第39話脳内回想
「アリス!遊ぶぞー!!」
脳内に可愛い子供の声が響いた。
自分で言うのも何だけどあの頃は美少年だったに違いないと思う。
小学校低学年くらいまで女の子に間違えられることが多かった。
そして、何故か男の子の方が好きだなあと思える自我に少し芽生えていた。
確かあれは小学一年生の夏休みだ。
夏休みの間中、私は祖父母の家に預けられていた。
祖父母の家は当時、豪邸町の隅の方ににあった。
うん。ちょっとだけお金持ちだった気がする。
私は・・・豪邸公園でそれは可愛いらしい外国人の男の子と出会ったんだったわ。
カタコトの日本語を話す男の子に声をかけられた。
発音が良過ぎて相手の名前のサファイアしか聞き取れなかった。
「・・・サファイア・・・だ!おまえは?」
「え?あー。えーと。有栖川だよ。」
「アリス?・・・」
うんうん。初日は殆ど会話が成り立たなかったが豪邸町は子供が殆どおらず私達は2人で仲良く遊んだのよね。
それから毎日、本当に毎日飽きもせず2人で遊んだ。
「え?!サファイア君って王子なの?」
「YES!そうだ。」
へー。何処の国だろ?どうりで服装がお坊ちゃんな感じがしてた。
王子だけど子供だから全く気にせず対等に私達は遊び学んだ。
そうだ。毎日遊ぶうちに1ヶ月で当時の私、ボードウェンなのかパルドデアなのか解らないけど言葉を結構覚えたんだ。
そしてサファイア王子も日本語をほぼマスターしていた。
そして・・・。
サファイア王子から自分のネックレスをプレゼントされたんだ。
「・・・・・・ん?プラゲでは何と言うのか?調べて来なかった!まあ良い。やる!」
幾ら言葉を解る様になったと言ってもその単語は理解出来なかった。
ボードウェン語かパルドデア語?で最初話されて。
ぶっきらぼうにそれでいて彼は照れた様な顔で私にネックレスをくれた。
「ありがとう。」
紫色の石の付いた可愛いネックレス。
「大事にしろよ!」
「うん。大事にする!」
でも、翌日からサファイア王子とは会えなくなった。
国に帰ったのかもしれない。
あれは別れの言葉だったのかな?
そう思いつつも夏休みの最後まで待ったなあ・・・。
この詳細を忘れていた原因は夏休み後に子供心に耐えられない事態が起こったからだ。
私の両親は勝手に離婚をし父も母も新しい家庭を築く事になっていて・・・。
「おい!アリス?聞いてるのか?」
「はっ?はいはい!」
ヤバい聞いてなかった。
報道系の番組を見ていて何か質問されたんだけど。
それにしても間違いないわよね?
彼が私の初恋の男の子だ。
良い思い出と嫌な思い出が一気に来たわ・・・。
「やっぱり心ここに在らずだな。気分でも悪いのか?」
ルーカスは私の顔を見て苦笑した。
こんなに育っちゃって。可愛いかったのに。
でも、イケメンには変わりないか。
「そうね。少し頭痛がする。」
本当に頭痛くなって来たわ・・。これ完全にストレス性のものね。
「頭痛か・・・ちょっと待ってろ。薬を取ってくる。」
心配そうな顔をして彼は立ち上がった。
「あっ。大丈夫よ。多分、直ぐに治るわよ。」
私、ちょっと泣きそうだ。
ルーカスは初恋の相手は女の子だと思っている。
私、勝手にこの人はお仲間かもしれないと思い込んでた。
そうか。普通に女性が好きなんだ。
そう思うと急に心がチクッと傷んだ。
私・・・初恋の人に今、失恋したんだ。
あー。別に今のルーカスを好きって訳では無い。多分。
いや、ちょっと良いなと思いつつあった。
グッと涙を堪えた。
泣く。何か本当にヤバい。
「ルーカス。帰るわ。」
「は?帰る?」
不満そうな彼の顔にサファイア王子の面影があった。
「うん。ごめんなさい。」
涙を堪える私の顔は赤かったのだろう。
「大丈夫か?熱あるのか?」
彼は私のおでこにそっと触れた。
「本当に大丈夫だから!!」
ルーカスの手を跳ね除けてしまい益々不機嫌な顔をさせてしまった。
「アリス?お前変だぞ?」
うん。そうかもしれない。
脳が現実を受け入れられ無いでいる。
「また。うん。またゆっくり。今度は当日じゃなくて前もって約束しましょう。」
私の精一杯の作り笑い。
「そうだな。庭園とかも案内したかったんだが。またにするか。」
渋々と言った声でルーカスは頷いてくれた。
城を出てまた高級車に乗ってベイリー家に着くまで放心状態だった。
私の初恋の王子様は本当に王子様でしかも異世界の人だったなんて。
普通!思わないわよ。
そう、このネックレスがこの世界と元の世界を結ぶ鍵なんだ。
そして異世界への扉は豪邸町。
アホな私でも解ってしまった。
ネックレスの話はルーカスに言わない方が良いわよね?
「ただいま。」
「アリスねーさん!お帰りない!!」
グレースちゃんが出迎えてくれて顔を見た途端。
「グレースちゃぁぁん!!」
私は号泣してしまった・・・。
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