第5話 道

この道は、暗い。


街灯も少なく、昔から痴漢がでたり、不審者がいたり、


あまり治安もよくないとされていた。


でも、この道が一番の近道でもあった。


だから時おり、家に早く帰りたいときにつかう。


その日も、早く帰ろうと思ってその道をつかった。


でも、すぐに後悔する。


誰かに見られているような気がする……。


周りにほとんど家もなく、人気もないはずなのに……。


不自然にならないよう、歩く速度を上げる。


早くここを通り抜けたい。でも、逃げていると


思われたら、襲ってくるかもしれない。


さっきは聞こえなかった、足音が聞こえるようになった。


後ろに誰かいるのは確実だ……。


ここは、勇気を出してふり返ることにした。


変質者だったら全力で逃げる。そう覚悟を決めた。


ふり返った。そこには、私がいた……。


私が驚いた顔で、私のことをみている。


私はいつの間にか、自分自身を追い越していたようだ。


置いていかれた肉体は、思わずこう言った。


「先に帰っていていいよ」


私は先に、家に帰ることにした。


きっと体はもう私のところに戻ってこないだろうから。

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