんだ、おまえなめてんの?」

慎吾が持っていた参考書を胸に置くと、真知子の顔を見上げる。

テニスのスコートから真知子の足が伸びていた。

「なにそれ、違うわよ。一緒に勉強しないっていってるの」

「どういう風の吹き回しだ?」

「いやねえ、図書館で勉強つき合わない?」

「ああ、勉強ならいいよ」

「じゃあ、終わったら部室の前で待ってて」

「ああ、わかった」そのとき慎吾の視線が真知子の足に降りてきたと。

「何よ、どこみてんのよ」

決してきれいな足ではないほうだ。日焼けで黒く、育ち盛りの足はむっくりしていた。

「ちぇ、みてねえよ、馬鹿にすんな」というと、ふたたび本に目を戻した。

「何してんのよ、ボール、ボール」とどこからか声がした。

「ごめん、今持ってく」そういうと再びコートに戻る真知子だった。



やがて部活動も終わり部室に引き上げる部員たち。真知子が更衣室で着替えていると、郁や他の部員たちが更衣室に入ってくる。

「真知、さっき何話してたの?、大野くんと」

「なにって、何もよ」

「嘘おっしゃい、待ってるわよ。早くいってあげたら」「デートの約束でしょ」

「違うわよ、そんなじゃないわよ」

「どうだかねぇ?」

「図書館で勉強よ」

「なんの勉強だか?」と、どこからか冷やかす声が飛ぶ。するとひときわ高い笑い声がした。

「じゃあね、お先に」というと、更衣室の扉を開けた。


慎吾は校舎の玄関前で待っていた。真知子は靴を履き、慎吾の姿を見つけるとき「ごめん、待たせた」と言って、慎吾の隣に並ぶと、「じゃあ、行きましょう?」と言った。

こうして図書館に行った二人は、自主室でふたり椅子を並べるのだった。やがて閉館のチャイムが鳴り、陽も傾き落ち始めた頃、図書館に隣接した公園を散歩するふたりだった。木々のおい茂った公園の片隅の木陰のベンチに座ると。向かい合うようにして並んで座った二人は他愛もない話をしようとしたが、すぐにそれも終わると、所在なげに図書館で借りた本を読むでもなく、所在もなげにページをめくろうとしたとき。慎吾の手が真知子の手をとった。

「なあ」

「え、なによ」と答えようと顔をあげようとしたときだった。慎吾の手が真知子のからだをぐっと引き寄せた。慎吾の顔がすぐ真近にあるのを感じた。

「ねえ、キスしよう」と、真知子は言った。

「いいのかよ」

真知子は黙って慎吾の目を見る。慎吾の喉奥がゴクリとなった気がした。

慎吾もそのつもりだったのだろう、息づかいも感じるほど顔が近づいてくると、慎吾の厚ぼったく濡れて照った唇がゆっくりと真知子の口唇を塞いだ。更に慎吾の唇はなめくじのように前後に這うと、真知子の唇を優しく噛むように吸った。それだけで真知子は背中からゾクゾクと熱いものがこみ上げるものを感じ頭の中が白くなった。やがて慎吾の唇がゆっくりとはなれると、慎吾は濡れた瞳で真知子の瞳を見つめた。律子との予行演習のときとはまるで違ったときめく感覚に、おもわず、アッと思わず声が出そうに感じる真知子だった。こうして、真知子のファーストキスは終わった。慎吾の顔が離れてゆくとき、慎吾の手が真知子の胸におかれているのを今になって理解した。真知子の部屋にあるレディースコミックの漫画の主人公がうっとりとしたとろけるような感覚がわかるような気がした。


その夜、真知子は律子に電話しようと思ってやめた。慎吾とのファーストキスを思い出してその晩、布団の中で一人でシテいた。下着の中に手を滑り込ませると、自身の破れ目に沿って指を上下に撫でた。真知子のそこはすでにしっとりと濡れていた。あのとき真知子の胸におかれた慎吾の手を思い出すと、真知子の指はみつのように濡れた割れ目の奥、蜜に溢れた壺に指を添わせるると、左の手のひらはそっと律子のまだまだ膨らみかけた胸の膨らみをそっと揉んだ。真知子は頭までかぶった布団の中、ふーっと息を漏らした。真知子は頭の中で慎吾に抱かれる想像をしていた。慎吾に乳房を揉みしだかれながら、真知子の蜜壺に慎吾のものがあてがわれるとゆっくりと押し入ってくる。想像の中で真知子は何度も何度も慎吾に抱かれた。そのとき、ピクッと震えるような刺激を感じて足の指先まで快感の波が広がり、おもわず息がもれた。


