第53話
「中ではお静かにお願いしますね。ルークディアス様にもアルティシア様にも、ユールリウス坊っちゃまが来る事は秘密にしておりますので」
ティオールが小さなお声で僕に言ってきました。
何で秘密なのですか?
僕、大きなお声でにい様とねえ様を応援したいです。
うーって、不満に思っている僕と違って、カショウは大きく頷いています。
なんでですか。
カショウ、僕は納得いかないですよ!
プンプンになっちゃいますよ!
「お二方共、ユールリウス坊っちゃまに良いところを見せたいと、はりきってしまいますからね。
秘密にするのも仕方ない事だと思います」
なんでですか!
思わず、地面にバンバンと足を強く打ちつけます。
にい様もねえ様もいつもかっこよくて、キラキラですよ!
僕が大きなお声で応援したって、それは変わらないですよ!
カショウもティオールも、にい様とねえ様の事分かってないです!
僕の気持ちに同意する様に、ほっぺたさんもぷっくりぱんぱんになってます!
──まことに遺憾です!
「ほっぺたをぷっくりとさせたお姿は、なんともお可愛らしい……」
「あー……。エリーナさんがエンドレスつんつんしたくなる気持ちがすっごく分かるっ……!」
むー!
二人とも、僕の事完全になめきってますね!
もー!僕は完全にプンプンですよ!
僕は二人を無視して、訓練場の扉さんの前まで走ります。
「あのトテトテ走りとか、殺人級的に可愛いのですがっ……!」
「坊っちゃまはやはり、俺を殺しにかかっているっ……!」
僕は扉さんに両手をつけて、力一杯押します。
「ふぎゅぎゅぎゅぎゅーっ!」
「くっ……!」
「マジやばいんですけどっ……!」
ううっ……。
力一杯押しますが、扉さんは全然動きません。
このままでは、にい様とねえ様のごゆうしが見れないのです……。
「ユールリウス坊っちゃま。その扉は押すだけでは開かない仕組みになっております。
開けるには……」
ううっ。扉さん、開いてください……!
ユーリからのお願いですっ!
涙さんも僕を応援してくれているのか、ちょっとお家から出てきました。
「ううっ……。『開けっ!……ごまっ!』」
──……ワールドアクセス……起動、受理……接続……確認。
──認証コード……エラー。……エラー。第二アクセスへ移行……。
──魔紋照会……。
──……特……。発……。
──要……受諾……。
──オ……サ……。我……。
ふえっ?
なんか突然、変なお声が聞こえたよ?
カショウやティオールとは違うお声です。
僕はキョロキョロとお顔を動かして周りを見てますが、誰もいません。
ちょっと困ったお顔の、カショウとティオールがいるだけです。
──扉ガ開キマス。一歩オ下ガリクダサイ。
ふえっ?
扉さん、開くのですか?
あと、誰がお話してるのですか?
なんかよく分かりませんが、一歩下がりますね!
僕が謎の声さんの指示に従って一歩下がると、ゴゴゴッ……!って音がして扉さんが開きました!
やったー!
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