第120話
いよいよウルジアの前へと降り立つと、陽射しに反射して白い装飾がとても眩しく感じる。
「そういえば……この街はどうなるんだ?今まではウルが支配者だったんだろ?」
「なるようになるじゃろ。ウルが支配していたとはいえ、あやつが政治的なことに関わっておる筈がない。」
「極度の面倒くさがりだもんね~。」
うんうんとカミルの言葉に頷くヴェルに、カミルがじと~っとした視線を向けながら言った。
「少なくともお主には言われたくないと思うぞ?」
「え~?そうかしら?最近動いてると思うんだけどな~、ほら!!現にこうやってあいつらの説得にも着いてきたじゃない?」
「あくまでも
ぶ~ぶ~とカミルの言葉に反論するヴェルに、ふんと大きく鼻息を吐き出しながらカミルは言った。
「ま、くだらん話はこの辺にしておいて……さっさと街へ入るのじゃ。」
そう言うとカミルは一人足早に街へと歩みを進めて行ってしまう。
「さて、置いてかれない内に私も行くか。」
「あ、ちょっと待ってよ二人とも~!!」
カミルに置いてけぼりをくらう前に私とヴェルも後に続くのだった。
純白の大きな門をくぐると、上空から見た通りの真っ白い街並みが私たちの前に現れ、ほのかな海の香りが鼻を突いた。
そして当然のように人は全く歩いていない。その理由は明らかだがな。五龍のうちの四龍が勢ぞろいしたうえに、今にも戦いが始まりそうな雰囲気だったから、街の中の人は普通隠れちゃうよな。
「さて、カミルはこの街に来たことがあるのか?」
「もちろんあるぞ?ただ妾が前に訪れた時とは、街並みはだいぶ変わってしまっておるがの。」
「でもおおかた何がどこにあるのかはわかるんだろ?」
「うむ。」
「じゃあ市場まで道案内をしてもらってもいいか?」
「任せておけ、こっちじゃ。」
道案内はカミルに任せて、私とヴェルはその後に続く。市場へと向かっている最中、ヴェルが口を開いた。
「にしても、今日はノノとマームのことをお留守番にさせててよかったわね。」
「まったくじゃ。もしものことを考えておいて正解だったの。」
「事実私が死にかけたからな。」
今回もし、ウルの説得に失敗し戦闘になってしまった場合に備えてマームとノノの二人は城でお留守番をしてもらっていた。今更ながらその判断は正解だったと思う。今回考えうる中で最悪のパターンを引いたからな。
「安心せい。妾とヴェルの血を取り込んだお主であれば、あんなボルト程度の攻撃では死にはせん。ただ軽いかすり傷は負ってしまうやもしれんがな。」
「でも、ちゃんとミノルが怪我しないようにカミルったら手で包み込んでたじゃない。」
「当り前じゃ。怪我をしてミノルの料理が喰えなくなるのは死活問題じゃからの。仮にもしそんなことになったら……。ボルトは今頃この世には居らんがな。」
くふふ……と不敵な笑みを浮かべるカミル。彼女なら本当にやりかねないから恐ろしいな。……にしても、そんなに私の体は丈夫なのだろうか?確かにカミルとヴェルの血を取り込んで、人ならざる力をつけているとはいえどうなんだろう?
「なぁ、ちなみに質問なんだが……今の私はどのぐらい強いんだ?」
「む~……そうじゃな。ボルトやウルにはまだ及ばぬかもしれんが、並みの魔族よりかは圧倒的に強いじゃろ。」
「前に襲われたオオカミみたいな魔物も倒せるかな。」
「余裕じゃ。指ではじくだけでも殺せるじゃろう。」
「マジか。そんななのか……。」
まぁでもわざわざ試そうとまでは思わないけどな。だって、それでも怖いものは怖いし……変な病気とかを持ってたら嫌だし……。
そんな話をしていたら、前方にボルドよりも遥かに大きな市場が見えてきた。
「見えてきたぞ~。」
「おぉ!!さすがにやっぱり大きいな。」
まず市場の入り口からしてボルドとは全く規模が違う。これなら期待できそうだ。
「でもやっぱり人はいないんだな。」
「そこかしこから気配はするから、単に隠れておるだけのようじゃな。どうせ声をかければ出てくるのじゃ、気にすることはないのぉ。」
そしてカミルはずかずかと市場の中へと入っていく……。市場の中に並んでいる店には人こそ表には出ていないものの、新鮮な魚がたくさん並べられている。
「うんうん、流石に魚の種類は多いな。小魚から中型魚までいろんなのが置いてあるじゃないか。」
「でも、これとかってあれなんでしょ?ミノルが求めてるような魚じゃないんでしょ?」
「ん~……まぁな。」
せっかくなら抜群に良いやつを買って帰りたい。眼鏡にかなうような魚を求めて市場の中を渡り歩いていると、先に進んでいたカミルが何やら興奮した様子でこちらに戻ってきた。
「ミノル、ミノル!!良い魚を見つけたのじゃ!!」
「良い魚?ホントか?」
「うむ!!こっちじゃこっちっ着いてくるのじゃ~!!」
興奮するカミルの後に着いて行った先に待っていたものとはいったい……。
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