第38話ルーカスの部屋で
それにしても!城って広いのね。
これ勤めてるメイドさん達は一日1万歩とか城内だけで歩いてそうだわ。
「ねえ。迷わないの?」
素朴な疑問。
「迷う?あー。子供の頃は探検に近かったな。」
「やっぱりそうよね。」
入った事ない部屋とかありそうだ。
西洋の城も日本のお城みたいに幾つかの別棟があるみたいでルーカスの部屋は少し離れにあった。
「王子達って全員、離れに住むの?」
「そうだな。プライバシーって言うやつだな!!」
そかそか。お客様も多いだろうし。お客様の規模も国賓よね。
「此処だ!!さあ、どうぞ。」
別棟に入ってすぐの茶色の豪華な扉をルーカスは開けてどうぞっと紳士的に入れてくれた。
「お邪魔しまーす!」
入って直ぐに玄関の様な作りになっていた。
「靴は脱いでくれ。」
部屋で靴脱げるのってやっぱり楽よねぇ。有難いわ。
靴を脱いでフカフカスリッパに履き替える。
「わぁー!!」
高級ホテルの最上階VIPルーム?いや高級マンションって感じだ。
外観は城だったのに中の部屋の現代的でお洒落な事!
入ると直ぐにそれは広いリビングルームとなっていた。
奥にはキッチンもあるし。
何インチ?ってデカいテレビにオーディオセット。
囲む様な革張りソファ。
「これは良い所にお住いで。」
「あはは!アリスはいちいち面白い。」
ルーカスはゲラゲラ笑いながらソファに座る様に促した。
寝室は別になってないのか。キッチンと逆側に衝立の奥にドデカいベッドがチラリと見えた。
ん?・・・ん??
衝立の奥のベッドの上の壁に模様が。って言うか紋章が描かれていた。
「どうかしたか?」
「へ?あー。奥が寝室なのねって思って。うん。」
「そうだが?気になるか?」
「いやいや。大丈夫です!」
ニヤっと不敵な笑みをされて慌ててベッドから視線を外した。
ルーカスは食事を運ぶ様に携帯で電話をしてくれている。
あの紋章・・・。
私はそっと胸に手を当てた。多分、これに似てる。
私のずっと子供の頃から身に付けて着たお守りのネックレス。
何故?!似てるだけ?
暫くたわいも無い話をしていると部屋がノックされた。
「失礼致します。」
メイドさんがいそいそと食事を運んでくれた。
こっ!!これは?!
「寿司?!」
何で?寿司が!!
「驚いたか!プラゲ国人を持て成すのはこれだと先祖代々伝わっているからな!」
「へ?プラゲ?」
クラゲ?プラゲ?プラゲ国ってどこよ?
と思ったけど口に出来なかった。多分、日本?なのよね?
「プラゲ国では寿司はご馳走なのだろう?」
「あっ。はい。そうです。久しぶり過ぎてびっくりしただけよ。」
まさかこんな所でお寿司が出るとは。
「さあ。どうぞ召し上がれ!」
自信満々にルーカスは微笑んで勧めてくれた。
「いただきます!」
お寿司とか本当に久々。
生魚食べる事なんてこの世界では無かったし。
「美味しい!」
新鮮だわ。あー。これはコハダっぽい。
「そうだろう?プラゲ国の客人には寿司、天ぷら、うどん、蕎麦とか?そう習っている。」
私はうんうんと頷いた。
話を上手く聞き出すとどうやらこの世界では日本はプラゲ国って言うのが正解みたいだ。
どっかで聞いた事あるんだけど?プラゲ・・・?
プラゲねえ?多分、テレビよね。
でもゆっくり思い出す暇は無く。
もう、帰ってからにしましょ。
ルーカスも寿司は好きらしく嬉しそうに食べていた。
箸使いも上手い。
「しかし、アリスは珍しいな?先進国プラゲ国に留学する者は多い御時世なのに。態々、我が国に?」
ルーカスは私の顔をまじまじと見てそう言った。
この世界でも日本は発展してるのか。
「うーん。メイクの技術ってプラゲはまだまだよ?」
多分これなら誤魔化せるだろう。
「あー。なるほど。」
そうなのか?とルーカスは納得した様に頷いた。
「我が国もすっかり共通語はボードウェン語、プラゲ語、パルドデア語になってしまったしなあ。アーシェンバードの言葉は訛り扱いだ。」
ルーカスは私の顔を見て苦笑した。
あれ?もしかして?何故言葉が通じるって疑問は解決した!?
そのプラゲ語って日本語は共通語の1つなの?
もしかして皆、日本語を話してくれているのかしら!!
ボードウェンとパルドデアってのが全く不明なのだけれど。
今度、学校の図書館で調べてみようかしら。
謎だらけだけどゲームの世界?だし。日本語が共通語なのかもしれない。
うん!だから言葉の壁は無いのかもしれないという仮説は出来た。
「ご馳走様でした。非常に美味しかったです!」
手を合わせてそう言うとルーカスは満足そうに微笑んだ。
「私もプラゲ食は好きでな!子供の頃に1ヶ月程滞在していた事もある!」
「へー!そうなのね。」
そかそか。彼は最初からプラゲ贔屓なのかもしれない。だから私に興味あるのかも。
国の名前と首都の名前以外の違いは無さそうだ。
私とのお喋りが彼は非常に楽しい様で笑顔が耐えない。勿論、私も楽しい。
そしてついつい本当は聞いてはいけなかっただろう話題をポロっと口にしてしまった。
「ルーカスって婚約はしないの?」
この一言は彼を不機嫌な顔にしてしまった。
しまった・・・。
「ごめんなさい!気にしないで!本当にごめん!」
謝るけれどムスーっとしたまま。
フーっと大きな溜息をついて彼は腕組みをして足も組んだ。
イライラしているわね!!不味いわぁ。
「言うなよ!」
急に彼は少し荒らげた声を出した。
「うん。何?」
聞くとまた溜息をつき彼はこう言った。
「子供の頃にプラゲ国で出会ったんだ。初恋だ。それは可愛い少女だった。」
また溜息を付いた彼は苦笑い。
「お前と同じアリスと言う名前だったなあ。懐かしい。婚約してくれと求婚してネックレスを渡したんだがな。まあ?それっきりだ。残念だが振られたらしい。」
言ってスッキリしたのかクスクスと笑いだした。
「この話は誰にも話した事は無いから言うなよ。まあ、今となってはただ単に恋愛事が面倒なだけだ。」
それは本心では無いのだろう。話題を逸らすかの様に彼はリモコンを手に取りテレビを付けた。
あの・・・。
もしかして。そのアリスって・・・。
自分の中で思い出せそうでハッキリしない記憶がある。
私、このネックレスは初恋の人に貰ったのよ。
その人は?え?
本当にゆっくり1人で考えたくなってきたわ。
ルーカスがテレビを見ながら話しかけるけど頭に入ってこないし。
あっ!そうだ。
「ルーカスって?フルネームはルーカス・アーシェンバードなの?」
「ん?フルネーム?知らなかったのか?」
うんうん。と頷いた。
「ルーカス・サファイア・アーシェンバードだ。8人の王子以来、名前には誕生石を入れる。」
「そっか。そうなのね。」
サッ・・・サファイアって。
記憶がぐるぐる駆け巡る。
ぐるぐる・・・ぐるぐると。
私、子供の頃サファイア王子に会ったことあるー!!!
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