第3話 友達・カニオの事
さて……俺はどこまで話したんだっけ。忘れっちまったなあ、近頃、頭が働かねえんだわ。俺ももう、二年、生きてっからな。……ええ? まだ若いって? 馬鹿言うなよ、もうヘロヘロのジジイさ。嘘だけどな。
ああ、何か元気無いって? そりゃあ……そうだな。カニオの奴、希望の里に戻っちまったんだよ。ああ、お前も、あすこから来たんだっけ。ところでよ、お前、ほぼヒトだよな。母親は? ……ヒトか。で、父親が、奴隷なのか。ああ、もういい、聞きたく無いぜ。大体、そういうのはアレなんだよ。もういいぜ。
で、カニオだよ。あいつ、遺伝子に異常があってよ、
辛い事ばっかあるとよ、人間って、脳が壊れっちまうんだよな。ああ、こういうのも、カニオが教えてくれたんだよ。アイツ、本が好きでさ。「どんなに落ちぶれても、本があれば人間は、どうにか自尊心を保てるんだよ」カニオはそう、言ってたな……話が逸れちまった。ああ、それでよ。脳がぶっ壊れる前に、辛い記憶を消すんだよ。で、別の日常とすり替えるのさ。そして健康な人間の、いっちょ上がりってわけさ。……だからよ、今頃カニオの奴、俺の事なんか忘れて、窓際の木のベンチかどっかで本でも読んでやがるんだぜ。二年前、アイツが俺を連れて、希望の
あー、何かさすがに、キツイかもしれん。俺、こんな豚野郎だしよ、道端で交尾しちゃうような。……おい、何赤くなってんだよ、こいつ。まあいいや。でな、そんな俺でも、カニオの事は、何だろな。奴、俺の事、友達って言ってたんだよ。まあ、子豚だった俺に名前つけて……そう、トンカツ。トンカツってな……あいつ、本沢山読んで知識が豊富でよ、頭いいのかと思いきや、あんま理解して無いんだよな、色々。多分、学校行って無えからだろ。ああいうのはさ、独学してもダメなんだよ。好きな情報だけ選んで、知識が虫食いみたいになるからよ。って、カニオが言ってたぜ。あいつ、自分がソレだとは思って無かったみてえだけど。基本、馬鹿なんだよ。かわいそうな奴さ……だめだ。もう今日は、話したくねえ。これ以上何か言ったら、余計な事まで口走りそうだぜ。だからなあ、もう行け。頼むから。
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