第22話 移植

私は臓器移植をした。


その臓器を提供してくれた母は、隣のベッドで眠っている。


母が提供に同意したのは、


「私の方が長く生きるだろうから……」


「娘に自分の臓器を与えるなんて当たり前」


「それが母親としての務め」だったそうだ。


でも、最近の研究結果によると、人間の肉体は


各部位、それこそ脂肪でさえ情報伝達物質やホルモンなどを


発しており、肉体の中で、臓器間でもコミュニケーションを


とっているのだそうだ。


そして、移植された後で食の好みが変わったり、


性格が変わったりすることもあるそうだけれど、


それもそうした臓器間のコミュニケーションの結果と考えると


理解もできるのだろう。


私は、母親から提供をうけたから、


母親の性格、行動を受け継ぐだけだ。


さぁ、今日から母親を虐待しよう。


高齢の母親を、大人の私が責める番になったのだ。


母親の性格、行動を受け継いだのだから……。

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