翌朝、学校に通じる商店街に律子を見つけると走って追いかけた。

「おはよー」と眞知子が声をかける。

おはよ、と律子が答える。「今日は遅かったじゃない」

「そう?」と眞知子はごまかしながら答えた。ほんとうは、昨日の慎吾とのキスのことを律子に打ち明けたかったのだけどやめた。そして、昨日の夜も、今日の朝っぱらから、アレをしてきて遅れたのだ。すでに昨日からセックスの想像ことで頭がいっぱいだったのだ。律子にキスのことを打ち明けたいと思う反面、もんもんとする性欲に自分は身体がおかしいのではないかという不安に思う自分がいた。



結局、律子に慎吾とのキスのことを言えたのは夏休みに入ったある日の日曜日だった。

その日、律子や慎吾と同じテニス部の部員仲間で卒業生を送り出すおもいでに皆で海に遊びに行くことになった。電車とバスを乗り継いで2時間ほどの、小さな鄙びた海辺の街で、テニス部員3年生、2年生のみ8人ほどだった。部員の皆と乗った電車の中で眞知子は律子に、慎吾と交わしたキスのことを言った。皆に聞かれるのが恥ずかしかった真知子は皆が談笑に興じる4人掛けのボックス席から離れ、律子と2人扉の前に並んで立っていた。

「へえ、ついに。で、どうだったの?」さすがの律子も興味深々といった風で聞いてきた。

「すごくよかった。それはもう身体がしびれるような甘い感じで、もう頭だとろけそうな。それで…」

「うん、それで。律子が覗き込むようにして顔をちかづける。

「なんかね、体の奥、子宮が…」

「へえ、子宮が!。すごいね、1回のキスでそこまで感じちゃつた?」

「うん」と真知子はわざと大袈裟に言ってみせた。さすがにその晩した自慰のことはとても言い出せなかったが。

「カップル誕生か、いいな真知子は」

「律子も作ったら、彼氏」

「彼氏か、無理だな」

「それで、その後の進展は?」

「それは…」

「それは…、まだ」

「卒業するまでにしちゃえば?」と、律子が目配せをした。

「ええ、だって…そこまでは」

その小さな海辺の街についたのは昼前だった。小さな港の鄙びた感じの食堂での早めの昼食はプチ宴会の風をていした。

卒業する3年生を囲んですわる。律子が、ほらほらほら、といって、慎吾の隣を明けさせようとする。

太陽と暑さ、唸っている扇風機、時折吹く風に磯の香りがした。安物の座卓に安っぽいビニールクロス。当たり前のような料理と水が私達の前にあった愚にもつかない馬鹿騒ぎと他愛のないお喋りが永遠に続くかのように思えた。こうして短い夏は過ぎていき、慎吾たちは卒業を迎えるのだということを思った。


皆で歩く堤防沿いの道。皆がわざと気を利かせて、いつの間にか皆と遠く離れていた。

慎吾と真知子は、他愛もない冗談や学校のことなどを話ながら肩を並べ歩いた。堤防に登る階段があり、なんとなしに階段を登ると岩や小石ばかりの海岸に出た。

「なんでこんなとこ来たんだろうね。誰なんだろうここに来ようと行ったの?」

慎吾はこれに答えず、岩の上を歩いていく。

「ねえ、どこまで行くのよ。ああ、私こんなとこより遊園地とかのほうがよかったな」

すると急に慎吾は立ち止まると海を見つめるようにして座った。少し季節の外れた海岸には二人の他に人影もなかった。他のみんなはどこにいるのだろうか?。ふとそんなことも思いながら、真知子は慎吾の隣に並んで腰を下ろした。風もあまりなくときより吹く風が真知子の方にかかった髪を揺らした。海はきらめき、まぶしげに慎吾の顔を見た。真知子は沈黙になるのを恐れるように他愛もないことを喋り続けた。

