よーんわめ
初魔法の余韻に浸ること暫く。彼女は自身に内在する魔力量について考えていた。
そこで次に《水生成》を試そうと考えた。飲み水にしたかったためである。もし《水生成》に成功したならば、第1の目標、飲み水の確保は達成となる。
では、やってみよう。
魔導書を捲り、《水生成》のページを開く。詠唱は先程の《火生成》と殆ど同じであり、そこに時間は掛からなかった。
「私が命ずる 魔素を糧に この手に水を──《水生成》」
詠唱文句を呟き、力を込める。すると、《火生成》を使った時と同じくらいの魔力が体から抜け落ち指に収束する。そのまま水をイメージして更に力を込めると、水の塊が指先に現れた。直径10センチ程度の小さな水球だ。
「ふおぉぉぉっ!!......びしょ濡れーっ!」
顔の前に掲げて口に入れようとした、瞬間に限界を迎えてしまった。火と違い消えることはなく、シャボン玉が弾けるように目の前で破裂。彼女の顔面を水浸しにした。
「ん、冷たい水だ......きんっきんに冷えてやがる」
水瓶に入れてある水はどちらかと言うと温い。しかし、彼女が作った水は冷蔵庫で冷やしていたのでは、と疑う程に冷たかったのだ。飲み水としては冷たい方が好みなので、これはありがたかった。
さて、残魔力量が2割となってしまい、かなりの脱力を味わっている中、少し自分の魔法について彼女は考える。これでどうやら、火と水に適性があることは確認できた。
しかし、自分の魔法色は「白」である。「赤」や「青」ではないのだ。ここから推測、思考をしてみる。
まず彼女は前世の記憶から、物理のお勉強を思い出す。力学がどうとか、熱やら電子やらと彼女を苦しめた嫌な思い出。中々好きになれなかった教科であるが、彼女は自称理系女子として物理を選択していたのだ。
その物理の分野の中に「波動」というものが存在する。その「波動」における「光」を使った実験に、プリズムがあった。あの、光を入射すると波長の違いから色が分かれる、といったものがあったはずだ。簡単に言えば虹である。あれも太陽光が空気中の水をレンズとしてどーたらこーたらなって、光が赤橙黄緑青藍紫の7色に見えるというもの。
そしてプリズムの実験で使われる光とは、白色光を指している。太陽光も、何色かと尋ねられたら「白」と答える人が多いはずだ。色を全て合わせた色。それこそが「白」なのではないか、と彼女は考えた。
次に思い浮かべることは、色の三原色である。あの中心、三色が重なる部分は黒だった。白ではなく黒ではあるが、あれも複数色使うものとして頭の片隅に置いておく事にする。
色の三原色と言えば──正確に言えば少し違うが──赤青黄。これらが全て交わる箇所こそが黒となる。少女が現在使えるのは火と水。このまま「黄」の適正があり、光魔法を使うことが出来たならば。もしかしたら「黒」の適正が芽生えるかもしれない。そこまで単純なものでは無いだろうが、可能性は否定できないだろう。
彼女の予想が的中しているか判明させるには、彼女が魔法を使うしかない。しかし今は魔力が足りず使えない。
「......考えても仕方ない。眠いし寝るか」
魔力消費による倦怠感。これが5歳児の体には辛かった。上瞼と下瞼がキスをし始めていたのだ。これはまずいと急いでタオルを探す。古びたタンスの中からこれまた古びたタオルを見つけると、びしょびしょになった顔をそのタオルで拭った。それから倒れるように寝床へ潜り、早めの昼寝を開始したのであった。
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