第80話 遅刻

遅刻しそうになり、慌てて家を出る。


こういうとき、乗ろうとする電車も、ナゼか時間より遅れるし、


速度もゆっくりのように感じる。


走っていても、何だか足が重くて前にすすまない。


時計の針だけは、やたらと早く回っていく。


頭の中では、イイワケの文言ばかり思い浮かぶ。


途中で迷子をみつけて……。電車で事故があって……。


途中でお腹が痛くなって、トイレに入っていて……。


どれもイイワケとしては定番だけれど、それだけに嘘くさい。


そんなことを考えているうち、約束の場所についた。


でも、そこには誰もいなかった。


だって、その時間にそこに行くって決めたのは、私だから。


私しか知らないことだから。


私は一人で、焦ってそこまで行って、そして一人で帰る。


そういう遊びである。

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