「どう、受験勉強は?、すすんでる?」

「勉強もしないで本を読んでるよ」

「きみは、もう進路決めた?。行くんだろう大学」

「もち、大学は行くよ。親もうるさいし。いい大学に行かないと許してもらえないんだ」「…ま、他にやりたいこともないしね、とりあえず大学には行かないとね」

「有名大学?」

「そう。医学部?」

「医学部目指してるのかよ」

「ううん、そうじゃないの。お母さんが入れさせたいと思ってるだけ。何を学びたいとか、何をしたいとかあるわけじゃないから。とりあえず母親を納得させないと」

「親のために大学行くのかよ」

「悪い?」

「悪か無いけどよ。そんでいいのかよ」

「う~ん、わかんない」

「人形の家という小説知ってる?」

「名前だけは?、読んだことない。どういうのだっけ?」

「いや、もういい」

「なんのこと?。ねえ、何が言いたいのよ」

「だからもういいって言ってるだろ」

「…。慎吾はどこの大学行くの?。もうすぐ願書も出さないといけないでしょ?」

「獣医学部」

「獣医学部か。どこの?」

「東京。あまりこっちの大学には獣医学部はあまりないんだ」

「いいな、慎吾は学びたいものとかあって」

「でも無理だろうな。俺、あんまり頭良くないし、お前と違って。かといって浪人するほど家に余裕もないしな」

「そんなことないよ、今から頑張ればきっと受かるよ」

「よせよ、気休めいうの」

「気休めじゃないよ。すごいな、私なんか何がやりいたいというのもないし。そういうの、一番困るって。先生も言ってた」

「ねえ、本ってどんなの読んでるの?。やっぱり動物の?。私も読んでみようかな?」

「な、もし俺が東京行ったらどうする」

「私も東京に行くよ」

「いいのかよ、親は?。許すのかよ」

「う~ん、わからない。でも、親元離れないと大学卒業する頃には結婚相手見つけられてきそうで嫌なんだ」

「で、大学はもう考えてる?」

「いいじゃないか。それも。あんがい医者や公務員だったりするぜ」

「いや、そうしかねない、というだけだし。決まってるわけじゃないし。慎吾はそれでもいいの」

「いいというか、そういうのも悪くはないという意味だよ。玉の輿ってのも悪くないというだけ。誤解すんなよ」

「おーい、慎吾、おーい、真知子」遠くから名前を呼ぶ声が聞こえた。

「お前も東京に来いよな」

「うん」と短く答える真知子だった。

慎吾は立ち上がると、声のする方へ歩きだし堤防を登っていった。真知子も急いで後を追った。

「なんだよ、どこ行ってたんだよ。ほら花火買ってきたぜ」

「なんだお前ら、よろしくやってたんじゃないだろうな」

「ちげーよ、そんなんじゃねぇよ」

「あ、眞知子ったら顔赤くしてる」

港の近くの歩いて5,6分の商店街の雑貨屋に花火が売られていた。2年生の男子が花火を買ってきていた。

「やろうぜ花火」「賛成」みんなは堤防を降りると花火大会が始まった。家に帰るバスの時間を気にするものはいないかのように思えた。真知子は、いつまでもこうした時間が続けばいいのにと思った。


それでも日が傾きかけると帰りのバスの時間を気にする女子生徒がでてくると、あっけなく花火大会は終わった。

バスと電車を乗り継ぎ真知子たちの住む街についたのは陽が落ちてからだった。


電車がホームに着き、改札をくぐった皆は思い思いに帰っていく。

「なあ、俺の家寄ってかないか?」と慎吾が言った。

「どこか、乱暴な、獣めいた光が一瞬光り、真知子の心は本能的にたじろぎ、後ずさりする気持ちを感じた。

「ご飯食べていきなよ?」

「いいの。親がいるんだよね?」

「あたり前じゃないか?。紹介したいんだよ、真知子を」

すっかりいつもの優しい涼し気な表情に戻った慎吾は「行こうよ?」

若者らしい素直さで言った。

慎吾の家の灯りが見えてきたとき、視線を感じて慎吾の顔をみあげた。慎吾の視線は真知子の顔を滑り降りると大きく開いた真知子の胸元に一瞬止まった。異性を、男を感じさせる目だと思った。

「どこ見てんのよ」

「なあ、おまえ綺麗になったな」慎吾はふっと笑っていった。

「嘘ばっかり、お世辞言っても何もあげないわよ」

「お世辞じゃねぇよ」というと、顔を前に戻すと黙って前を進んだ、真知子は慎吾の背中を追うように歩を進めた。


二人は肩を並べるようにして慎吾の家の門をくぐっていった。玄関の扉を開けると「おかえり」という女の人の声が聞こえた。

玄関を上がると、奥から慎吾のお母さんができてきた。

「あら、お客さん?。どなた?」

「桑畑真知子さん、俺と同じ部活の1年後輩」と慎吾は言った。

「はじめまして、桑畑真知子といいます」と真知子は言った。

「あ、そう、慎吾の母です」

「なんだ、慎吾、お友達連れてくるなら言っておいてくれればいいのに」

「夕飯はまだ?、今準備してるところ。召し上がっていってもらったら」

「いいよ、そんなの」。そう言うと、慎吾は「こいよ」とだけ短く言うと階段を登っていった。

部屋に入ると、「座れよ」と言った。男の部屋にしては意外と綺麗にしていると、真知子は思った。「空いてるとこに座ってくれる」というと、慎吾は机の引き出しを開けるとタバコの箱を取り出しながら言った。問題集や参考書が床にらつぜんと置かれていた。

