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「え!? 本当!! ありがとう!! 実は一人ぼっちで、真っ暗で、道もわからなくて、楓もどこにいるのかわからなくて、すごく不安だったんだ。だらか、嬉しい!」とにっこりと笑って椿は言った。
そんな子供っぽい(実際に椿は子供だけど)明るい表情をして、自分にすごく顔を近づけてきた椿を見て、なぜか薫はひどく狼狽した(慌てた様子の)表情をした。
「私は椿。森田椿っていうんだ! 学年は、中学二年生! よろしくね、薫」
と、にしし、と笑って椿は言う。
「よく見ると、薫、すごくかわいいね。毛並みも立派だし、『緑色の目』も宝石みたいですごく綺麗。誰かに飼われている飼い猫なのかな? お風呂にもちゃんと入っているみたいで、なんだかすごくいい匂いがする」と、くんくんと薫の匂いを嗅ぎながら椿は言った。
『……あ、あの、椿は私のことが怖くはないのですか?』
ちょっとだけ身を引いて椿から逃げるようにして、薫は言う。
「なんで? 全然怖くないよ」椿は言う。
『私は人間の言葉をしゃべる猫ですよ?』と、呆れた顔をして、(人間の言葉をしゃべる黒い猫である)薫は椿にそう言った。
「だから?」
と、首をかしげて椿は言う。
『怖くないですか? 人間の言葉をしゃべるんですよ?』
「怖くないよ。そりゃ、最初はちょっとだけ驚いたりしたけどさ。全然怖くないよ。むしろ、こうしてまりえと会話ができて、すごく安心する」と無邪気な表情をして椿は言った。(本当に藤野薫先生と会話をしているみたいだったし)
そんな無防備で無鉄砲な椿を見て、薫は、……この子は私が、この暗い夜の中から、ちゃんと守ってあげなくてはいけない。と心の底からそう思った。(私のほかに、誰もこの子のことを守ってくれる人は、今、この暗い森の中にはいないのだから)
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