第3話

 むあーと自然と口が開く。

 うん、よく寝たかも……。

 ゴシゴシと目を擦りながらゆっくりと起き上がると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。


「むー……。だれかいりゅの?」

「ご機嫌はいかがかしら? ユーリ?」


 声が聞こえた方へ顔を向けると、そこには背中まであるふわふわとした金色の髪と紫紺の瞳をした女の人が、優しい笑顔を浮かべて僕を見ていた。

 その女の人は、僕の──かあ様だ。


「かあしゃま!」


 かあ様に会えたのがなんだか嬉しくって、思わずギューッ!と抱きついた。

そんな僕をかあ様はそっと抱きしめて、優しく背中を撫でてくれる。


「ユーリ……。目が覚めて、本当に……」

「かあしゃま……?」


 かあ様の声が震えていて、なんだか泣いているように聞こえる。

それに、身体も小刻みに揺れているような気がする。


「かあしゃま、だいじょぶ……?」


 かあ様の顔を見ようと、お顔を上げようとしたけどそれを遮るようにギュッと強く抱きしめられた。

 そのせいでかあ様の大きいお胸が、僕を挟むようになってしまい若干息苦しくなる。


「うー……。かあしゃま、くりゅしい……」

「あらら、ごめんなさいね」


 僕の抗議に、抱きしめる力を弱めて、全然悪いと思っていないような声音で僕に謝ってくる。


むー……。


 かあ様の謝罪の気持ちが全く感じられません!

でも今は、笑っているようだから許してあげる事にする。

僕って、かんだい!


「もう少しでお医者様が来てくれますから、ちゃんと診てもらいましょうね」

「おいしゃちゃま……? ぼく、どこもわりゅくないよ?」


 咳も出てないし息も苦しくない。それにお熱もないと思う。

完全なる健康優良児だね!

 えっへん!


「ユーリは何でいきなり胸を張り出したのかしら?」


 かあ様は不思議そうな顔で僕を見ている。


 うっ?


 僕もお返しにと、かあ様を見る。

 暫く無言で見つめ合う僕達。

そして、何で見つめ合ってるのか分からなくて首をコテンと傾ける。

すると、ギュムッとまた抱きしめられた。


「ユーリッ!!」

「かあしゃまっ! おむね! おむねくりゅちいっ!」


 かあ様のお胸にギュムギュムとお顔が挟まれて、とっても苦しいです。

さっき苦しいって言ったのに!!


 かあ様の拘束から何とか抜け出そうと、アプアプしてたら更にギュムッと抱きしめられた!

 何で!?

 苦しいって言ってるのに、更に強くしちゃうの!?

流石に温厚な僕でも怒っちゃうよ!


「フガフガッ……!」


 息がし辛くて、フガフガ言ってたらやっと拘束が弱まった。

ふひゅー……。

 死ぬかと思った!!

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