第45話

「うー……」

『ユーリ様? どうなされましたか?』


 僕が、うーうーって言ってたからか、ぴょん太が心配そうに僕に声をかけました。

心なしか、可愛いお耳がへにょんとしている気がします。


「ぴょん太、ごめんちゃでしゅ。ぴょん太お外でぴょんぴょんちたかったでしゅよね……。

 僕がふがいないばかりに、ぴょん太に不自由なおもいをしゃしぇてましゅ……」

『ユ、ユーリさまぁっ!』


 ぴょん太が突然、僕をギュッてしてきました。


「うぅっ、坊っちゃま……」


 えっ?なんでエリーナ泣いてるんですか?

エリーナに何があったですか?


「二人共、落ち着いて下さい。

 ユールリウス坊っちゃまが、健気で可愛らしいのは十分分かりますが、突然抱きついたり泣き出したりするので坊っちゃまが驚いてますよ」


 マティアスの言う通りなのです。

僕、ちょっとびっくりしてます!


『このような可愛らしいユーリ様を、抱きしめられずにおれるわけがなかろうがっ!

 そんな事も分からぬ貴様は、やはり悪魔だなっ!』

「そうです、そうですっ!

 坊っちゃまの健気な可愛さに、あむあむあぺろぺろしたいぐらいなんですよっ!」

「あみゅあみゅぺりょぺりょ……?」


 なんか不思議な言葉が聞こえてきましたよ?

聞いたことないです。


 うー……。

なむなむに似てるから、何かの呪文かなあ?

 分からなければ素直に聞いた方がいいって、だれか言ってました。

聞くはいっときの恥、聞かぬはいっしょうの恥って言うらしいですよ?

 マティアスなら教えてくれると思うので、マティアスに聞こうと思います。


「マティアス、あみゅあ……」

「エリーナ……」

「ヒィッ! すみませんすみませんすみませんっ!」


 あううっ。

マティアスとお声がいっしょになっちゃったから、僕の声が聞こえなかったようです。

だからもう一回マティアスに……。


「ユールリウス坊っちゃま。どうやらピョンタ殿とエリーナには、早急にお勉強が必要なようです。

 大変申し訳ございませんが、この後二人にはお勉強がありますので坊っちゃまには、そうですね……。

 朝食後、ご兄姉の稽古の見学など如何でしょうか?」


 あうぅ……。

ぴょん太……。

 お勉強があるのなら仕方ないです。

 お勉強は、立派な大人になるために必要なものだと言ってました。

だからぴょん太も、立派な大人うさぎになるためにはいっぱいお勉強しなくちゃいけないんですね。

 ちょっと寂しいけど、ぴょん太が立派な大人うさぎになるために我慢します……。

だから僕は一人で、にい様とねえ様の稽古を見学……?

稽古……?


「ふぉーっ!

 お稽古、見れりゅでしゅかっ!?

 ババーンッ! てなって、ピカーッ! て、なりゅの見れりゅでしゅか!?」


 ふおぉー!やったですよ!

 いつもはお稽古危ないからって、あんまり見せてくれないのです。

でも今日は、マティアスが見てもいいって言ったのです!

 だからにい様とねえ様のごゆうしを、しっかり見れます!

ぴょん太がいないのは寂しいけど、でも、お稽古見学楽しみです!

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