第4話
律子の家は、不動産屋を経営していた。駅の近くに店舗を構え、従業員も何人か雇う規模だった。父は当然、母も時間が有る限りお店に顔を出し、従業員共々働いていた。
「うちは小さな会社だからね、家族総出じゃないと会社も回らないのよ」
律子は嫌味でもなく自然とそんな言葉が口に出た、そんな言葉も嫌味に聞こえないのは彼女の人当たりの良さかもしれないと、真知子は思った。
律子の家には数えかぞえないほど何度も遊びにいった、お手伝いさんこそいなかったものの、総檜造りの、国産の天然木なんなんだよと律子からは聞かされた、2階建ての家に、芝生の庭。背の高い壁。絵に描いたようなセレブのうちじゃんと、真知子は思った。
真知子自身決して貧しい家庭ではなく、裕福な部類の家庭であったが、転勤族の家庭であったため家は常に借家のマンションすまいであった。初めて律子の家に行ったとき心底羨ましいと思ったのを覚えていた。
あれは夏休みの直前の頃だった。いつものように律子を含む、いつもつるんで帰る藤沢郁、佐藤弘美、仲のいい友達との下校時だった。
「ねえ、真知ってさ、大野とつきあってるんだって?」と郁。
「やあねぇ、つきあってなんか無いわよ」と真知子は否定してみせた。
「へ~、やっぱり、そうなんだ」
「なによ、ちがうわよ」
「え~、隠したって無駄よ、何度か、一緒にいるのを見たって子がいるんだからね?」と郁がいった。
「私も見ちゃった。公園のベンチでいちゃいちゃしてた」と弘美。
「そうね、もう白状なさい」と律子。
皆が面白がるようにはやし立てた。
「もう、やめてよ、律子まで」真知子はふくれてみせた。
「みんな真知子のことが羨ましいの。彼氏のいない子だっているんだから」
「あ~ん、いいな、私も彼氏欲しい!」と弘美がおどけるように言う。
「で、どこまで行ったの?」と都
「どこって?」
「また、とぼけちやって。キスはしたの?、それともペッティング?、ひょっとして、もう経験済み?」
「バカね、そんなわけないでしょ」と眞知子はふくれてみせた。
「隠さなくてもいいの?、誰も言いふらしたりなんかしないから」と律子。
「だから、そんなんじゃないの。もう知らない」
「あ、ふくれた。」と郁が笑った。
「ほんとにないんだ?」と弘美。
「もう、バカバカしい」
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