「もう少し片付けとくんだったな」「俺夏休み終わったら予備校の進学講座に通おうと思うんだ、部活にもでれなくなる」

「え、そうなんだ。タバコ吸うんだね?」真知子はわざとはぐらかすように言った。

「あまり会えなくなる?」

「ああ、追い込みかけて少しは勉強しないとな」

「獣医学部受かるといいね、きっと受かるよ」

「そううまく行かないよ」

「そうかな」

彼は静かに息を吸い、吸っていたタバコの煙を静かに吐くと言った、「東京の滑り止めには受かればと思ってる」

「弱気になっちゃ駄目よ」何気なく言ったつもりだったが、真知子は隣に座る慎吾の目が一瞬歪み、険しい目をしたのを感じた。

その時ドアをノックする音がして、彼の母親が飲み物を運んできた。

「慎吾、やめなさい」

「ああ、ごめん」とバツの悪そうな顔をするとすぐに灰皿にタバコを押し付けた。

「ごめんなさいね、真知子さん、不良なんだから」

「そんなことないです」

「馬鹿なんだから、この子は。3年だというのに、先生に見つかったら停学だよ」

「バレなきゃいいんだろ、みんなやってるよ、こんなこと」

「馬鹿なこというんじゃないよ」と言いながら、持ってきた飲み物をテーブルに置くと、部屋を出ていこうとした。

「ごめん、だからもうやめるよ」

「ほんとだよ、いいね」というと、慎吾の母親は部屋を出ていった。

「ねえ、学校で会えなくても連絡くれればすぐに会えるからさ。今日みたいに」

「あ、ああ」

「おまえ、俺のことどう思ってる」

「どうって?」

「好きか?、俺のこと」

「うん、好きだよ」

そう答えたものの、はっきりとはわからなかった。律子は付き合ってれば分かるはずだというけれど、追いかければ逃げるように確信が持てないでいたのだった。

そうして、一瞬、下を向いて、ふたたび慎吾の顔を見たとき、慎吾の目が、獣のように、射るように、ぎらついて光るのを見た。

真知子は、怯えを感じながら、ぎこちなく微笑んでみせた。「どうしたの?」。彼の手が伸び、慎吾の顔がすぐ間近にせまってきた。顔を赤くし、鼻の穴が大きく開いた気がしたとき、大きな影替えたいのしれない化け物のようにうごめくと、大きく覆いかぶさってきた。

とっさに横向きに立ち上がろうと思ったが遅かった。真知子の腕は強い力で組みひしがれ、慎吾の顔をすぐ間近に迫っていた。一瞬何が起こっているのかわからなかった。真知子の体は仰向けに、床の畳に押し付けられ。身動き取れないように体は押さえ込まれていた。暖房の効いた部屋は、慎吾の顔は汗かくみたいにほてらせていた。

「どうして、やめて」と言おうとしたとき、真知子の口を塞ぐように、無理やりキスをしようと、慎吾の唇が真知子の口に被さり、勢い余って歯と歯がぶつかる音がした。

彼の唇が無理やり真知子の唇をすおうとしていたとき、慎吾の右手は真知子の胸を探った、真知子が押しのけようとしたとき、慎吾の手は素早くセーターの下から手を潜り込ませてきた。ますます強い力で唇が押し込まれようとしたとき、彼の右手は下着の上から眞知子の胸を探ると、まだ膨らみかけの、小さな胸は、まるで蕾をへし折らんかのような手で強引に胸を揉んだ。

「やめて、痛いよ」真知子は小さく叫んだ。

足をばたつかせて逃れようとしても無駄だった、鉛のように重い塊が乗っている、と思った。

怒り、悲しみ、恐怖、それらがいっぺんに襲ってきて、真知子の口から嗚咽が漏れてきた。口をふさごうとしても無駄だった。彼が私になにかしようとしている。馬鹿げている、汚らわしい、と思った。

しかし彼の行為は明白だった。胸を弄っていた手は下に伸び、真知子のスカートに手がかかろうとしたとき、真知子は思いっきり腕を伸ばして押しのけるようにすると、真知子の底知れない恐怖は悲鳴に変わった。驚くほどの金切り声だった。その瞬間、真知子の体は思いっきり軽くなった。

彼は体を起こしたのだ。

真知子は後ずさるようにして体を起こすと言った。

「ひどい」

「親でも何でも呼べよ」と彼はいった。

「……………」

「すきなんだろ、だったらいいじゃないか」

「だからってこんなこと…」

「ごめん」

「そんなこと、私だって東京の大学受ける」「そしたら…」

真知子は体を丸めるようにすると、つぶやくように言った。

「ごめん、ごめんな、悪かった。そんなつもりじゃなかった…」

「私だって、慎吾のこと好きだよ。でもこんなのはやだよ」

「……帰る」真知子は絞り出すようにいうと、急いで服を整えると声でようやくいった。

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