第37話8人の王子の話
「さて。先ずは見たいだろ?8人の王子の実物!」
ルーカスはフフっと自慢げに微笑んだ。
「え?!実物?」
童話の絵だけだと思っていたのに。あるのね?!
「古い写真があるぞ?モノクロだがなあ。何せ大昔だ。カメラが出来た当初くらいか?」
それ程、昔じゃない。大昔では無いわ。この世界の事は解らないけれど日本と置き換えても精々200年?300年?そんなものでは?!
ルーカスの後に着いて行くと図書室風の部屋に案内された。
「凄い本の数ねぇ。」
学校の図書館よりも多いし古そうな本も沢山。
「本だけでは無いがね?えーとアルバムの棚は?っと。」
ルーカスは奥を指して着いてくる様に言った。
本棚丸ごとアルバム棚みたいだ。
「この1番古い。」
そう言って豪華な装飾の本に手を掛けた。
しっかりした作りのアルバムだけどだいぶ傷んでいた。
部屋の1番奥にテーブルと椅子がありそこに彼はそっとアルバムを置いた。
「さあ、見ようか。」
「うんうん!」
学校で見せて貰った童話の挿絵とどう違うのか?
ワクワクしてきたわ。
ルーカスがアルバムの最初のページを開いた。
「これは?」
気品溢れた2人の写真だった。王と王妃よね?これがウィンダイヤモンド?
「これは8人の王子の両親。その当時の国王と王妃だよ。」
「なるほどね。お父さんとお母さん!と言う事は貴方の御先祖様になるのね!」
綺麗な方だわぁ。年はいくつくらいかしら?
白黒って解りにくいわね。
「ダミアン・アーシェンバード王とエリザベス王妃。ちなみにエリザベート学院はこのエリザベス王妃が建てたそうだ。」
とちょっと自慢げにルーカスは微笑んだ。
「そうなのね。この王妃様優しそう。で?8人も産んだのね。凄いわ!」
感心する。
当時は出産も大変な時代だっただろうに。
「相思相愛で王家の歴史では有名。我が国の近隣諸国との国交が密になり同盟国にしたのもこのダミアン王の功績だからなあ。」
なるほどなるほど。
ルーカスは次のページを捲った。
「わー!可愛い!!」
仲良く8人が並んだ写真が貼ってあった。
「8人兄弟ともなると年の差がこうなるわよねぇ。」
子供から大人までって感じ。
「この方がウィンダイヤモンド王。当時は第1王子。」
「あー。挿絵に似てる!」
凄く忠実に描かれていたのが解った。
「まあ。あの話はこの写真のもう数年後の話だな。実は元々はミュージカルだったんだ。」
「えー?ミュージカル?」
それは知らなかった。図書館の司書のお姉さんも言ってなかったしグレースちゃんもそんな話してなかったわね。
「ミュージカルは隣国のボードウェン国からダミアン王への誕生日プレゼントだったらしい。その後、物語になり童話になった。シリーズ化された感じだな。」
ふむふむ。
「えーと。ちょっと待ってろ。」
ルーカスは立ち上がって何かを探しに行った。
そっと次のページを捲ってみる。
おお!!
成長して益々王子達がイケメンに!
良いわねぇ。本当に仲良さそう。
普通は争いとか起こりそうなのに。
「おい!あったぞ!」
ルーカスの手にはまたボロボロの冊子くらいの薄さの本があった。
「ミュージカルの原作だ。触るなよ。」
「触りませんー!」
全く。破いたりしないわよ。
本当、何故か読める字に驚くけれど。
「これが原作と作曲者だな。挿絵画家の名前と。」
指して教えてくれた。
「原作ケビン・バートリー、挿絵がルイス・マッケンジー。作曲がジェファーソン・ボードウェン。この作曲者は国王?!」
「いや?皇太子だったかな?」
楽譜読めないけれど凄いわぁ。
何か心温まる贈り物って感じね!
「知らなかっただろう?」
「うん!だってこの前、童話も初めて読んだのよ!」
この世界自体もまだ良く知らないし。
国の名前も専属メーキャップアーティストになって初めて知ったし。
聞きにくいのよねぇ。本当、色々と知りたいのに。
今日は隣国と仲良しって解った収穫があったわね!
城に来て良かったかもー!
「アリス?嬉しそうだな?」
「そうねぇ。本物見られたし!皆、挿絵みたいに綺麗だったわ。そうだ!お姫様達の写真は?」
見たい見たい!!
「あるぞ。」
ルーカスは私の顔を見てクスクス笑いながらアルバムを捲って行く。
ほら!と見せてくれたツーショットはウィンダイヤモンドとマリーローズ姫だ!ひと目で解っちゃったわ!
「うわぁー!綺麗!」
グレースちゃんも負けないくらい可愛いけれど!
「全員、本当に忠実に描かれてたわ!」
アルバムを見終わって当時のクオリティの高さに感動した。
「だろう?衣装は少し違うが?そこは致し方ないな。」
ルーカスは私の反応が嬉しそうで色々と蘊蓄を語ってくれた。
首都を8つの街にしたのは兄弟仲良くと言う事かららしいとか。
本当に物語の様に他国とも争いがあったとか。
割とこの国に詳しくなれた気がする!
「さて?これからどうする?」
ルーカスがアルバムを棚に戻しながら私に聞いてきた。
「どうするって?」
ルーカスはうーん?と悩んだ顔を見せて
「私の部屋で昼食でもとろうか?」
と言った。
確かにお腹空いた。
「良いの?あまり畏まった物じゃ無くて良いわよ。」
豪華な御飯は気遣いしそうだし。
「では、軽めの昼食にするかな。来い。」
何だかんだと命令口調だけど優しい。
って言うか!
部屋?ルーカスの?!!
わー。ちょっと緊張しちゃう。
図書室を出てまたルーカスに着いて広い城内を見学しながら部屋へ向かった。
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