第66話 お化け屋敷

私はお化け屋敷で働いている。


かなり怖い、と評判で、特殊メイクをしたゾンビに


追いかけられたり、暗闇の中で急にお化けの写真が浮かび上がったり。


とにかく悲鳴が絶えない、と有名だった。


本当のお化けがいるのでは……と噂する人もいるぐらいだ。


しかし私は脅かす側ではない。


あまりの怖さに、リタイアする人がでたら、


そのとき屋外へと誘導するために私がいる。


でも最近、脅す役が怠慢なのか? それとも現代人がお化けに


馴れたのか、私の仕事が少なくなった。


ある日、少女があまりに怖かったのか、泣きながら私のところにやってきた。


でも、私は仕事をサボった。


泣き叫ぶ少女に、もう逃げ場はなかった。


リタイアによる脱出口の扉が開かなかったら……。


それに、本当にお化けがいるんだよ。


だって私が、ずっと扉の前に立って、開ける係なのだから。


少女は、本当の幽霊の前で泣いているんだよ。

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