第28話 運転

車を運転していると、不思議なことに遭遇することがある。


夜中、眠い目をこすりながら運転していると、


いつの間にか自宅のベッドで眠っていることがある。


どの道を、どうやって走ったのかも憶えていない。


ただ、しっかりと家まで帰りついているのだ。


お酒も、薬もやっていないのに……。


でも、そういうときは大抵、どこかを擦っている。


どこにぶつけたのかも憶えていない。


もしかしたら、人を撥ねた跡なのかもしれない。


私が眠い目をこすって眠気を覚ますように、


車はボディを擦られると、目を覚ます。


そして私を運転して、車が家まで帰ってくるのだ。


でもある日、夜中にうとうとしながら運転していると、


激しい衝撃音で目が覚めた。もう車は動かない。


擦るというレベルでなく、壊れてしまった。


私は怪我もなかったけれど、家まで帰る道のりを忘れた。


車を運転していないと、不思議なことにも遭遇できない。

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