やっぱり宇宙!

ネコ エレクトゥス

第1話

 これを書いている今、九州、沖縄地方にこれまで経験したことのないような台風が接近中という。十数年前にアメリカに上陸したハリケーン・カトリーナのことが頭に浮かぶ。ニューオリンズの街が廃墟になった。台風そのものは僕らの生活の一部だからしょうがないにしても、ニューオリンズのようなことがないよう願うばかり。


 さて、台風が近年勢力を増していることの原因の一つは、地球温暖化による海水温の上昇だと言われている。そうだとすると、この傾向は一層強まることになるのだろう。

 さかのぼって考えて、地球の温度が今より高かった時代があった。今僕らは氷河時代と言われる地表に氷河が残っている時代に住んでいる。その氷河が全くない時代がかつてあった。その時代は僕らの経験したことのない台風が多発していたのだろう。興味深いが非常に恐ろしい時代でもある。

 そんな時代が近づいてきたら?


 地表はおそらく僕らの住めるようなところではなくなっているだろう。建物を作る時地下構造を持つことが法律として義務化されているかもしれない。地下都市ということも現実味を帯びてくる。ただ地表から水が流れ込んできたら?それに大火災が発生したら?どうやら地下世界も住みよいところではないらしい。ただ、地下世界は気温がほぼ安定しているのでエアコンが必要ないかもしれない。どうでもいい話か。

 では海中はどうだろうか。海流が穏やかで日光の届くあたりは人気スポットになるかもしれない。

「ねえ、伊豆の沖合の海底に海流が穏やかで日当たりのいい家が売りに出されてるんだけど、買ってみる?」

 ただ貧乏人は海流が厳しく日当たりの悪い海底に家を買わなくちゃならないのかもしれない。彼らは次第に視力が退化してくる。

 そうそう、水圧の問題を忘れてた。ここでも貧乏人は水圧の高い深海部に家を買わされる。

 ある時深海部で殺人事件が発生した。その殺人方法とは被害者を水圧の低い海の表面付近に放り出すことだった。なお、この事件は迷宮入りし、犯人は捕まっていない。

 しかし海中に住むのもあんまり楽しいことではないらしい。


 そうなってくると僕らの子孫はやはりあそこに住むのか。宇宙!

 確かに宇宙は台風の影響を受けない。気温は一定。地価の問題もなさそうだ。どこでも平等だ!ただし僕らの知らない時空の歪みのようなものが近くにないとしてだが。

 ここでもまた殺人事件が発生する。誰かが時空の歪みに投げ込まれた。当然迷宮入りし、犯人は捕まっていない(被害者も見つかっていない)。

 SFの世界が一歩ずつ現実に近づいている。

 でもやっぱり僕は宇宙に住みたいとは思わない。だから台風も我慢しましょう。いつの日か僕らは地表というパラダイスに住んでいた最後の人たちとして記録されるのかもしれない。

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