第54話
扉さんが開きましたっ!
僕はやったー!って一回ジャンプすると、テテテテテーって扉の奥へと走って行きます。
「え? 嘘? 何で……?」
「えー……。扉が、開いた……?」
後ろの方でカショウとティオールがブツブツ何か言ってましたが、僕は知りません。
にい様ー!ねえ様ー!今行きますねー!
中に入ると、真ん中を取り囲むようにぐるっと十段ぐらいの階段がありました。
──すり鉢状?蟻地獄?記憶さん曰く、そんな感じらしいです。
あっ!真ん中、土があるところに、にい様とねえ様を発見っ!
「にーしゃまー! ねーしゃまー!
ユーリが応援にちましたおー!」
僕はおっきなお声で両手をブンブン横に振って、来た事をアピールしました。
それに気付いてくれたのか、にい様とねえ様がキョロキョロと僕を探してます。
そして、僕を見つけてくれたみたいです。
にい様とねえ様が一斉に走り出すと、僕のいる階段の一番下まで来てくれました。
「まぁユーリ! どうしましたの?」
「今は一人? エリーナはいないの?」
ねえ様とにい様が次々とお話ししてくれますが、僕のお口は一つしかないので、順番にお話しをしていきます。
「マチアスが見に行っていいって言いまちたから、応援に来まちた!
エリーナはぴょん太といっちょに、マチアスとお勉強ちてましゅ!
ここにはカチョと来たでしゅよ」
「エリーナったら、またマティアスに怒られましたのね……」
「カチョ……? うーん。誰だろう? でも今は周りにいないよね?」
にい様は、僕の周囲を確認したようです。
カショウとティオールはまだ、扉さんの所にいると思いますよ。
あ!ティオール!
僕はにい様に、ティオールが扉さんを開けてくれなかったと伝える事にします。
僕、プンプンしたの忘れてないですからね!
「にーしゃま! チオーいじわりゅでしゅよ!
僕、にーしゃまとねーしゃまに早くお会いちたかったにょに、扉しゃん開けてくれなかったでしゅ!
涙しゃんが応援ちてくえたから扉しゃん開いたでしゅよ!
僕、プンプンでしゅ!」
思い出すと、またプンプンになってきちゃいます!
そういえば、扉さんが開く前に聞こえてきたあの謎のお声は、誰のだったのでしょうか?
んー……。
分かんないですねー。
何となくぴょん太とお話ししている時とおんなじ様な気がしましたが……。
「あーっ!」
「終わりましたね……」
突然聞こえた大きな叫び声に、思わずビクッ!てなりました……。
もー!
大きなお声はびっくりするから、ダメなのですよ!
カショウはちょっと落ち着きが必要だと思います。
そしてカショウの横に立っているティオールが、お顔を横にブンブンってふってます。
「ティオールと、誰ですの?」
「チオー……。ティオールの事だったのか……」
二人はダダダッて足音をたてて、僕の横まで駆け下りてきました。
「ユールリウス坊っちゃま、お一人で入ったら危ないですよ」
「ちらないでしゅ!」
カショウがメッ!て感じで言ってきますが、僕はツーンってします。
僕、何も悪い事してないですからね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます