第7話

「ユールリウス様、どうされたのですかな?」


 僕が突然息を吸ったり吐いたりした事にビックリしたのか、オリヴァー様がお目々をまん丸くして僕を見ています。


「えっと、お胸がドチドチしちぇるので、おちちゅくようにシューハーってしてましゅ!

 お胸ドチドチししゅぎりゅと、ちゃんとしんしゃつ出来ないと思って」

「それはそれは。ですが、大丈夫ですぞ。少しの間じっとしてくだされば、直ぐに終わりますからな」

「ふぉー。分かりまちた!」


 僕は良い子で大人しくしてます。

お胸ドキドキは少し治まった感じもするのでスーハーをやめて、両腕をピタッと体の横に固定です。

 うむうむ。お利口さんに見えるはずです!

口がうにゃうにゃと動いちゃいそうですが、お利口さんな僕は、お口を一文字という状態にします。


 ……?


 一文字って何だろう?

ほうほう。横に真っ直ぐという事なんですね。記憶さんが教えてくれて僕、また賢くなっちゃった!

 思わずむふー!ってお鼻から空気が出ちゃったけど、体は動いてないから大丈夫だよね。

 僕は動いてませんよって意思表示の為に、お顔をキリリッ!てしたよ。

とう様みたいなカッコいいお顔になってるはず!

「クスクス」なんて笑い声が聞こえてきて気になったけど、動いちゃいけないからキリリッ!を続行中。

 あのお声はかあ様のはず。あとで何で笑ったか聞かなくちゃ。

何か楽しい事があって笑ったはずだもん。楽しい事は共有しなくちゃダメだもんね。


「それではそのまま、じっとしておいてくだされ」


 オリヴァー様がそう言って、僕に両手の掌を向けてきました。

お顔はなんか「うむむむむ!」って感じになってる。

僕も「うむむむむ!」ってしたくなっちゃったけど我慢、我慢。

キリリッ!のお顔を継続中。


 暫くすると、体を優しく撫でられてる感じがしたよ。でも、誰も僕の体を触ってないのに、何でだろう?

不思議に思ったけど、じっとは継続中なので我慢です。

 撫でられてる感じが段々と擽ったくなって、体がむずむずして動かしたいけどじっとしてなくちゃ……。

我慢、我慢って思ってたら息苦しくなってきて思わず「ぷはー!」って言っちゃった。

 僕、じっとする事に必死になってて、息を止めてたみたい。だから苦しかったんだね。危ない、危ない。

 さっき「ぷはー!」ってした時ちょっと動いちゃったけど、大丈夫かな?

分からないようにチラッて見たオリヴァー様はまだ「うむむむむ!」ってやってるから、多分大丈夫だよね。


 擽ったいむずむずが少しずつなくなってくると、今度は体がぽかぽかしてきたよ。

体の芯?からぽかぽかしてるみたいで、お目々がとろんとしてきちゃう。

このままお眠したいけど、まだ終わってないからダメなんですよね?


 うー……。


 キリリッ!としたい僕と、とろんとしたい僕が喧嘩をしてるから、僕の頭がぐらんぐらんと揺れちゃってます。

僕はね、じっとしたいの。でもね、僕のお目々が喧嘩中だからじっとしてくれないの。

 ぐらんぐらんが今はぐわらんぐわらんになってる気がする。

オリヴァー様、まだ終わらないのかな。直ぐって、どれぐらい、なんだろう……。

 多分ね、僕、も、う……。


 スヤー……。


 遠くで「頑張りましたな」って声が聞こえた気がしたけど、お目々とろんが勝った僕は関係ないってそのままお眠したのでした。

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