第21話 お風呂

お風呂に入るのが、私は怖い。


あの狭い空間で、しかも目を閉じている時間も長い。


もし後ろに誰か立っていたら……。


それが人でなかったら……。


そんなことを考えると、落ち着いていられない。


しかも、水をつかう場だ。


水と霊的なものは結び付けられやすい。


川岸に生える柳と、幽霊はセットで描かれたぐらいだ。


水の流れる音が、周りの音をかき消す。


湯船に浸かっているときも、水の中から何かでてくるのでは?


そんな心配をしていたら、体もだいぶ温まったし、


お風呂からでるタイミングとなった。


でも、そこで安心しているのではないだろうか?


お風呂とは、汚れを落とすところ、穢れを払うところ。


そこには念が溜まっている。


水には流れていかないものがある。


あなたがお風呂から上がった後、お風呂場から


音が聞こえてくることがないだろうか?


それは、あなたと違う人がお風呂に入っているのかもしれない。


そのとき、お風呂場をのぞきに行かない方がいい。


私は、遭遇した。


あの狭い空間で、私は、私と遭遇した。向こうも驚いていたが、


私はもっと驚いて、気を失ってしまった。


だから、私はお風呂が怖い。

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