第4話 5人目の将軍

慎之介の思いは、皇朔耶に九州から南をまとめて南方の守りを固めたかったのである。

『皇殿は、ゴビ族に惑わさ

 れて、いきなり我那覇に報

 復せずに、俺に依頼してく

 れた。

 その判断力と、一族を守ろ

 うとする責任感の強さ。

 日本の南をお任せするのに

 不足はあるまい。

 5人目の将軍となるべく修

 行をしてもらいたい。』

雅と宗幸と小太郎は、なるほどと思ったが、当の皇朔耶は、狼狽した。

入学する子供3人の世話を出来ることは良いのだが、南の将軍になるというのは自信がない。

しかし、話しを聞いた高千穂一族3家族の喜びは尋常ではない。

自分達の民族の族長が、全寮制の学校にいる。

これほど安心で安全なことがあるのだろうか。

『とにもかくにも、皆の部屋

 に案内しようか。』

宗幸の言葉で、雅が先頭を歩き始めた。

大天守閣から続く寮の建物は、1階から4階まで、購買というにはあまりに大きい、購買とか売店のレベルではない。

ほとんどショッピングモールである。

夕方になると、近隣のお母さん達まで買い物に来る。

フードコートまで入っているため、近隣の家族が食事に来ることもある。

生徒と教職員の食堂は、5階にビュッフェ形式のレストランがある。

毎日、選んだ物の栄養やカロリーを記録して、子供の健康管理に役立てている。

とは言うものの、子供達は、なぜかしらジャンクフードが好きなもので、その欲求も無視はしないという方針。

フードコートには、有名ハンバーガーショップまで入っている。

5階にはトレーニングジムまである。

食事と運動の両面からサポートされている。

高千穂の3人は、1部屋で住むことになった。

隣の部屋に皇朔耶を住ませるという徹底的な配慮がされていた。

元々、幼少期から兄弟以上の仲で育っている。

夕食後、皇朔耶の部屋に集まり、1日の復習をしたり、4人で遊ぶようになる。

ますます、絆が深まるだろう。

慎之介の狙いも、そこにあった。

九州から南は、南だけで、済まない。

西の海の先には、大陸が広がっている。

悪魔に魂を売った忍者の行動など、たかが1国の政府軍隊で抑えられるものではない。

慎之介は、それを知りつくしている。

この頃、慎之介の力は、核兵器をはるかに凌ぐようになっている。

慎之介の全力の攻撃は、地球を数秒で破壊できるほど強力になっていることを誰よりも知っている。

その力を発揮しないために日本忍軍を強くして他国忍者まで悪魔の囁きから守りたい。

慎之介の願いは、まるで大日如来のそれに近づいている。

皇朔耶以下の高千穂一族、4月からの龍門館生活の準備のために、一度宮崎に帰って行った。

ベッドはもちろん、家具類家電品類は据え付けられているので、必要ない。

趣味嗜好の物・着替え・トレーニングウェア場合によっては、全て売店で買うことは出来る。

宗幸と小太郎は、完全に手ぶらでやって来た。

龍門館は、甲賀と伊賀に跨がる形で広がっている。

つまりは、滋賀県と三重県の県境で山中にある。

街と言っても一番近い市街地は伊賀上野市の中心部になってしまうのだが、公共交通がない。

忍術を修行するための全寮制の道場なのだ。

本来、楽しみ等。排除するはずの物でしかない。

しかし、現代の子供達にそれを押し付けても、出来るわけがなくなっていることを、戸澤白雲斎は知っていた。

忍術道場を中心とした市街地を作ってしまったということだった。

忍術道場を中心とした市街地の全てを土塀で囲んで要塞のように見えるようにしてしまったから。

龍門館は、城のイメージが強く、よほど近所の住人でもない限り、気軽に立ち入る者はいない。

不便な地域の一大施設なので、門を閉ざすつもりは白雲斎にはさらさらない。

10年以上の年月をかけて、ようやく滋賀県甲賀市信楽町の住人や三重県伊賀上野市阿山町の住人が遊びに来るようになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る