第36話 薄暮
薄暮というのは、物悲しい気分にさせる。
そういうとき窓の外をみると、うっすらと窓に自分の姿が映り、
向こうにある景色と重なってみえる。
もし幽霊がみえるとしたら、
こうやってうっすらとした姿で見えるんだろうな、と感じる。
もし私が幽霊になったら、きっとこうして誰にも気づいてもらえず、
誰に声をかけても、何も伝わらず、
うっすらとした姿で街に立って、まるでちがう世界にいるかの
ように、一人寂しくいるんだ。
嫌だな……。
そろそろお別れの儀式も終わり、顔の辺りに開いている窓も閉じられた。
いつまでこの肉体にいられるか分からないけれど、体が焼かれたら、
いよいよ私は薄暮の中で、窓に映る自分のように、うっすらとした姿で
立ち尽くすことになるだろう。
でも、あれ? ここでは火葬場で焼かないの?
土葬するの? そうなったら、私はいつこの肉体からでるの?
あぁ、だから薄暮の中で、お別れの儀式だったのか……。
夜に埋めるために。私が幽霊になれる日はいつかしら……。
何だか、物悲しい気分にさせられる。
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